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ガミリア共和国 第18話 冒険者と錬金ギルドからの依頼     (魔道具解説 ランタン)

 早朝、兄さんの防具を着用しクロスボウ・短槍を持ったきしは、冒険者ギルドで登録を済ますと掲示板に立っていた。

 ギルドが開く時間から待っている冒険者達は、サッサと選んだ依頼を受領するとギルドを飛び出す。

 登録が終わる頃には、ギルドには数人しか残っていない。


 さて、目ぼしい物はないよな


 どうしようかと眺めていると、少し足を引きづった男が近づいてきた。

 「その装備、新人さんかい。」

 兄さんはヒョッロとやや長身、きしはガッチリ系で背は高くない。しかも使い古された防具と武器。どうみても、田舎の引退した冒険者から譲り受けた防具を着た新人に見える。


 変に言い訳しても、時間の無駄と。

 「そうです。さっき登録したのですが、もういい依頼はないですよね」

 「お前。ガッチリ鍛えてもらったようだが、実践不足ってところだろう。どうだい、俺のパーティーに入るか?お前一人くらい増えても構わないだろう」

 「いいんですか」

 「おうよ」

 「お願いします」

 「これが依頼書だ、どうだ行けそうか?」

 「初めてみるので・・」

 「そうか、まあ半月かかるがどうする?」

 「長いですね、今日ですか?」

 「明日の早朝 ギルドの開く時間に、ここを行った先の城門に集合だ、今日はメンバー集めになる。荷馬車はこっちで手配するが、飯と水は持ってこい」

 「わかりました、よろしくお願いいたします」


 宿に戻ると、ゴソゴソと起き出した兄さんが居た。明日から依頼で、半月行ってくると伝える。

 「これから、次の宿探しをする。次の宿に荷物を持って行く荷物は、これだけお願いする」

 「わかった」


 次の早朝、門の横で待っていると、荷馬車に乗って昨日の男がやって来た。荷馬車には、二名の男が乗っている。

 「よう。待たせたな、乗ってくれ」

 「ちょいと御者を変わってくれ、新人に道中説明をする。ちなみに俺がリーダーな」


 動き出した荷馬車は、二頭立てで足早に走り出した。ゴンゴンと尻が荷台に飛び跳ねる。

 「依頼書をみただろ。依頼内容は、『盗賊団の討伐』だが心配いらない。行く先に盗賊はいないからな。」

 男たちは、それを知っているだろう、ニヤニヤと笑っている。


 「これから八本の川を渡って、盗賊の小屋に行く。そこで泊まって帰ってくるという仕事だ」

 そこに盗賊は居ないという事なのか?


 「途中、漁村と街道にある騎士団の小屋を使って仮眠する。ま、実際は荷馬車に疲れてぐっすり眠ってしまうがな」

 尻がかなり痛いが、こいつらは平気なのか?しりが痛くて寝れそうもないが


 「普通、川と川の間は、歩いて二日かかる。それだと往復一ヶ月になってしまう。そこで騎士団が、この荷馬車を貸し出すんだが。二日を一日で走っていく。どうだ、尻が痛いだろう。尻が四つになるとか言われるくらいだ。最初はきついだろうが、帰りはなれるだろうよ」

 なれるのか、これ


 「依頼書の依頼料みたか?かなり安かっただろ」

 「見ましたが、安いのかどうかは」

 「ああ、登録したてだからな。半月拘束の依頼なら、倍から三倍の依頼料になるんだ」

 「安いのは、荷馬車を借りているからですか」

 「それもあるが・・依頼者を見たか?」

 「たしか、ナバリア騎士団」

 「そう、俺たちは騎士団の代わりの討伐隊になっている。すごいだろう」

 なにがすごいのか、わからないがうなずいておこう。


 「この街道の安全管理は、ナバリア騎士団の管轄なんだが。毎回、出もしない盗賊に騎士団を出していたら、経費がバカにならない。ってな、冒険者ギルドに依頼する事になったんだ。それで、この荷馬車を馬付きで貸してくれるのさ」

 とりあえず、うなずいておこう

 なぜか上機嫌なリーダーを乗せ、騎士団の小屋を泊まりながら最後の川が見えて来た。


 川の脇の空地を抜け、奥へと入って行く。海岸が見える所に大きな小屋が立っていた。

 「ここが盗賊の隠れ家だ。」

 リーダーは、周囲を見てくると荷馬車を降りる。


 小屋には、六頭入る馬小屋が併設され、大きな下屋がある。この荷馬車なら三台は入るだろう。

 下屋に荷馬車をいれ馬を離すと、木に縛り、飼い葉と水を与え、ひづめのチェック、ブラッシングと手分けして世話をしている。

 「おーい、新人ちょいと来てくれ」

 行ってみると、小屋の中にリーダーがいた。


 板敷の倉庫のようだが、空になっている。ただ、誰か居たようで、食い散らかした食物や食器、酒のツボ、コップなどが散乱している。

 それもしばらく経っていたようで、付いたほこりの様子から10日だろうか放置されていたようだ。

 「これじゃ、寝るに寝れないぜ。片付けるからそっちをやってくれ」

 言われるままに片付けていく。本当に盗賊はいたようだ。

 片付けていると、馬の世話を終わった男たちは、海岸を調べに行っていた。海岸にあった中型の船は、以前もあったそうで、誰か乗ってきた様子があるで近隣の漁民が船で移動してきて、畑の村に用があるのだろうと言われた。


