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ガミリア共和国 第20話 受付嬢救出              (行程表 兄さん・きし)

 お付き合いしている衛兵。まあ、彼氏だな。

 今日の彼氏は、門番だと聞いたので会いに行く。


 この都市の城壁は、馬蹄状になっている。門は二か所、港湾都市方面と農業都市イルミス方面にある。

 湾岸都市方面の門にいた彼氏に、軽く事情を話すと、もうすぐ交代が来るので、待っている様に言われる。

 飲みながら話そうと言う彼氏に、もう路銀がないので・・というと、彼女を助け出してくれる人に、出してもらえないとの事。喜んでご相伴にあずかる事にした。明日以降も、夜の食事時は一緒になって情報交換をすると言う。これで、夕食の心配がなくなった。


 今日の聞いた事を、かいつまんで話すと、彼氏には既知のようで、ただ聞いていた。


 兄さんの報告が終わり、では今後は。と話し始めると、彼氏から意外な情報が飛び込んできた。

 「衛兵の仕事は、いくつかあるんだ。平民街の巡回、二か所ある門番、これを半月交代でやっている。

 今回は、あそこで門番をやっているのだけど。

 数日前に、小隊長達が慌てて街道を(馬で)走って行ったんだ。」

 「仕事では?」

 「そうだろうけどね。持って行った装備がおかしかった。

 大型の草刈り鎌とおそらく油壺、それ以外はいつもの装備だった。

 どう思う?」

 「鎌と油?・・・聖水は?」

 「スライム袋か瓶だろうから、装備鞄に入っていたんじゃないかな」

 「それは、アンデッド対策だろうけど・・。小隊長の仕事は、盗賊討伐だよね。」

 「そう。それから、今日は冒険者ギルドからも討伐隊が出て行ったよ」

 「それには、相方が入っているから、戻ったら話を聞いてみる」

 「見慣れない新人がいたから、その人かな」

 「そうだと思う」

 先に誰かが盗賊を討伐してあるから、アンデッド対策に行った。それならおかしな行動も納得がいく。

 誰かが討伐したのだろうか?それよりも、それをどうやって知ったのだろう?途中の街道には、瘴気があるようには見えなかった。死体がアンデッド化するとは思えないのに、わざわざ燃やしに行くだろうか?

