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ガミリア共和国 第25話 アポ治療薬              (行程表 姉さん・兄さん)

 偏屈さんから、スライムの体液についてレクチャーされる。


 スライム板や瓶を作る時、重要なのは体液を包む表皮でそれが主材料となる。それを液体状にして成型するのだが、ただ細かくしても液体にならない。そこで体液を混ぜて細片化する、体液は溶解作用があるので表皮を溶かしてくれる。


 ん?じゃなぜ、溶けるなら、スライムの表皮が破れないかって。動いたら破れそうだけど。そうだね、そのままだと表皮が溶けて、破れるよね。

 それは、表皮には、体液を素材として、表皮にするんだろうと言われている。つまり溶ける量より、多めに表皮を作っているだろうと言う事さ。実際は、誰も証明していないけどね。


 つまり、使う体液は少量でほとんどの体液は、破棄されるんだ。


 そこで、余った体液だが、1割程の工房。主に魔法使いの工房が素材として使っている。用途は、工房の秘密となっている。


 次に、1割強の工房。こちらは、工房で処理している。


 川から水を引き、工房内のプールに入れ、排水路から川に戻す。プールに体液を入れるのだが、体液には未消化の不純物が残っている。

 そこで、プールに鯉を飼う。不純物を食べてもらうのと、体液が過剰になると鯉が死んでしまうため、濃度確認の意味もある。

 もう一つが、大きいフライパン状の皿に、体液を入れ火力で蒸発させる。こちらの不純物は、溶解作用がないのでゴミとして処理できる。


 残りの8割程の工房。こちらは、ギルドに処理を依頼する。


 ギルドから専用容器(10リットル入る容器)が数本満杯になると、ギルドから回収に来る。空の容器と引き換えに専用容器を渡すとまとめて処理費が請求されるのだ。

 ギルトには、体液処理専用のプールがある。中にいるのは、特殊に育てたスライムが数百匹。

 プールに体液を入れると、体表に着いた体液を体内に取り込み栄養とし、さらに、体表の体液を素材として溶解し表皮に組み込んでいく。

 ただ、この作業は重労働らしく、スライムの寿命は短い。それを補う為、頻繁に新たな小スライムを生み出し分裂する。


 では、処理しないで、川や野原に投棄したらどうなるか。

 弟子になると、スライムの体液は、硫酸と同じだと教えられる。ごく少量なら問題ないが、瓶1個作るのにスライム10匹以上必要になる。10本なら、100匹以上の体液になる。

 その量の硫酸を投棄すれば、川の水質が変わって魚は死に、洗濯ものはボロボロになる。飲めば、のどがヒリヒリするだろう。野原なら、問題ない濃度になるまで、草木は生えなくなり茶色に変色するだろう。

 結果、騎士団か衛兵が動き、見つかれば投獄される。この罪は重く、投獄されれば生きて戻れないと言われている。


 スライムの体液は、薬師ギルドにある。


 翌朝、薬師ギルドに行く。

 「あら、最近よくいらっしゃいますね。今日はどんな御用ですか?」

 「スライムの体液を、分けてほしいのですが」

 なにか、危険人物を見る目。

 「ああ、そうじゃないんです。この間から、魔素の排出薬があるか聞いていたでしょ。偏屈さんから、薬の素材にするからもらってこいと言われたんです」

 「そういう事ですか。でしたら、スライム処理工房に行ってください。持ち込まれた容器は、朝持っていきました。そこならまだあるでしょう」


 メモをもらい処理工房に来た。


 体液の匂いがきつい中、誰かが作業をしている。

 「すみません、スライムの体液をわ・・・・」

 作業中の男に見覚えがある。


 「あんた、なんでここにいる?」

 「おまえもだよ」



 「なるほど、お尋ね者ね。けっこう面白いことやってるね」

 「あんたも、牢破りとか。かなり大胆じゃない」

 「それじゃ、腕利きの錬金術師などを、ご所望で?」

 「ええ、へぼ錬金術師でも、すりこぎぼうくらい使えるでしょ」


 「ここにあるのが3本。必要なのが10本か。そうだな、そこにギルドから乗って来た荷馬車がある。

 まあたまにいるんだが、ここにあるのは、ギルドじゃなく直接おいて行ったやつだ。ギルドから持って来た容器は4本、まだ降ろしていないから、ここに待ってきてくれ。こっちのをつけてやる」


 「あと3本だが、ここに行ってくれ。しばらく持ってきていないから、来るだろうと言われていた。

 その工房だが、少し遠いから・・ん?偏屈の方角。誰だそいつ、ヤバイやつか?違う・・・話に出て来た、神の弟子。それなら知ってるぜ。錬金術師界隈なら、有名な人だ。あと変態?、神の弟子って、あぶないやつがなるのか?

