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ガミリア共和国 第24話 アポ中毒               (行程表 姉さん)

 翌日、偏屈薬師を訪ねる。今度は、裏に回り工房のドアから入る。不用心なのか、お得意さんようなのか、鍵は掛かっていない。

 ノックもしないで入ったのに、椅子に座り朝食だろうパンとスープを食べていた。

 「よう、ちょい待ってくれ。すぐ終わる」

 食い終わると、食器を洗わずにバスケットにいれた。何気なく見ていると。

 「こいつか?近所のおばさんが持ってきてくれるんだ」

 へぇー、ま。関係は聞かないでおこう。

 「なんだ、気になるのか?ちゃんと食費代は、払っているぞ」

 うん、そういう事だろう。


 「じゃ、行くか」

 歩いて10分。ただ、2度角を曲がった為、近いと言っても偏屈薬師の工房は見えない。


 4つの小さなスライム板が、窓の様にはめ込まれている。そこから、店内が見える。

 テーブル椅子が雑然と置かれ、棚やカウンターにはゴミやほこりが積もっている。

 「ドアは、しまってるな。まあ、当然か」


 裏に回る。

 「これを見てみろ」

 店の裏にも荷馬車が通る幅の道があった。道から工房ドアまで、最近だろう何人もの足跡が残っている。

 「おまえ、そこにいろ。中の様子を見てくる」


 工房にも明かり取りの窓がついている。覗き込んだ薬師。

 「誰もいない。人の気配もない。入ってみるぞ」


 ドアは、鍵がかかっていない。いや、誰か壊したようだ。

 中に入って様子を伺う。

 「誰もいない」

 「そうだな。俺は他の部屋を見てくる」


 一人になったので、工房を見て回る。綺麗に整備された器具が、机いっぱいに並べられている。棚には、小型の器具、薬品、試薬だろう木箱に入った物など、さっきまで作業していたようだ。


 「他の部屋にも、誰もいない。ただ、最近まで誰か住んでいた様子だ。

 それに、この器具の配置は、師匠から教わった物だ。

 ここにいたのは、変態野郎で間違いないだろう」

 「ここで、何をしていたのでしょう?」

 「あんたの言っていたアポを加工してたんだろうな。机の中にここで作ったレシピがあるから間違いない。この器具を一人で操作するのは無理だ、だれか手伝ったのだろう、そいつがみるレシピだろうが・・」


 じつはな。最初にアポから魔素を抽出したのは、変態野郎さ。

 あいつは、軽い効能の栄養剤として売っていたんだ。濃い濃度は、危険かもしれないと、水ましして作っていた。

 それが、結構売れる様になって、あいつは喜んでいたんだが。

 飲んでいる客に常習性が見えてきたころ、顔がやせていくのに気づいたと言っていた。

 さらに、やせると聞いた女性客が増え、おかしいと気づいたそうだ。


 俺の所に、濃度を濃くしたアポ抽出液を持ってきて、動物実験をしてくれと頼まれたんだ。

 結果は、あんたの知っている様になった。一時的に元気になり、アポが切れると突然だるそうに動かなくなった。

 再度与えると、一時的に元気になるが、切れるとさらにだるそうになっていた。


 俺たちは、アポの濃度により麻薬性が強化されると結果をだした。

 それから、あいつは濃度を徐々に薄くして、新規の販売をやめたんだ。客は、効果が悪いと言って文句を言ってきたが、値段を安くする事でなんとか切り抜けていたんだが。もう、限界が近かった。


 それからは大変だった、魔素が関係しているのは分かっていた。それから、原因は魔素の過剰摂取だろうと推測できる。あとは、魔素を安全に排出する方法を探したさ。


 アポを調べると、果実を付けた後、葉や茎に魔素はほとんど無く。根には過剰に含まれていた。そこから、果実をつけたら魔素を根に戻しているのだろうと推論して、茎と葉を調べたんだ。

 それがにらんだ通り、茎には魔素を果実の成長時には実に、それ以外の時期は根に移動させる事が分かった。葉も調べたが、空気中から取り込んだ魔素を排出するだけの機能しかなかった。