 翌日からまた荷馬車に乗り、このまま乗っていれば本当に尻が割れそうだと我慢しながら帰っていく。

 言われていたが、最後まで盗賊にあわない依頼があると、幾分驚いていた。


 半月(16日間)の依頼を終わり、ギルドに報告、その場で依頼料を分配する。

 「パーティーの人数は、4人ですか?」

 「そうだよ」

 リーダーが答えると、受付嬢は四つの袋をとりだした。

 「確認して、それぞれ受領書にサインしてください」


 あとから受付嬢に聞くと、依頼は四人で行くことが条件で、多くても依頼料しか払わず、少なければ減額すると言う。

 あの日、メンバーの一人が病気になり、急遽補充が必要になったと言われた。



 ☆☆



 宿探しが終わった兄さんは、旅の準備をしているきしを、横目に見ながら、どうやったら路銀を稼げるか思案していた。


 きしの様に、冒険者ギルドで依頼をうけるのは無理だ。そんな体力も武術も無い。せいぜい、後方でクロスボウを打つのがいいところだ。

 じゃ、自分の出来る事は?・・・錬金だな


 きしが出かけると、宿のカウンターに行く。錬金ギルドの場所を教わると、依頼を受ける為出かけた。


 錬金ギルドは、年中無休、24時間開いている。通常の仕事、錬金術師や工房の登録・変更・廃止などから、事務作業、錬金された品々の鑑定・査定他、幾つもの仕事がある。

 それぞれに部門が決められていて、常に人員が不足していた。部門間での人員の貸し借りなど出来る状態ではなかった。


 錬金ギルドが常時開設しているのは、特許庁にちかい作業があるからだ。

 ギルドは、職業の権益を守るために造られた組織になる。


 一つの例として、ある錬金術師が”簡易ランタン”を思いつき作成して、売り出したとしよう。

 これは便利だと猛烈に売れ出した。当然、他の錬金術師達も作り売り出す。当然安くだ。

 急に売り上げが悪くなり、原因を調べると複数の同業者が同じものを安く売っていた。

 怒った錬金術師が文句を言うが、それはどんな問題なのかと、逆に問い詰められる。確かに、他の錬金術師が作った物を、真似してはいけないとかは無い。


 そこで、同業者同士でギルドを作りルールを設けた。

 ギルドにレシピと実物を持って行って、仮登録する。後日、検証してレシピ通りになっていたら本登録する。

 登録された物を、作って売る場合はレシピ使用料を1個につき支払う。個人使用で、商いに使わない場合は、大目に見てもらえた。


 この制度が出来てから錬金ギルドは、常時開設となった。1秒でも早く、仮登録する必要があるのだ。



 レシピ仮登録と実物の確認は、受付嬢の仕事になる。四名で、早番、遅番、深夜番、休みと3回8時間勤務の後、休みになる。


 そこに問題が起きた。

 騎士団の小隊長が、受付嬢をみそめた。これが普通の恋愛なら揉めないのだが、相手が悪かった。

 領主の息子なのだが、母が平民で屋敷にも入れてもらえない状態だった。当然、息子は認知されていないが皆知っているという、中途半端な状態の息子だった。

 その息子もかなり異常だった。正妻がいるのに、何人も女に手を出していた。妊娠しようが飽きれば、突き放す。当然、子が生まれても認知も養育費も出さない、そんなクズ男にみそめられた。

