ガミリア共和国 第23話 偏屈薬師と変態薬師 (行程表 シスター・姉さん)
昼過ぎに村に帰った姉さんは、シスターに手配書を見せる。すると、期待通りの反応を見せてくれた。
「それは、困った事になったね。お礼をしなければと考えていたので、村長の爺さんにあってください。何かいい方法、知っているかも知れないですよ」
一緒に手配書を見ていた母親は、治療が良かったのだろう、すっかり良くなった腰でスクッと立ち上がると、二人を連れて村長の家に向かいました。
「これは、ひどいね。あの偽神父の仕業だろうけど、どうすれば良いかね」
手配書を見た爺さんは、しばし考えこむ。
姉さんが一言。
「私たち巡業の途中なんです、このまま旅立つのはどうですか?」
「わしら村のもんは、遠くに行かないから問題ないだろうけどね。噂は、行商人から広がると思うよ。遅かれ早かれシスターは、邪神のシスターとして追いかけられるのではないかな」
「それは嫌ですね、行商人って国も越えていきますから」
それよりと、爺さん。
「昔、これと似たような事があってね。その時は、姫さまを逃がしたのだけど。今度は、全部の村をつぶすつもりだと思う。
シスターには、この村を救ってもらった恩義があります。
しばらくすれば、騎士団が来て捕まってしまう。そこで、姫さまに匿ってもらいましょう」
「姫さま?」
「詳しいことは、言えないのです。姫さまがお話になるでしょうから、直接聞いてください」
「そこは、安全なのですか?」
「なん年も見つかっていない。いや、見逃されているかもしれないが、何処より安全だと思うよ」
シスターを助ける為、爺さんの言われた通りにナバリアに戻った姉さん。
「姫さまは、7本目の村にいる。そこに行ってもらう」
「7本目の村?ですか」
「あんたらは、隣の湾岸都市から来たのだろう。あっちから数えると、2番目の川にある村の事を聞いたかな?」
「ええ、土石流が途中で止まって周囲が崖に囲まれたので、村を造ったけど廃村にしたと聞きました」
「そうじゃな。こっちから見ると7番目の村という事さ」
「あ、そうですね。でも廃村では?」
「確かに、ほとんどの村人は出て行ったけど、残った人もいたんだよ」
「そこに姫さまが、いるんですね」
「そうだ。そこに行く方法だが」
いくつかやり方があるそうだが、こう切羽詰まった状態だと、一つしかないと言う。それで、ナバリアに戻ってきた。
「ついでに、他の村も救ってもらえないだろうか」
「救うって、このアポ中毒ですか?」
「あんた魔法使いだろう、ポーションを作れるのでは?」
「アポの果実を粉にして、魔法の威力をあげるのには使います。残念ですが、中毒用のポーションレシピは教わっていません」
「だったら薬師を訪ねてもらえるか」
最初に訪れたのは、港。巡回船の発券事務所で、港湾都市まで1名分を買う。
「それでですね。1番目の村に妹がいるのです、嫁ぐ事になったのですが身重になったので、村まで迎えに来て欲しいのですが」
「この乗船券は、妹さんが乗る為にお買いになったのですか」
「はい、お願いできますか」
「大丈夫だと思いますよ。えーと・・・明日入港の予定ですね、三日後にここを出る予定になっていますので、到着は四日後の夕刻になると思います。
そこでの補給はありませんので、すぐに乗っていただく事になります。
それでよろしいですか」
「お願いします」
次に向かったのが、この間来た薬師ギルド。
「すみません」
「あら、この間いらした方ですね。今日は、どんな御用ですか」
「この人の居場所を教えてもらいたいのですが」
村の爺さんから聞いた、名前と特徴の書かれたメモを見せる。
