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フリードリッヒ王国 第4話 悲運の少女

 物心ついた時、両親がいて幸せな毎日を送っていた。


 5歳になった頃、母親が亡くなった。何故かは分からない、5歳には理解できない事だろうと思う。

 しばらく、母親代わりになっていた父だが、次第に家事をしなくなった。最初は、掃除。みるみるゴミ屋敷となっていった。

 それに合わせて、次第に自分への食事を作らなくなっていた。


 「おとうさん、おなかすいた」

 「そこいらのもの、食っておけ」

 「なにもないよ」


 顔を平手打ちされた。


 仕方がないので、近所の食堂や居酒屋の裏に行って残飯をあさって飢えをしのいでいた。


 ゴミ屋敷化に合わせて、仕事に行く回数が徐々に減っていく。帰ってくると酒の匂いがひどかった。酔って帰ってくると、自分の顔をみると叩かれた。身の危険を感じ、家を飛び出したのは自分を守るためだった。


 家の近所で残飯をあされば、父に見つかるかもしれないと、町の反対に移動する。そこで残飯をあさっていると。


 「おまえ、見ない顔だな。どこから来た?」


 歳は15くらい、成人したかその前という感じの男(の子?)が、覆いかぶさるようにして、自分の頭の上で話しかける。


 「えーと、あっち」

 「あっちってどこだよ。おまえ、迷子か?」

 「ううん、家を出てきたの」

 「家出か、そのちゃっこいみなりで」

 「うん」

 「ここはな、俺たちの縄張りなんだぜ。勝手に食うなよ。」

 「そうなの。ごめんなさい。」

 「ああぁ、そう素直にあやまれてもな」

 「おまえ、寝る所あるのか?」

 「橋の下でねてる」

 「ああ、あそこか」

 「しゃーねえな。ついてこい、俺たちのアジトに案内してやる」


 それが、ここ付近を縄張りにしているストリートチルドレンの”ボス”との出会いだった。




 それから彼らの仕事を一緒にやる事となった。

 毎日、定時に縄張り内の担当飲食店を回り、大きな葉に包まれた残飯をもらい、木の桶に入った生ゴミ、店から出た不用品を荷車に回収してまわる。


 残飯は、子供たちの食事になる、飲み水は深い桶の下に小さな穴を空け、川の水を小石と砂でろ過し、浅いタライに貯め、日にさらした水を飲んでいた。

 アジトは、町はずれの廃屋。雨が降れば、雨漏りしない場所を探す方が大変な家だが、彼らには誰にも拘束されない天国のような場所だった。


 店から回収した生ゴミは、近くの森から落ち葉や黒い土を持ってきて、混ぜ合わせて乾燥させる。彼らなりの腐葉土を作ると、庭師のいるお得意さんの屋敷へと運んでいく。

 もらうのは、小銭やお菓子、古着、使い古しの生活雑貨などなんでももらってきた。

 それを子供たちに分け与える。子供が使えない物は、壊れていなければ町の裏、スラム街と呼ばれている場所に持っていき、別の物と交換していた。


 小さな子は川から水運び、すこし大きくなると腐葉土造り、大きな子は飲食店を担当し庭師やスラム街と忙しく動いていた。


 さて、ボスが飲食店を回る以前は、残飯も生ゴミも不用品もまとめて大きな樽に入れていた。それを回収屋と言われる、身なりの汚い男女が回収していた。当然、処理費として毎日幾ばくかの金をもらっていた。

 回収したゴミは、町の外れで穴を掘りそこに廃棄、軽く土をかけて終わりといい加減なものだった。穴掘りが面倒になると、直接川に流したりもするが、頻繁にやり衛兵にみつかるとかなり面倒な事になるので、自重気味にやっていた。


 この両者、かなり仲が悪い。理由は不要だろう。


 ただ、飲食店のうけは、ボスの方がいいので回収屋が飲食店に文句を言えないでいた。


 ボスのお得意様の一つに【冒険者ギルド】がある。ギルドの中にフードコートがあり酒のカウンターと軽食・つまみ・はてはガッツリ系の飯まででる。

 それには、理由がある。以前は、フードコートも店も無かった。依頼を終え、懐にあるものがあると、飲みたくなる、騒ぎたくなる。一般人と比べてマッチョで荒くれ、それが狭い店で大暴れ。

