ガミリア共和国 第19話 ナバリア騎士団 (ナバリア騎士団の創世期)
ギルドが一方的に有利な契約を結んだ兄さん、早まったかなと思いながらも宿へと向かっていた。
宿の主人との交渉である。
「実は、ギルドに仕事を斡旋してもらったのですが」
から始まった話は、金がいつもらえるか分からない。
半月出かけた”きし”は、半月分支払っていた。しかし、二人部屋の半分だけ。別に意地悪したいのではない、反省を促すのと、苦労するだろうから、そこから金銭感覚を知ってほしいという意味もあった。
半月一人分しかもらえない!当然、主人は怒り顔になる。
「そこで提案なのですが、相方の荷物は背負い袋が一つだけです。部屋を引き払いますから、その荷物を一人分として預かってもらえませんか」
「?」
「相方は、半月帰ってきません。私は別の宿にいきますので、相方の荷物がどこにあっても文句を言う人はいないのですが」
「・・・そうか、いいだろう」
宿から自分の荷物を取り出すと、錬金ギルドに戻り受付に預かってもらう。宿賃がないと言うと、協力の対価として、仮眠室を貸してもらえたのだ。
魔道具の試験は時間のかかる物が多い、自宅では出来ないので交代で仮眠をしながら観察するのである。
さらに、受付嬢の付き合っている彼氏に紹介状を書いてもらえた。夕方、衛兵の仕事が終わる頃、会いに行くように言われた。
もう一人。ギルドの下働きをするおばさんを、紹介される。仮眠室にいる間、洗濯や部屋の掃除をしてくれるという。それだけでは、なかった。
おばさんは、とても優秀な情報収集能力をもっていた。
その気さくさから、誰とでも話す事が出来るのだ。ギルドの用事で市場に出かけては、思いがけない話を持って来ることが、ちょいちょいあった。
手が空いたと言うおばさんと休憩中に話し合う。騎士団に連れさられた受付嬢の事は、知っていたので市場や町あった井戸端会議の知人から、町の噂を集めていた。
「その騎士団だけどね、やったのは小隊長だけで、他の隊員は言われてついて行っただけのようだよ」
受付嬢が早番を終え、帰宅途中で三人の騎士達が連れさったのだが、直接関係するのは、小隊長だけのようだ。
それなら、何とかして牢を出してやればいいのか?と聞いたら。
「まあ確かに、牢から出ても、小隊長以外は文句は言わないだろうけど。無実だと言っても逃げだしたら、脱獄という問題になるんじゃないの。
そうなれば、騎士団の問題になるし、それに牢から出てどこに行くのさ。」
夜忍び込んで、牢を開けて逃がしてやると考えたが、無理のようだ。
とすれば、小隊長が牢から出す以外に無くなる。さて、どうしたものか。
仕事に戻ると言うので、おばさんと別れ騎士団の隊舎へと向かう。
隊舎は、独身騎士や単身赴任の騎士が泊まっている建物なので、騎士団の施設の外れにあり、城壁や塀で囲まれている訳ではない。
団の規則違反や禁止している死闘などをやった団員を、一時的に拘束するための部屋になる。
その為、常時見張りが居るわけでもないので、忍び込んで牢から出す事は可能だった。
日中、隊舎には誰もいないだろうが、見つかると色々面倒な事になるので、あたりを注意深く歩く。
牢、正確には拘束部屋なのだが、団員達は地下牢と言うので、知っている者は牢と言っている。
ギルドから聞いた風窓に近づき、中の様子をうかがう。寝ているのだろうか、何も聞こえない。
コンコン
ヘリを叩くと、人が動く気配がする。
「だれ?」
再度、辺りを見回して誰もいないのを確認する。
「そっちに誰かいる?」
「誰もいません」
兄さんは、ギルドから依頼を受けた事、今情報収集をしていると告げると、泣き出した様子。かなり辛そうな様子だ。
食事は、朝と夜。部屋には、机と椅子、固いベッドと毛布が二枚。水差しとコップがあり、トイレ用としてカメと木の蓋がしてあるそうだ。
おばさんが来て、毎日カメを交換するのだという。
とりあえず酷い扱いは受けていないようだが、精神的にまいっているようで、早く出した方がいいのだが。
なるべく早く出してあげると言い、その場を離れる。
その後、おばさんから特別な情報を聞いていた。騎士団と喧嘩するなら、と前置きされた人物に会いに行く。
その家は城壁の外にあり、川べりに立っていた。
ノックをすると出て来た老人は、話し相手が出来たと様々な話を聞かせてくれた。
