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ガミリア共和国 第22話 邪神のシスター            (行程表 シスター・姉さん)

 初めて見る町だが、見ている暇はないと錬金ギルドを目指す。途中で会った人に道を聞きつつ、錬金ギルドにやって来た。


 「これの分析依頼ですか?」

 「そう、この2本をお願いします」

 「毒ですか?」

 「らしいのだけど、毒性は低いようよ」

 二枚試験皿を持ってきてもらい、それぞれに水を数滴。青い紙片を入れると、触れた部分が、淡い朱に変わる。

 「これは、うちで売っている試験紙ですか?少し様式が違うようですけど」

 「そうよ、他の町で買ったからじゃないかしら」

 「そのようですね。おなじレシピで作られたようなので、大丈夫でしょう。この瓶の水が変色させた成分を調べる、という依頼でいいですね」

 「そうです」


 「これが依頼書と金額になります。依頼料は、前金でお願いします。それと、申し訳ありませんが、今このギルドは立て込んでいますので、結果に少々時間がかかります。それまで、お待ちいただくことになります。」

 「わかったわ。それで、結果が出たらどうすれば?」

 「こちらの職員が、宿にお知らせします。それでお分かりになると思います」

 「それでいいわ、宿が決まったら知らせにくればいいのね」


 すぐに結果は出ないだろうと、宿を決め、のんびり町を観光する事にした姉さん。


 ☆☆


 姉さんがナバリアに行った、次の日の夕刻前。村人が行っていた神父風の男が、荷馬車に乗ってやって来た。馬に乗った護衛も二名、御者と合わせて四名。

 シスターが最初見た時、神父だとは思えなかった。言われれば、それらしい服装なのだが、いくつかある教会の知っている服装とは違っていた。


 町の広場に陣取ると、畑仕事帰りの村人を集めて。

 「神のご加護がありますように。今日は、多めに聖水をお持ちしました」

 荷馬車に立ち、そう言って聖水を売り始めた。


 いつもなら、我先にと村人は買いに群がる。しかし、この村人は近寄ってもこない、ただ様子を伺うだけ。

 いつもと違うと、神父風の男はけげんな様子。護衛に、村の様子を見に行かせる。


 戻って来た護衛。

 「外には、誰もいませんね。ただ、窓からこっちを伺っているようですぜ」

 「おいおい、どうなっているんだ」

 「すみません。あなたはどこの教会の方ですか?」

 「お前は、誰だ?」

 「わたしですか。これをご覧ください、この国でも国教のはずですが」


 胸に下げた十字架を取り出す。教会のシンボルを組み入れた十字架は、教会に行く者ならだれでも知っている。

 「シスターが、この村で何をしている?」

 動揺したのか、すこし声が震えている。

 「この村から嫁にいった人に、母親の治療を頼まれましたので」

 「治療?教会がこんな村までくるもんか」

 「わたしは、巡業の途中で寄っただけです。さっきの返事がまだですが」

 「おれの神は、ナフォバ神という。」

 「聞いた事がありませんが」

 「シスターの様子から、他国の教会で、この国は初めてじゃないかな。だったら知るがいい。わが神は、偉大な神、その古臭い神などではないのだよ」

 「胡散臭いですわね。その聖水ですが、こちらの試験紙では、軽い毒性とでましたが、何が入っているのです?」

 「聖水に毒など、入っているはずがないではないか。その証拠に、飲めば皆、体調が良くなったであろう」

 「そうですね・・教会では、禁止されているのですが、麻薬性の何か入れています?それなら、飲めば成分で体が活性化するが、切れれば前以上にだるくなるそうです。どうです?」