 そこから一気に、研究は進み。魔素を排出する薬ができたというわけだ。

 そのレシピだけは、薬師ギルドに登録している。もし、アポを食べて過剰摂取した人がいたら、治せるようにと思ったらからだ。

 もちろん、麻薬化するレシピは、誰にも教えていない。ただ、アポの果実には、魔素が多く含まれているを事をギルドに教えている。



 アポを麻薬化できる様にしたのは、一人の薬師だった。もっともそれを悪用していないのも分かった。

 そして、ここで、高濃度のアポ液と根の細粉を造っていたのだろう。


 「この奥の部屋に食堂がある。ここは、数名の店員もいたからね、結構大きな食堂だよ」

 言ってみると、見た事のある瓶とコルク栓が散らばっていた。ここで、瓶詰めをやっていたようだ。勝手口だろう、鍵の壊れたドアも見える。外には、道まで踏み荒らした、足跡がいっぱいあった。


 「このようすだと、もう戻ってこないだろうね。変態野郎も、どこに行ったのか分からないし。

 もっとも、あいつがアポ中毒になると分かっているのに、ただ作っていただけじゃないだろうし」

 そう言うと一緒に来いと言うので、工房横の素材置き場に行ってみる。


 「これは、貴重な素材をいれておく素材庫。一応魔道具になっている、といっても、魔石で温度を一定にして、空気を循環させるだけだが」

 奥にある観音扉を開けてみる。綺麗に縛った、茎と葉がびっしりとならんでいた。

 「だれが頼んだのか知らないが、麻薬だと知って作らせたのだろうな。あいつが、進んで作るはずも無いからな。これは、俺に治療薬を作れと言っているのだろうさ。」

 「あなたの工房に運びますか?」

 「いや、ここでやろう。設備も試薬もそろっている。レシピは、頭に入っている。ただ、素材が足りない。」

 え、こんなにあるのに?

 「この島は、気候が変わらないだろう。だから花は、条件があえばどこにでも、いつでも咲いている。

 あいつが、栄養剤を作り始めると、薬師ギルドを通して冒険者ギルドにも採取依頼が出ていたので、森に入った冒険者達は帰りに採取してくれたんだ。

 アポの濃度を下げ始めると、果実の必要量は減って、茎や葉が多めに手に入った。それで当時は間に合ったのだが、かなりの量の茎と葉を使ったんだ」


 偏屈薬師の説明だと、腹の脂肪と同じ理屈だと言う。

 魔素は、体に不可欠だから摂取すれば取り込みやすい。

 それを排出しようとすると、体が抵抗すると言う。まあ、ダイエットと同じだな。

 実感だが、排出するためには、排出薬は摂取量の10倍必要だとの事。アポ1本分飲んだのなら、排出用アポは10本必要と言う事らしい。

 それが事実なら、ここの量の10倍は必要になる。


 もうここでは、作っていないのだろう。ただ、作った抽出液を運びだせば、何処でも聖水を作れるだろう。

 このままだと、後手後手に回ってしまう。


 ただ、アポ抽出をしていないなら、アポ採取の依頼をすれば集まるのでは。

 それだと、この量の10倍になるまで数年かかるだろうと言われた。それでは、手遅れになる。


 偏屈薬師からこの対策として、検討したい事があると言い出した。

 「その当時は、アポの採取依頼だけで間に合うだけのアポが手に入ったのだが、アポの他に魔素を排出するか無効化する素材は無いか検討していたんだ。」


 その中で最も有効だと検討したのが”スライムの体液”。

 スライムは、なんでも体内に取り込んで、溶解、分解して吸収する一番低級な魔獣。

 溶解の時に、魔素も取り出すだろうと考えた。


 次に分解時に、余分な魔素は不要になるので分解するのではないかと考えたのだ。当時の実験だが、それならと着色したアポ溶液を与えてみると、次第に溶液が小さくなっていったので、時々体液の魔素濃度を測ってみたのだ。