「あら、偏屈薬師さんですね」
「変態薬師?ですか」
「えっ・・いえ、偏屈です。この町では、この人をそう言っています。名前で呼ぶ人はいませんよ」
壺に入ったのか、笑いをこらえてカウンター下からメモ用紙を取り出す。
「はあ?」
「まあ会えばわかります。工房は・・ここに行ってください。そこは工房らしく見えないので、辛抱強くノックしてくださいね」
謎の言葉をもらって、とりあえず行ってみる。
ここか?たしかに工房には見えない。そこは今にも崩れ落ちそうな廃屋?に見えた。
ノックするが返事が無い。ノブが無いので押してみるが、開く様子が無い。言われた通りに、何度もノックをする。
「なんだ、うるさいな。売る薬など無いよ、帰ってくれ」
中からものぐさそうな男の声、廃屋ではないようだ。
「すみません。町の近くの村から来ました、爺さんの使いだと言えば分かると言われましたが」
「爺さん・・まだ生きていたのか、待ってろ、今開ける」
入ると、前は薬屋だったのだろう。大きな棚が並んであり、小瓶を置く用に間隔の狭い棚板が何段にもなっている。
中は、大きな店だったようだ。今は、何も無くガランとしている。
手じかにあった椅子を二つ。一つに座ると、座るようにすすめてくれた。
「すまんな、茶など気の利いたものは無いからな。」
ここに来た経緯を話す。
「まあ、話は分かった。で、俺に何をして欲しいんだと?」
「村を救って欲しいそうです」
「あん?俺がか、あの爺さん耄碌したようだ。」
「あなたに頼んだら、薬を作ってくれると言っていましたが」
「ああ、確かにアポ中毒用のレシピなら知っているし、ここは工房だ。いくらでも作ってやるよ。じゃ、素材を出してくれ」
「それは・・ギルドでも採取依頼をだしているのですが」
「素材を持ってきたら作ってやるさ。薬代は・・あの爺さんからたんまりと謝礼を取ってやるか」
困った姉さん、しばらく考え込む。
「あんた、妹がどうのこうのとかで、船がいつ出るか知らせに行くんだろ。その妹は、何処にいるんだ?」
「一緒に村を出ましたから、もう1番目の村についているはずです」
「だったら、こっちだ。ついて来てくれ」
ついて行くと商業ギルド?に着いた。
「ここは、行商人のたまり場。商業ギルドの一部門ってとこだ。行商人は、ここで情報交換、まあ物の相場だな。それを言葉で売り買いしている。」
「言葉の売り買いですか」
「まあ、自分の知っている情報と相手の情報を見定めるのだな。話から対等だと思ったら情報交換。見合う情報が無ければ買う。まあそんなとこだ。」
「へえ」
「おーい、兄ちゃんたち。漁村巡りの兄ちゃんはいるかな。」
「それなら、あいつだ」
「ありがとうよ」
指さされた荷馬車へと向かっていく。
「何か用かい。これから仕入れで忙しいんだが」
「明日、出るのかい」
「そうだが」
「これを1番目の村に届けて欲しいのだが」
「いいぜ、村長にやればいいんだろ」
「ああ頼むぜ、これが手間賃だ」
「了解、ありがとうよ」
「よろしく頼む」
「これで、用事はすんだろ。さっさと素材を採ってきてくれ、俺は寝ている」
「そこで相談なのですが」
「ああ。俺は森に行かないよ、虫が大嫌いなんだ」
「森じゃなくてですね・・」
「ごめんよ」
「いらっしゃいませ。あら、偏屈さん。ここに来るなんて珍しい、お金を取りにいらした時いらいですね。お嬢さんは、無事に会えたのですね」
「先ほどは、ありがとうございました。」
「偏屈ってなんだよ、おまえが流行らかしたんじゃないか」
フフフ、笑っている。からかって面白がっているのか?結構仲がいい?