老人は、漁の手伝いの合間、私兵となって多少なりともめごとに関わっていた。私兵になっていたのは数か月で、すぐに民兵団に組み込まれ、町が国となると、今度は騎士団となった。
当時の網元は、町が大きくなってくると国を興して国王となり、その後併合された後は領主となっている。
おばさんから、騎士団になるまでの話は聞いていたので、遠慮したかったのだが。話し相手を見つけた老人は、”その話は”と言う顔を知ってか知らずか、とうとうと話していた。
やっと、騎士団の話しになる。
「民兵団の時もそうだったが、騎士団になるともっとひどくなったもんじゃ。」
騎士団は、トップに領主。下に騎士団団長、これは領主が任命する。
その下に三軍の大隊長がいて、城下と隣の湾岸都市との間の街道、海岸(海)と河口付近の河川、ナバリア近郊の農地と中流の河川と水路に担当が分かれていた。
問題を複雑にしているのが、農地は”農業都市イルミス”管轄のだと言う事だ。
河川は、ナバリアが長く使用してきた為に権利を主張できるが、農地はイルミスから流入してきた農民が開拓したため、納税はイルミスになっている。
そこで、農地を管轄している騎士団は、イルミスからの委託という形をとっている。当然、委託料として騎士団に相当な金額が支払われていると言う。
騎士団構成が都市・海・畑とそれぞれ分かれていて、それぞれの中が悪かった。
都市の騎士団は、兄さんが見て来た騎士団になる。海は、海岸そばに。畑は、城外につくられていた。
都市の騎士団は、城外周囲警ら担当、街道担当、城内の治安担当に分かれる。城内に衛兵がいるが、衛兵は外周の城内(平民街)の管轄となり、騎士団は、内側の貴族街が管轄になる。
ただ、訓練の音がうるさいと言う理由で、騎士団は平民街にある。
街道担当の中隊は三つの小隊で構成。小隊は3~6名で構成され、二つの小隊は、交代で街道を往復して治安維持に努めている。
問題の小隊長は、遊撃隊として組織され、街道に現れる盗賊討伐が主任務となっている。
実務として、被害が騎士団に届けられても、街道の距離が長いために駆けつけても無駄になるだけだった。
結果、存在するが役に立たない隊となっている。構成も小隊長をいれて三名となっていることから、盗賊退治できるとは誰も思っていない。パフォーマンス部隊と化している。
常に平民街をうろつき、衛兵とにらみ合う事もある。
本当にどうしようもない奴だな、さらに領主の子だと言うし、どうやったらいいのか。
そろそろ時間だな、受付嬢と付き合っていると言う衛兵に会いに行こう。
ナバリア騎士団★★ 創世期
これは、おばさんが語るナバリア騎士団が出来るまでの話
ナバリアは、立地条件が良い所にあったので、大きな漁村になっていた。
中央から川沿いに草原の開拓者が、大挙してやってくる。次々に出来る村は、次第にナバリアと近くなっていく。
当初は、互いに物々交換でうまくやっていたのだが、問題が出て来た。
土地の質がいい土壌は、近くに水源があれば大気が乾燥していても、水やりの必要がなかった。そこで、村人は共同の水路を勝手に引き始めた。
水は、水路から地下に浸透し干ばつの心配がなくなった。
次第に低下する水面は、川から海に船を出す猟師に深刻な被害を出しはじめた。
桟橋に水が無くなる、船を川べりから引き上げるのだが、石の上を引き上げなければならない。
川から海へと船を移動させる。途端に過密化する海岸、海側と川側で争いが始まる。
それに併せて、漁師と農民同士の争いも始まる。水を引きたい農民と水路を閉鎖しろという漁師。
次第にエスカレートし、それぞれが腕っぷしの良い若者を私兵として使い始めた。
各地で起きるいざこざに、漁村の網元が仲裁にはいった。
水路に遮蔽版を設置して、渇水の時期は閉める事、それ以外は自由にしていい。渇水に水が無いと困るだろうから、村々に貯水池を造る事にした。
網元は、今後もめた時の為の民兵団を組織します。構成は、大きくなった町に出来た衛兵隊から、町の外の治安を担当している隊を、民兵隊として組織し、漁村の私兵、農村の私兵を組み込む。
通常は、町の外の巡視(元衛兵)や漁、畑仕事を行い、何か事が起これば民兵団としてあたる事にした。
これが、ナバリア騎士団の元となった。