 一時濃くなった濃度は、次第に下がっていき、最終的に当初の濃度に戻っていた。


 それで、体液は魔素を分解する事が分かったのだが、当時はスライム体液とアポの茎をどう組み合わせればいいのか、検証できなかったのだ。

 ただ、漠然とだが”茎や葉を溶解させる溶剤”として使えないか。と検討しようとしていた。

 当時は、茎や葉が十分にあったので、水に細粉した茎と葉を混ぜて治療薬を作っていたんだ。


 ここで疑問が。

 「あの。どうやって治療薬を服用してもらったのですか?売った?」

 「それは・・思い出したくもないのだが」


 正直に、薬師ギルドと栄養剤を買ってくれた人に話した。当然、糾弾された。神の弟子という名が通っていたから、高価な薬が良く売れていた。それも売れなくなり、店を閉めるしかなかった。

 その間も、治療薬を作り薬師ギルドに無料で納めていたんだ。それでも、騒ぎは収まらなくてな。

 一番困ったのが、ダイエットに使っていた婦人達だったんだ。閉まった店に押しかけてはドンドン叩く、使用人を毎日工房に張り付かせて栄養剤を売る様に言ってくる。

 それでも売らないと分かると、他の薬師に作らせようとしたのだけど、薬師ギルドが禁止薬にした後だから、魔素排出薬以外は作れないと言われたそうだ。

 それでもほしいと、今度は冒険者を直接雇い、アポを採取させて手にいれたそうだ。魔素の抽出など知らないから、果実をそのまま食べたそうだ。

 冒険者から、果実は毒だから絶対食べないようにと忠告されていたんだが。結果高濃度の中毒になり、治療薬でなんとか回復したのだが、今度は俺たちを訴えだしたんだよ。

 幸い、治療薬がある程度そろった時期に、正直に話し、治療薬を無料配布した事から、婦人が取った行為は自己責任であって、俺たちに罪は無いとギルドから言い渡されたんだ。


 変態薬師は、正直に話した頃から心を病んでいったようで、作業が終わると公園に座り、ぼぉーとしていたよ。

 その時も公園に座っていたそうだ、小さな女の子が近付いてきて。

 「おじちゃん、ぐあいわるいの?げんきになるよ、これあげる」

 そう言って、手に持っていたおやつだろう飴をくれたそうだ。それからあいつは、徐々に元の様に動き出したのだが、・・聞いただろう、すこし変な・・まあ、そういう事だ。

 あいつは、元気になったんだが、見ただろう変な薬も売りだしてな。まあ、工房で売ってる薬は、どれも高級品だ。売れているようだから、あいつも食う事に困っていないだろうな。


 え?おれ‥聞きたい?

 俺の店を見ただろう。俺も高い薬を売っていたから、そこそこ金は持っていた。


 工房を造った時に、近所のおばさん達に交代で弁当を作ってもらったんだ。食事を作るついでに小遣い稼ぎが出来ると、好評だったんだが。


 騒ぎになると、誰も来なくなったんだ。仕方なく、自分で市場に行って、作っていたんだ。

 わかるか?大した物も作れない、同じ物を作る、市場で顔を覚えられて、売ってもらえなくなったり、ぼられたりと散々だったよ。


 それを見かねたのが、会っただろう、あのおばさんだ。毎日、朝と夜、バスケットに入れて工房の前に置いてくれる様になったんだ。

 ありがたかったね。


 ある日の朝。バスケットに手紙が入っていたんだ。「だんなの様子がおかしいので、看病しないといけないからしばらく来れない」とね。

 おれは、すぐに家に行って、だんなを診察すると薬を作ってやったさ。


 それ以前は、バスケットに手持ちの金を適当にいれて置いたんだが、それ以後いらないといわれてね。

 今も受け取ってくれないので、困っているところだよ。


 そのときからだよ、困っている人がいるとおばさんから聞くと、症状を聞いて、何を治したいのか聞いてもらい、薬を渡すようになったのは。薬代?食事を持ってきてもらえれば、それでいいと言っていたんだけどね。

 なぜか、薬をやるとギルトに持っていくようになってさ。これも困っているんだよ。


 はぁ、偏屈と変態の理由は分かりました。


 では、スライムの体液を集めましょう。

 

行程表★★ 姉さん


4月 行程など

27日 姉さん 港、薬師ギルド、商業ギルドなど

28日 姉さん 廃業した工房

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