 「お前、神を侮辱するのか。もういい、こんな村に売ってやるか。お前たち、帰るぞ」

 村人たちの間を、空威張りを見せながら男たちは去って行った。


 「姉さんが帰ってきたら、この現象の対処法が分かります。しばらく、井戸の水は飲まないようにして、待っていてください」



 三日間の治療が終わるとシスターは、井戸のある村に行くことにした。

 朝出ると、昼前に隣村に到着。川から離れた村には、幅は狭いが水路が通っている。


 村の中央広場の端に、井戸があった。そこにいた老婆に、村長の家を聞く。

 「わたしは、村長の母になります」

 「それは失礼しました。私は、この教会のシスターです」

 十字架を見せ、老婆に隣村で起きている事を話す。驚く老婆。

 「その汲んだ水ですが、試していいですか」

 「なにを・・いえ、どうぞやってみてください」

 桶にいれた青い紙片が、淡い朱に変わる。目を見開き固まる老婆。

 「これは、大きな錬金ギルドに売っています。毒性を見る紙片です」


 説明が終わると、膠着が解けたのか、少し震え気味に。

 「実は、昨日神父様がきまして、聖水を売っていきました。体調のもどった皆さん、今日は畑仕事に行っているのですが」

 その聖水は、おそらく麻薬成分が入っているだろう。服用はやめた方が良い。おなじ神父が、隣村に来たので追い返した、と話す。


 「また、来週くると言っていました。これからどうすれば?」

 「私の従者が、錬金ギルドで成分を調べています。分かったら、治療方法をお知らせしますので、それまで井戸を使わないで、水路の水を使っていてください」


 老婆との会話を終えると、次の村へと歩き出す。


 これと同じような事が、隣村で起きていた。

 そこに居た村長の妻に説明して、村へと戻っていった。


 ☆☆ 


 夕方、宿に戻ると主人から

「ギルドから使いが来た、”結果がでた”と言っていたぜ」

と、伝言を受け取る。

 結果を聞けば村に戻る事になるだろう。なら、明日早くの方が良いだろうと、早朝宿を出ると言って、清算して寝る。


 朝、カウンターにいる奥さんに鍵を返し、ギルドを目指す。


 ギルドに行くと、この間の受付嬢がいた。

 「おはようございます。早速ですが、これが分析結果になります」


 ☆”井戸”と書かれた水。無色透明だが、若干の不純物を確認。水に毒性はない。不純物は”アポの根”と分析。

 ☆”聖水”と書かれた水。こちらは麻薬成分を検知。熟成した”アポの果実”を粉砕煮沸後、濾過した液体が混入しているものだろうと分析。


 アポの花は、それほど特殊な花ではない。森が一定の条件になると、群生する普通の花である。

 ただ、その条件が”魔素がある値”とあるように、高濃度魔素の森に群生する。魔素自体は、何処にもあるのだが、アポには特性があった。

 実をつける時、大量の魔素を体内に吸収し、果実に蓄える。それは、魔素を取り込む魔獣が食するようにする為なのだが。

 結果、結構な濃度の果実が出来てしまう。その果実を食すると、過剰魔素吸収となってしまう。


 人体にも魔素はある為、普通は毒ではない。しかし、摂取量が多すぎると過剰摂取となる。単一の栄養素を通常の1000倍摂取した状態と言えば分かるだろうか。

 過剰摂取すると、通常より体内が活性化された状態になる。体が一時的に元気になり、多幸感状態になる。

 結果、動きすぎて疲労が蓄積されるが、魔素の刺激でそれを実感できない。そのまま動き続けると、急にだるくなる。

 魔素の活性化より体調不良の方が際立ってきたからなのだが、その状態になると何らかの薬(薬師)かポーション(魔法使い)で、魔素を排出する必要がある。なければ、魔素の自然排出を待つしかない。


 新たに魔素を過剰摂取すると、新しい魔素が体内の魔素を押し出し、排出する手助けをする。これは、補助的な作用であり、さらに過剰状態が酷くなる為、さらに体調不良となる。