 まあい・・よくないが、ほら、空の容器4本だ。これと交換して来い」



 昼過ぎ、スライム小屋の外、木立の影で昼寝をしている兄さん。

 「それじゃ、ギルドに(いとま)をもらってくるわ。宿なし飯なしになるから。とりあえず、寝る場所はあるか?」

 「変態さんが、寝泊まりしてたようだから、そこにねるといいわ」

 嫌そうな顔の兄さん。

 「あら、もう路銀はないんでしょ、ギルトから、たくさんもらえるのかしら?」

 「いや、臨時だし・・」

 「だったら贅沢言わない。偏屈さんに、手伝い分の給金をだしてもらうわよ、それに飯もつけてあげる。どう?」

 「それで、いい」



 ギルドに戻ってからが大変だった。

 ギルドの執務室の職員に囲まれて、ナバリア郊外の村で起きていることを話すと。

 「それでね、最近、行商人が薬を大量に仕入れていくのよ。話を聞くと、村の人達の体調が悪いので、薬を頼まれると言っていたのよ」

 「そうだけじゃないわよ、寝たきりになる人も、出て来たそうよ」


 話が進まないので、一旦落ち着かせる。

 偏屈と変態薬師の話をすると、アポ中毒が村の異変の原因だと聞いた職員達は、あちらこちらで立ち話を初めた。


 さらに、6人で旅をしている途中で、手配書のシスターは仲間だと言うと、最初半信半疑だったが、兄さんの人柄を知っている職員達が、兄さんに協力すると言い出した。

 偽だろう神父は、なにかあったら教えてもらうことになった。


 これから寝泊まりする工房を話し、それでおひらきになった。


 翌朝、仮眠室をかたずけて、ギルドマスターと執務室、受付に挨拶をすませる。短い間だったが、思っていたより多めに給金をもらい、ギルドを後にした。




 廃業になった工房に入ると、偏屈薬師だろう人と姉さんがいた。二人は、茎と葉を細かく砕いている。

 「これから、よろしくお願いします」

 挨拶をすると。


 薬師は手を止め。

 「おお、もめ事もなく辞められたようだね。こちらこそよろしく頼むよ。

 悪いがこの作業をやってくれないか。おれは、茎と葉が溶解できるか試してみる。」

 部屋を出て行った。姉さんは、匂いがあるので、食堂に行ったと言う。


 昼前、腰をトントンと叩きながら偏屈さんが入って来た。出来たようだ、一緒に様子を見に行く。

 「どうだ、うまく溶けただろう。ただ、このままだと使えない。スライムの溶解成分が残っているからな」

 試薬の棚に行き、粉?を持って来る。

 「おそらく有害なガスが出るだろう。吸うとどうなるか分からない、ガスが滞留しないように、勝手口と入口のドア、それと窓を開けて来てくれないか、終わったら、離れて見ていなさい。」

