ガミリア共和国 第43話 北門の英雄⑥ ナバリアの英雄
本来の目的は、血判状のパーティーに瓶を作り、狩りに支障の無い状態にする事だった。いつの間にかそれが広がり、工場に集まった人を救済する形で、瓶の量産を決断した。
それが次第に広がり、港湾都市全体まで知れ渡ってしまった。
それでも何とか、瓶の増産と基本ポーションを行き渡せる事が出来た。
各ギルドからの賛美は、心地よいものだった。
「ナバリアの英雄」と言われ、7日間一緒だった仲間を送る。
しばらくぶりの安息の眠りだったが・・・
工場始動8日目。
昨日まで入れたスライムにより、カメは、ほぼ満杯。
数日は、放置しても現状の瓶生産を維持できるだろう。
血判状のパーティーと協力してくれたパーティーは、支給されたポーションで暫く買い足さなくても狩りが出来ると、森に入って行った。彼らとの7日契約は終了しているので、今日から自由に狩りをし、少しでも有利に買い取らせることが出来る。
実際、解体業者や買取業者、それ以外の武器防具の店も営業を始めている。
北門の住民は、門閉鎖以前と同じように生活を始めていた。
工場始動9日目。
工場よりフレッドに使いが来た。
「相談したい事があるので、支給工場まで来られたし」
工場から解放された昨日は、一日家でゴロゴロとしていた。
日も高くなった頃、ゴソゴソと起き出した3人は、飯を作り遅い朝食を取っていた。片づけたら向かうと返事をして、食後工場へ。
ナバリアの英雄・・こう呼ばれた事を後悔する為に。
工場に入ると、会議室に通される。
そこには、壁際に警備をしている元騎士団。中央の机に、工場主の2人、今は工場の執務役を行っている館の事務方、工場の各工程責任者が集まっていた。
「おはようございます。これはそうそうたるお方が集まっていますが、なにかありましたか?」
挨拶も早々に、状況報告がされた。
もう俺達は、工場関係者を卒業したと思っていたが、どうやらそうではないようだ。
警備班より報告。
以前、工場でもめていた男達が報復にきた。
夜陰、警備の目を盗んで工場に放火。
これは、建物周囲に防犯魔道具を設置していたので、放火の瞬間、工場に警報が鳴り響く。
放火近くの赤い点滅灯が目印となり、無事放火犯を確保。
家事もボヤになる前に、消火できた。
執務より報告。
現在の生産に問題は無し。
ただ、錬金ギルドと薬師ギルドより、瓶の大量買い付け依頼が来ているが、現状の生産体制では、無理があると返答したと言う。
工場各工程より報告。
生産を能力の限界まで行っているので、素材が不足しはじめている。
薬草は、冒険者ギルドに依頼を出している。
何とか間に合う数量は、現状集まっている。
そう、ここまでは、問題は無かった。
瓶の原材料のスライムが手に入らない。
急ぎ、血判状のパーティーリーダーを集め、状況の説明をしてもらうと状況が見えて来た。
湿地の調査を進めながら、スライムを収集していった。
基本サイズから多少小さいスライムも集めていたが、それより小さいスライムは放置している。
この時のスライム単価は、およそ200円。
以前の200倍。
みんな争う様に、スライムを収集していった。
それを後押しする様に、日々増える瓶増産。
調査が終わる4日までの間に、目印の葦棒から内側のスライムは狩りつくされた。
それでも止まないスライム収集依頼、猟師の使い古したたも網を買い付けて、網の届く範囲のスライムを収集していた。
もうこれ以上は無理と判断したパーティーリーダー達は、中堅冒険者達とまだ森の奥に行けない冒険者を組ませる。
スライムの群生地で、彼らは魔獣や獣の狩りを行う。
一方、初級冒険者達は、スライムを収集していった。
それが、5日から7日まで続く。
現状、湿地のスライムは、中央にいる分だけになっている。
これは、指示に違反していない。
標準サイズより小さいスライムは、捕獲していない。
中央のスライムは、収集を始める前にいた30%程になる。
さらに、森の群生地のスライムも狩りつくさず、およそ20%残していた。
森の奥には、さらにスライム群生地があると言う。
この報告を聞いて、フレッドは指示が悪いと気づいた。
湿地では、葦棒の内側にも、スライムを残すべきだった。
指示があいまいなので、スライム収集が優先された。
それで、船を準備しようかと、工場から提案された。
湿地に船をだして、中央のスライムを収集すると言う。
全体のスライムが少なくなるので、意見を聞きたいとの事だった。
「はっきり言います。
湿地のスライムを収集すれば、数日は現状を維持できるでしょう。
それ以後の工場は、操業停止状態になります。
その期間は、想定3か月」
会議室全体が、騒然とした。
「では、どうすれば?
現状のままならギルドに降ろしている瓶販売をやめ。
ポーション瓶として、工場直販しか方法がないのでは?」
「そうですね。
いまのままなら、そうするしか方法はないでしょう。
でも、町全体に瓶を供給している現状を、いきなり変更すれば、各所より反感を買います。
おそらく、北門以外がすべて敵になる覚悟が必要です」
「そんな」
「なにか対処方法は無いのか」
会議は紛糾し一旦閉会、工場終業後に再度会議となった。
工場は通常操業するが、今日の出荷を停止する事になる。
当然、工場へ苦情がくるが”スライム枯渇による操業縮小”と伝えると、一気に事態は収束してく。
ただ、錬金ギルドと薬師ギルドのギルド長が訪ねてきた。
事態は、急激に切迫していく。