 これを繰り返すと魔素の過剰摂取が通常の状態となって、今後の治療に支障をきたす。アポの麻薬性と言われる症状なので、大抵の国は果実がついた時期の採取を禁止している。


 アポにとり必要なのは果実に蓄える魔素であり、過剰な魔素はアポの生育に悪い影響を与える。そこで、アポが実をつけると、アポにとって不要な魔素を根に戻してしまう。

 根は常に伸びている、茎や葉は時期に応じて成長するが、常時というわけではない。根なら過剰になった魔素を使い、いくらでも伸ばす事が出来る。

 この根も、粉砕して粉にすれば、麻薬となってしまう。


 「この水を飲んで、体調を悪くした人がいるのですが、対処法はありますか?」

 「対処法ですか・・魔素を排出する薬草があるらしいのですが、それが町から無くなったと聞いています。どうも、誰か買い占めたようで、薬師ギルドで採取依頼をだしているのですが、違う所に流れて行っているようで、集まらなくて困っているそうです」

 「薬草以外だと、どんな方法がありますか?」

 「詳しくは、薬師ギルドに聞いてください。知っている範囲だと、体内の魔素が自然排泄されるまで、待つしかないようです」

 「それでは、かなり辛いのでは?」

 「そうですね、やはり薬草から作る薬かポーションが一番いいのでしょうが」


 錬金ギルドをでた姉さんは、一応、薬師ギルドを訪ねるが、帰って来た答えは、錬金ギルドとおなじだった。


 その薬師ギルドでの一コマ。

 壁に女の手配書が貼ってあった。顔はシスターに酷似している。懸賞金は、結構な額が書いてある、数か月は暮らせるだろう。

 「これは?」

 「騎士団の従士がさっき持ってきたので、貼っておきました。なんでも、健康に良い神水だと言って、村に来ては、麻薬にしたアポの水を飲ませているそうです、怖いですよね。この女は、”邪神のシスター”だから見つけたら、すぐに騎士団に知らせるようにと言っていきました」 

 「本当だね、見つけたら知らせる事にするよ。この紙、もっとある?」

 「持ってきたのは、それだけです。さっきの従士なら他のギルドに行ったでしょうからね。どこに行ったか、分からないですし。他にあるとすれば、騎士団の詰所はどうですか」

 そう言うと、簡単な地図を書いてくれた。お礼を言い、大通りに出る。


 詰所は、領主の城が見える方角、途中に貴族街の城壁があって門番の従士(騎士見習い)がいるのでそこで聞けば分かるはずと。言われた通りに行ってみる。


 「すみません。薬師ギルドで見た手配書、ここにありますか?」

 「お前、だれ?あの手配書に何の用がある?」

 怪訝そうに見つめられる。シスターの仲間だと思ったのだろうか?まあ、あってるけど。

 「わたし魔法使いなんです。以前も、村に来た”神様のお使い”と言って、体に良い薬だと言ってインチキ薬を売っていたのです。それを信じた母の具合が悪くなって、ひどい目にあいました。

 それで、薬草からポーションを作る魔法使いになったのです。ぜひ、協力させてください」

 自家製のポーションを見せ、飲んでみると、あっさりと信じてくれた。


 手配書をもらうと、村に戻る。待っていたシスターに。

 「シスター。いつから邪神の使いになったの」

 「?」

 手配書を渡すと。

 「だれ?え?わたし。なに、”邪神のシスターを見かけたら騎士団へ知らせるように”って、どういうこと」

行程表★★ シスター・姉さん


4月 行程など

12日 8本目の漁村に泊まる。実家の母親の治療依頼

13日 街道から近い実家で母の治療

14日 姉さん、ナバリアに出立

16日 シスター、村二か所を廻る

17日 姉さん、ナバリア錬金ギルド到着

20日 姉さん、分析結果を知る

    この時、兄さんはギルド内で仕事中

    姉さんは、カウンターで話していたので会っていない

    薬師ギルドで見るシスターの手配書

23日 村に戻り手配書を見せる


農家の朝は早い、5時には家を出て、最長2時間歩き、5時には帰る。

次の村は、4時間歩くと到着できる。

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