 当然、交際を拒否する。だが、相手は騎士団の小隊長で一応領主の息子、威厳をかさに交際を迫る。


 それが何日も続いたある日。突然、彼女はギルドに顔を出さなくなる。家を訪ねても、親でさえ行く先を知らなかった。


 誰にも言っていないが彼女には、恋人がいた。都市の治安を守る部門になる、衛兵隊に勤めていた。

 彼女の失そうを知った彼は、衛兵仲間から情報を集める。

 すると、騎士団に連れ去られたのを見たという証言を得た。言い寄られていたと聞いていた彼は、騎士団の様子をうかがう。

 息子の小隊の隊員達が飲んでる酒場の後ろで、聞き耳を立てて聞いていると話し始めた。


 「あの子可哀そうだよな」

 「でもな、俺たちがどうこうできないだろう」

 「まあそうなんだが」

 「聞くところによると、手を付けないで牢に入れてあるんだろ」

 「そうそう、強引にやるのは飽きたんだとか、根をあげるのをまってるそうだぜ」

 「かなりひねくれているんじゃない」

 「ㇱッ。誰かに告げ口されたら首がとぶぞ」

 「・・そうだっだ」


 夜、騎士団の隊舎に忍び込み、牢屋に行く。騎士団の牢は、逃亡を防ぐため半地下になっている。牢の天井付近に、風窓があり空気の入れ替えが出来る様になっていた。

 風窓に耳を近づけて、人の気配を探る。牢には、誰もいないのかなんの気配も感じられない。


 三つ目の風窓。かすかな息をする気配がした。

 「だれかいるか?」

 小さく声をだしてみる。

 「え?」

 聞き覚えのある声。

 「僕だよ、声をださないで」

 「・・・」

 気配から立ち上がったようだ。

 「心配していたんだ。どうにかして助け出すから待ってくれ」

 「はい」

 か細い声が聞こえた。

 牢で暗い中、立ち上がった音が聞こえたのだろう、衛兵が近づく音がする。

 「あとでくるよ」

 そう言い残して、彼女の家に行き、事情を話した。


 彼女の両親から話を聞いた錬金ギルドだが、どうする事も出来ない。

 ギルドマスターとサブマスターが、遅番だけ引き継いでやっていたが、受付嬢達は休みも無く、もう限界だった。


 そこに兄さんが現れた。なにか依頼は無いかと聞いたが、受付嬢の反応は鈍い。どうしたのかと聞くと、とんでもない事をしそうな人を探しているとか。

 「例えば、竜に喧嘩を売るおじさんでもいいか」

 「だれそれ」

 「自分」

 「へぇー、ほんとかな」

 「ほんとほんと」

 嘘は言っていない。 

「じゃ依頼書書くね」


 「なになに、騎士団に捕らわれた、無実のギルド受付嬢の救出。

 依頼料は、騎士団から正当にもらい受けた全額。期間は早急に。錬金ギルドは全面の協力をするが、資金や資産など直接的な提供は出来ない。付帯して、錬金ギルドに迷惑となる行動はとってはならない」

 なんだこれ?本当に依頼書?

 「ほう、面白い依頼書を作ったね」

 受付嬢の後ろから初老の男がカウンターに入って来た。

 「あ、ギルドマスター」

 あわてて依頼書を隠そうと、兄さんから取り上げようとするが。

 「それなら、マスターとして認める事ができるよ」

 ちょっと待て、なんだこのギルドに都合の良すぎる依頼書は。


 「マスターから許可がでた。」

 双方に通るとは、思っていない受付嬢。これはと

 「ねえ、受けてお願い」

 下から顔を上に向けて、シナをつけ、目を潤ませ迫る。


 「うぅ・・わかった」

 まったく耐性のないおじさん予備軍は、簡単に陥落した。

魔道具★★ 簡易ランタン・汎用ランタン


 ランタンは、照明や松明代わりなど、色々な場所に使われています。

 魔道具のランタンは、油や蠟燭の代わりに魔石を使用したものになります。


 簡易ランタンのレシピ

 材料:空魔石・魔石を固定する底板(金属か木製)・周囲のスライム板と遮光板(金属か木材)、計5枚・必要に応じて持ったりつるす輪


 作成方法:魔石を固定した底板に、使用用途に応じて、スライム板3枚~5枚を取り付け、他は遮光板を取り付ける。必要に応じて輪をつける。

 高級品は、高価なスライム板(無色透明・濁り無い)の使用や遮光板に乱反射の魔法陣が書かれた物があります。


 使用方法:魔石に灯りの魔法を注入する。入れた魔力量により発光時間が変わります。


 注意事項:魔法が【トーチ(青白い)】【ライト(白)】で、熱を持たない場合は特に問題ないが、【ファイヤー(赤あるいはオレンジ)】系の低温の熱を持つ灯りの場合は、熱を逃がす処理をしてあるランタンを使用する事。火災の原因となります。


 汎用ランタンのレシピ

 簡易ランタンの空魔石に光魔法を組み込んだもの。

 魔石には、魔力を通すと発光する様に魔法陣が組み込まれている。

 底板から立ち上がった部分に、感知用の魔石(魔法陣により操作されている)があり、それに触れると魔石から発光用の魔石に魔力が流れる。

 消す時は再度触れると魔力が遮断され、灯りが消える。


 これで分かるように、汎用ランタンは魔力操作のできない者に作られた。結果、簡易ランタンより同じ性能でも高価になる。

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