「ちょっと頼みがあって来た。」
「なんでしょう」
「結構前になるはずだが、ここに薬師を紹介して欲しいとか言って誰か来ただろう」
「ええ、そういう依頼は常にありますが」
何を言っている、知っているくせにという顔。
「紹介した薬師が、数か月帰ってこないとか聞いていないか」
「長期契約ですか・・それなら、偏屈さんの知り合いですね」
「偏屈って言うなよ。ん?知り合い、俺に知り合いなんて・・もしかして変態やろうか」
プッ、今度はふきだした。
「そうよ、その変態よ。しばらくここに来ていないわ。会費が遅れているので、工房に行ったそうだけど、誰もいなかったそうよ」
「わかった。それから、最近廃業した工房はあるか?」
「廃業ですか。ああ、一軒ありますね、あなたの近くの工房ですね」
「あそこか。ありがとうよ。・・ちょい、便所かりる。いないからって余計な事言うなよ」
「言うなって言われたら、言うしか無いですか。聞きたいことあります?・・それは、偏屈と変態ですね」
その人達は、”錬金術師の神”と言われた人の弟子なのです。そのせいか?かなり変わっていて、特徴な薬でも希少な薬でも素材さえあれば作ってしまうのです。
偏屈さんは、常に薬を作って売る事をしません。素材と食事を持っていくと、すぐ作ってくれます。
ノックしても出てこなかったでしょ、日中は、寝てるか、何か創作しているか、それ用の文献を読んでいるか、なので、顔見知りは工房の裏から入ります。
要件を紙に書いておくと、返事が書かれています。薬の作成依頼だと、必要素材の量ですね。未開発の薬なら、いつから、症状、直して欲しい具体的箇所か症状を書いておくと、毎日返答のメモが机に置いてあります。
「まだ」「もうすこし」「大体わかった」「素材と量」
こんな感じです、素材を置いておくと、翌日には薬になっているそうです。偏屈さんは、面倒な事が嫌いなので、依頼料は提示しません。依頼者が自分で決めて、このギルドに持ってきます。それを預かっている状態ですね。
実は、一等地に大きな工房を三つは建てれるほどあるんですよ。
変態さんも同じ師匠です。こっちは、幼女趣味なんです。幼女に変態をする訳じゃないので、みんな容認しているんです。
彼は、見るだけです。裸をじゃなくて、ただ歩いているとか立っているとか、姿を見ていたいそうなんです。そんな趣味、わかりませんよね。
変態さんは、工房と店を持っています。でも売っているのが・・・変態なのでおすすめしません。
飲むと腹痛を起こす薬ですが、翌日には治っています。副作用もないそうです。用途は、嫌な仕事を休む時に服用だそうです。
そんな薬が店いっぱいにあるんです。変態でしょ。
長いトイレを終えて出て来た。
「お前ら、余計な話で盛り上がっていなかったか。笑い声が聞こえたのだが」
「余計な事なんて、言っていませんよ。世間話をしていただけです」
その顔は、信じていないだろう。
「まあいい、ありがとうよ。変態の店に行ってみる」
ギルドを出ると、大通りの裏手、と言ってもそこそこ人通りのある道に、店があった。店は、内側に布がかかっていて、休みだと分かる。
「こっちだ」
自宅の様に、建物の横を行く。中ほどにドアがあり、鍵が掛かっている。
ドアの横に植木鉢がいくつか、全部の花は枯れていて、手入れしていないのが分かる。
鉢を斜めにしてのぞき込む、三個目、「あった」
鍵を開け中に、ここは工房兼店舗のようだ。棚びっしりに置いてある薬。ここにあるのは、何処にでもある薬。キョロキョロと見ていると。
「何しているんだ?ああ、見たいのは隣だ。通りに面したのが、趣味の店だ。見たいときは、見てくれば」
いくつか手に取ってみる。
☆塗る軟膏。”皮膚は真っ赤になります”乾燥後、10時間後に戻ります。かゆみ、痛みなし、副作用無し
☆体重に応じて飲む。必要量と軽減率は裏に記載。”体重を軽減する”なお、実際に体重が減った訳ではありません。服用後、数時間でもとに戻ります。副作用有、飲む錠剤数に応じて、下痢、腹痛、頭痛、飲みすぎると筋肉痛をおこします。用法用量に注意してください。
など、誰が買うんだろう。
「おい、戻るぞ」
鍵をかけ、外に出る。
「あいつ、数か月帰っていないようだ。工房にほこりがあった。・・・そうだ、薬にほこりは厳禁だ。混入してしまうからな。」
大通りに出る。
「もう夕方だ、明日、廃業した工房に行ってみる。朝また来てくれ」
行程表★★ シスター・姉さん
4月 行程など
23日 姉さん 村に戻り手配書を見せる
24日 シスターと姉さん 村を出る
24日 シスター 1番目の村に到着
26日 姉さん ナバリア着宿に泊まる
27日 姉さん 港、薬師ギルド、商業ギルドなど
30日 巡回船、ナバリア発
1日 シスター 乗船
7日 シスター 7番目の村着