 言われた通り、ドアと木製の窓を開けてくると、机から離れて見ていた。


 偏屈薬師は、分厚いマスクを持ってきた。離れていれば大丈夫だろうが、風向きで吸い込んでしまうかもしれない。これを着けるように言われる。


 試薬棚から箱を持って来る。机に置き、中から粉を容器にいれていく。さらに重さを測って調整すると、スライム溶液に少量ずつかけ攪拌する。

 気泡が出てきた。


 泡が出なくなると、”魔素”と書かれた白い紙片を、アポ・スライム混合液にいれる。多少茶色になったようだ。

 「まあ成功かな。」

 今度は、赤い液体が入っている小瓶を手前に撮りだした。

 「これは、試薬用にさっき作ったアポ濃縮液だ。果実をすりつぶしたものが資材庫にあったので、作っておいた。

 変態が作ってくれたのだろう。これで検証する時間が短縮出来た」


 まだ不純物の多いアポ・スライム混合液を深皿に入れる。

 隣に、アポ濃縮液を置く。


 アポ濃縮液に、薄く青に染まった試験紙を入れる。濃い朱色へと変色する。

 さらに、アポ・スライム混合液に試験紙を入れてみたが変色はしない。

 「ここからだ、うまくいけばいいが」


 別の深皿に、アポ濃縮液を少量と少量ずつ水を入れ攪拌する。

 「これくらいかな」

 試験紙をいれると、淡い朱色になった。

 「君が見たのは、このくらいかな」

 「ええ、そうです」

 床にあった瓶に入れる、聖水をつくったようだ。

 「これは、村の人たちが飲んでいるのと同じだろう」

 紙に、何か書きだした。

 「こっちで作業をしているから、これを10本作ってくれないか。これがレシピだ」

 レシピ通りに、聖水を10本作って、深皿10枚に移して置く。



 偏屈薬師は、アポ・スライム混合液を皿に分け、計量していた。量の違う皿が10個できる。

 「アポ・スライム混合液を、その聖水に入れて攪拌してくれないか」


 机の上に、混合された聖水10個が並ぶ。

 「では、試験紙を入れてみよう」


 最初の1枚は淡い朱色。次第に薄くなる、3枚目で無色に、次はうっすらと青、次第に薄く青まま変色しない皿へと並んだ。

 「この無色の皿は、中和したのだろうね。そして、ここからアポの魔素が無くなっている。中和しただけなら、効果は限定されたものになるから、こっちの濃度が治療薬になるだろうけど、あまり濃いと危険なんだよね」

 「濃い方がいいのでは?」

 「茎や葉だけなら、濃くても問題ないだろうけど。スライム溶液は、なんでも溶かすからね。口・喉・胃と手当たり次第に溶かす恐れがあるんだよ」

 「なにそれ、こわい」

 「そうだよね、だからこれからアポ・スライム混合液の濃度と人の組織の関係を調べる。お嬢さんは、このメモの部材を買って来てくれないか」

 「これは、豚の内臓ですか?」

 「そう、肉屋では廃棄する部材だから無料だろうけれど、こっちで切り刻むのは時間がかかるから、手のひらに乗る位の大きさに切ってもらってくれ。面倒だと言うだろうから、それを買うと言うんだ。ただ、一人店主だと無理だろうから、そこに地図を書いておいた、僕から言われたと言えば大丈夫だと思うよ。量が多いから、一緒に持ってきてもらうといい」


 「その間に、アポ・スライム混合液の濾過を、兄さんにお願いするよ。僕は、肉片用の試薬を作っている」




 翌日昼過ぎ、アポ治療薬と名付けられた試薬が出来た。安全性を確かめる必要がある。検査用に、アポ治療薬を10本作る。


 工房で、治療薬を作っている間に、ギルドへとやって来た。

 「あら、しばらくぶりね。今日は、どんな御用ですか」

 「アポ中毒用の治療薬を作りました。それの安全性を検証してもらいたいのですが」

 察したのか受付嬢は、ギルマスター・サブマス・いかにもという職員、8人を連れて戻ってきた。


 「アポの治療薬ということだが、そのレシピはギルドにあるのだが」

 「偏屈薬師さんが、聖水を再現しました。保管庫に使ったと思われる、アポの茎と葉が残されていました。

 それから推測される、聖水の数は7000本だろうと言っていました」

 「え?7000本?間違いではないのか?」

 「多少の誤差は、あると言っていましたが、間違いはないとの事です」

 「なんということを・・」


 「ギルドに納めたレシピは、アポの茎を使ったもので効果が薄いので、そのままだと、70,000本いるだろうと」

 「ああ、そうだったね。10倍服用すると以前の状態にもどると」

 「それだと、いまある量の10倍素材がいるので。偏屈薬師さんは、スライムの体液を使って水増ししました」

 「それで、スライム体液が欲しいと来たのですね」

 「結果、いまある茎と葉にスライム溶液を入れて、アポ中毒に有効な効果を作りました」

 「スライム溶液と言ったか。あれは危険薬物指定なんだが、のんでも大丈夫なのかね」

 「大丈夫にしたと言っています。その治療薬なら、聖水を飲んだ数を服用すれば、通常の状態になるそうです」

 「それが本当なら大したものだが・・だが、作ったのが偏屈ならあり得るだろう。分かった、こちらで安全性を検証しよう。いつ試薬はできるかね」

 「いま作っています。明日の朝にお持ち出来るでしょう」

 「わかった、これから検証の準備を始める」



 結果、試薬にギルドで準備した肉片を浸すが、目立った変化は認められなかった。さらに、10本の聖水を浄化する事も証明された。

 アポ治療薬の量産の準備が出来た。

行程表★★ 姉さん・兄さん


4月 行程など

28日 姉さん スライム溶液を集める。兄さんと再会

29日 姉さん・兄さん アポ・スライム混合液を作る

30日 アポ治療薬が出来る

1日 ギルドで安全性を検証

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