 店を壊された店主は、”冒険者お断り”となる。次第に安くて飲める店が無くなる。無理して入ると、良い顔をされない。そんな店で飲んでも、楽しく酔えない。

 だったら荒くればかりの場所に、店を開けばいいだろう。

 ギルドにテナントを出して欲しい、あるいはテナントを出したい。そんな依頼が増え始めた。そういう店でウエートレスになる変わり者、いや正確にはケガで冒険者を続けられない女もいて、ギルドは渋々テナントを許可した。

 ここは、ボスの担当になっていた。荒くれ者が多いので、他の子供に任せられないのだ。

 いつのもように、仲間と回収に行くと、見知った男が近づいてきた。


 冒険者ギルドと魔法ギルドは、依頼を相互に出し合っていた。魔法素材の採取依頼を魔法ギルドにだすと、一緒に冒険者ギルドにも掲示されるという仕組みになっていた。


 ある日、一人の魔法使いが魔法ギルドに顔をだした。町の人間ではないので、流れの魔法使いが路銀稼ぎに依頼を見に来たのだが。

 どこのギルドも、管轄が変われば他のギルドの組合員となる。どんなに高ランクの魔法使いでも、扱いはよそ者の魔法使いとなるのだ。


 「俺でもこなせる依頼はあるかい?」

 「ごめんなさい。組合員以外には、出せないの。」

 「そうかい、困ったな。もう金が無いんだよ」

 「それなら、冒険者ギルドに行ったらどうですか。あそこなら、部外者でも依頼はもらえるはずです。」

 「それはそれは。ありがとうよ」



 アジト脇の畑、という名の腐葉土畑で落ち葉と生ごみのかくはん作業をしていると。ボスが近づいてきた。

 「ここにいた。あんたの父さん探していたぞ」

 「え?」

数か月もあっていない、いまさらと思った。

 「ゴミ処分の知り合いが教えてくれた。あいつら金にならない事には、首を突っ込まないんだ、ろくなことじゃないと思うぞ。どうする?」

 「そうね、しばらく会っていないから会ってみようかしら」

 「それと、関係ないかもしれないけれど、町に奴隷商が来たってよ」

 「ふぅーん」

 自分には、関係ないと思った。



 家に行ってみると、父親がいた。やせ細って、見るからに仕事をしていないのがわかった。

 「おまえ・・ああ、よく帰って来てくれた」

 「・・・ただいま」

 「ここで待っていてくれないか、せっかく会えたんだ。お菓子を買ってきてやろう」

 どうみても、そんなお金があるようには見えない。

 「うん」

 とりあえず返事をしておく。


 家を出て、父親が向かった後をつける。よろよろと歩く姿は、みすぼらしく見える。


 ある店に入っていった。そこはしばらく前につぶれた店。

 「いるかい」

 「またあんたか、品物がなければ、金は出せねえよ」

 「それがあるんだよ」

 「ほんとうか?どこにいるんだ、一緒じゃないようだが」

 「家にいる、ついてきてくれ」


 あぁ、期待するんじゃなかった。


 町を出ようと、裏通りに入りさらに細い抜け道に入る。


 バチッ


 聞いた事の無い音がした。

 「?」


 細道の曲がり角、足音が近づいてきた。


 背の高い男が、やや細面の男を背負い曲がり角から姿を見せた。見た事の無い男。一瞬、身構えるが男は開いている手を胸に上げて手の平を見せる。敵対する意思はないよ、と言っているようだ。

 「だれ?ここで何をしているの」

 「これは依頼でね。怪しい事をしているんじゃないよ」

 「証明できる?」

 「それなら簡単、これから冒険者ギルドに行くんだ。一緒にくればいい」

 「わかった」


 依頼の報酬を受け取った魔法使いは、ビルド内のフードコートで少女と面接?をしていた。

 「僕の弟子になりたい?親の承諾はあるのかい?」

 「その親が問題なのよ」

 家を飛び出してから、今日までの事を簡単に話した。

 「事情はわかった。でも僕は魔法使いだよ、簡単に弟子は取れない」

 「どうすれば弟子になれる?」

 「最低でも、魔法の適性がなければね」

 「どうやったら分かるの?」

 「ここなら、魔法ギルドに魔法適正が判定できる水晶があるんじゃないかな」

 「だったらいきましょう」


 「おめでとうございます!【火】【水】の適性があります。魔力は普通の魔法使い程度ですが、うまく使えれば立派な魔法つかいになれます」

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