 いくら考えても、それを説明出来ないでいると。


 「小隊長が盗賊討伐かアンデッド対策に行ったなら、隊舎から彼女を出せないかな」

 「それは・・」

 おばさんとの話を、してみる。

 「脱獄か、そうだね。でもね」


 彼氏の話は、常識の斜め上をいっていた。

 小隊長がどこに行ったのかは、分からないが数日は戻らないだろう。

 その間に、牢から助け出す。

 その後、無事解放されたと周囲に言い、彼女はギルドに戻り今まで通りに勤務する。

 そもそも、なんの嫌疑で捕らえられたのかも言われていない。

 それに、騎士団の隊舎の牢にいれるなど、今まで聞いた事もない。

 罪を調べるなら、騎士団の牢は別の場所にあるので、そこで取り調べるはずだ。

 なにか、後ろ暗い事があるから、こんな変なことをやっているのだろう。

 だから、再度彼女が連れ去られる事のないようにすれば、この問題は終わるはずだ。

 これが彼氏の主張。まあ、納得できるようでもある。


 「僕は、仕事があるので日中は動けない。夜は手伝うから、牢から出れるようにお願いします」

 なぜか、脱獄の主犯になるようだ。


 とすれば、最初にするのは牢の鍵をどうするか。

 困った時は、情報通に聞くのが一番。


 翌日、おばさんと相談する。

 「鍵ねえ。それなら、牢に毎日女の人が出入りしているそうじゃないか。その人に頼んだらどうだい」

 「隊舎で見張っていて、出て来たら話す?」

 「それじゃ、”俺は怪しい奴だ、捕まえてくれ”って言っているようなもんだよ。そうだね、知り合いに聞いてみるよ」


 おばさん達の井戸端会議は、ギルドだけでなく市場でも盛んに行われている。夫の事、仕事の事、天気、家事、なんでも話題になる。

 次の日には、「知り合いに知っている人がいたから、話してもらった。仕事が終わったら、あってくれるそうだよ。今日の夕方、来るよね」

 おばさんに頭が上がらない。



 おばさん達に言われてきたのは、小ぎれいな店。お気に入りのスィーツがあるという。手持ちが心配だが、もうあきらめるしかない。

 「話はわかった。あのお嬢さん、毎日見ていると、こっちまでつらくなるよ。

 出来るだけ協力はしましょう。鍵を直接貸したり出来ないから、何処に保管してあるのかだけ教えるよ。職場から追い出されたら、困るのは私だからね」


 鍵は、文官達の執務室にあると言う。執務室と鍵箱の位置を、メモしてもらう。迷惑をかけないようにと、くぎを刺されてもう一言。

 「夜、行くんだよね。聞いた話だと、誰か朝まで居残る様に言われているようで、毎日夜食を買いに屋台に行くと聞いたよ。

 屋台は、串焼きとスープを出すそうで、容器はその場で返すのだとか。

 屋台に、長椅子があるので、パンを持って行って、そこで食べるそうだ。」

 「その屋台だけど、おそらく市場にいる屋台じゃないかな。串焼きとスープを売っている屋台とか、珍しいから間違いないはず」


 夜食か、それなら30分は戻らないな。おばさん達にお礼を言い、会計を済ませる。何とか路銀で間に合った。

 その様子を見ていたのか、翌朝、おばさんは朝食用にと弁当を作ってくれた。毎日作ってくれると言う。

 おお、神様。もう足を向けて寝れません。


 早朝、おばさんから聞いた市場に行って屋台をさがすが、串焼きとスープを売っている屋台は無い。しかたが無いので、ブラブラと時間をつぶす。

 昼近くになると、早朝の屋台の数が減り、別の屋台が増えていった。


 その中の一つに、串焼きとスープを売っている屋台があった。

 「串焼きとスープをお願い」

 「あいよ」

 長椅子に腰かけて、頬張る。

 「昼だけ出しているの?」

 「それじゃ食っていけませんよ。近頃は、騎士団の隊舎裏に出しています」

 「あんな寂しい所に?」

 「まあそうなんですけどね。隊舎帰りに、買ってもらえるのですよ。それに、夜食を買う人がいるから、それまでいてくれって言われましてね。まあ、お得意様なんで、それが終わるまで待っているんですよ」

 「大変だね」


 夜食に来る時間は、おおむね決まっているそうで教えてもらうと、ギルドに戻り仮眠をとる。

 彼氏を連れて行こうかと思ったが、万が一があれば衛兵をやめる事になるだろうと、一人で行く事にした。終わったら話そう。


 隊舎の裏口、そろそろ出てくるだろうと待っていると、灯りを持った一人の男が出て来た。見るからにひょろっとした男子、一目で文官だと分かる。


 路銀のほとんどをつぎ込んだランタンに、魔力を込める。ポッと明るくなり、足元が良く見える。

 裏口のノブを回して、奥へ。メモに従って進むと、明るくなっている大きな部屋があり、ドアが半開きになっている。

 すり抜けて辺りを見渡す。いくつもの机と椅子の先、壁を探していると箱が見えた。


 鍵を持って、隊舎に向かう。半地下の牢は、隊舎の横に下りの階段があり、そこの先にある。

 階段は、外にあるのだが隊舎には騎士団員が寝ている。物音をたてれば、起き出してくるだろう。


 階段を降り、通路を歩くと、かすかにコツコツと足音が出る。

 「だれ?」

 「静かに、この間来たギルドから依頼された者です。今開けますので、身支度を整えてください」

 「・・・」

 ゴソゴソと起き出したようだが、真っ暗で身動きが取れないようだ。

 「失礼」

 ドアのカギを開け、ランタンを部屋へと突き出す。

 「ランタンを入れました。それをしばらくさわってください」

 「見えるわ、でも大丈夫?」

 「この灯りは、ランタンが認めた者しかみえません。安心してください」

 「そうなの」


 外に出る。

 「鍵を返してきます。ここで待っていてください」

 「こんな暗い所で待っているなんて、無理です。一緒にいきます」

 灯りの無い所に、閉じ込められていたのだから無理もないのだろう。

 「では、足音をたてないように」


 おばさんから、使った鍵は必ず返すようにと言われた。刺しっぱなしだと、見つけるのは私になる。疑われるのは嫌だと言われていた。


 騎士団の中に戻り執務室を目指す。

 半開きのドア、隙間から人の気配がする。のぞき込むと、パンを持ちスープを飲んでいる男がいた。

 屋台で食うのでは?見ると、昼飲んだスープ皿と違う。自前の皿を持ってきたようだ。

 顔を廊下に戻す。

 「どうしました?」

 小さな声。よほど困った顔をしていたようだ。

 中を覗き込んだ彼女、しばらく思案顔をしていたが。

 「その鍵を、あの人に返せばいいのですか?」

 「それが出来ないから、困っている」

 「では、わたしが」


 鍵を受け取ると、普通にドアを開ける。

 キィイ、少しきしむ音。幽霊でも見ている様に、こちらを見て固まる男。パンを持った手も、スープを持った手も固まって動かない。


 スタスタと中に入る彼女。ただ硬直して見ている男。

 「お礼を言いたかったのですが、誰もいなかったので、あなたが戻るのを待っていました。鍵をお返しします、どうもありがとうございました」

 ニコッと笑い鍵を差し出す。


 声に正気に戻ったようで、パンとスープを机に置く。おずおずと手を出し鍵を受け取る。

 「あなたは、だ・・・」

 見た事のない女。言葉の途中で、牢に女の人が入っているのを思い出したのだろう、声が途切れる。

 「短い間でしたが、お世話になりました」

 そう言うと、(きびす)を返して戻って来た。


 廊下を歩き戻っていると、執務室が騒がしくなったが、それも僅かの間ですぐに静かになる。


 彼女の家に送りながら、話をする。

 「あの人、大丈夫かしら」

 「大丈夫?」

 「ええ、鍵を貸したのが彼という事にしましたから」

 「鍵を借りても、内側から開けられないでしょう。それに、鍵で開けたのなら、そのまま鍵を持って帰ればいいのでは」

 「でもあの慌てよう、そこまで気がつかない様子でしたよ」

 彼氏も彼氏だが、彼女はもっと肝が据わっている。


 流石に翌日は、寝ていたようだが、次の日。

 「長い間抜けていました。復帰出来ましたので、今後もよろしくお願いします」

 そのまま職場復帰していた。

 下に恐ろしいのは・・・・


 依頼達成となったが、実質無給。それでは可哀想と思ったのか、臨時ギルド職員となり、朝夕深夜と帰りが不規則な彼女を家まで護衛する任務と平常は人手不足な部門の補助職員と、仮眠室の使用とおばさんが今まで通り雑用をしてくれることとなった。

 この補助職員、意外に使えると好評で、このまま正式職員になってくれ、と誘われるまでになっていた。

行程表★★ 兄さん・きし


日付 行程など

1日 周回船が湾岸都市に入港

3日 昼、出航。岩礁地帯を航行するので暗礁の危険がある夜は、錨を降ろして

   停船する。河川は均等な幅があるので、1日で次の河川に行く。

   漁村のない1~3本目は海で停泊。

   4~8本目は、乗船時に途中の漁村に降りるか確認する。

   船を少しでも軽くするために、4本目で補給し、

   後は降りる漁村で補給する。

   今回は、都市を出たあと、最初の漁村、4つ目と5つ目の

   漁村に水補給用の小舟を出し事になる。

   補給船には、樽が積み込まれていて、夕方漁村に降りると

   給水後は、騎士団の小屋に泊まり、早朝戻っていく。

7日 4本目の漁村で給水。

9日 イカの魔獣と遭遇、討伐後、船の被害確認と修繕が終われば盛大に

   宴会となる。翌日も修理があり、遭遇から出航まで1日分になる。

11日 7本目の漁村で下船、そのまま漁村に泊まる。

13日 8本目の漁村に泊まる。河川間の移動は、歩きで2日、馬で1日。

15日 湾岸都市ナバリアに入って泊まる。

16日 きしは、冒険者ギルドで登録。その後、盗賊討伐依頼を受領。

    その日は、旅の準備で市場に出かける。

    最奥の河川まで、荷馬車で移動に8日(24日)、

    戻ってくるのに8日、計16日。

    一つ月は30日なので、帰宅は翌月2日となる。


    兄さんは、錬金ギルドで依頼を受けようとするが、様子がおかしい。

    冗談半分で受けるというと、なし崩し的にギルドからの依頼を受ける。

    その後、宿を引き払って、ギルドに泊まる事になる。

    最初は、情報収集である。

    おばさんと元騎士団の老人から話を聞くと、彼氏に会いに行った。

17日 騎士団のおばさんから情報

18日 市場の屋台から情報

    牢の受付嬢を救出

20日 錬金ギルドの臨時職員となる


補足:1人4リットルとして、乗務員10人と乗客20人とすると、1日120リットルになる。無補給だと、順調に行って9日間、予備に1日とすれば、1200リットルが最低必要になる。1リットル1kgとすれば、1人60kgが20人乗っている計算になる。海には、魔獣が出る。海域を早く移動できるように、途中で給水し出来るだけ軽くしたい。

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