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ガミリア共和国 第16話 干物と聖水              (登場人物紹介 兄さん)

 夜間、船は危険な岩礁地帯を航行しない。暗くなる前に、岩礁の隙間から漁村の近くに停泊するのだ。

 目の前に漁村があるので、希望があれば小舟を出してもらえる。村に帰ると言う出稼ぎ帰りの男たちと一緒に、漁村に降ろしてもらう。


 気の合った男の家に、泊めてもらう事ができた。村に店は無いのかと聞く兄さん。小さな村だから無いと聞くと、急にソワソワしだした。

 不審に思った”きし”が、どうしたのかと聞くと。


 ここに来る前の買い出しで、干し肉と固いパンを買ったのだが、干し肉を切らした店だった。次に向かった店でもなかったので、さらに奥に入っていった。

 そこにあったのは、町の裏手で売っている魔道具店。表通りと違い薄暗く怪しげな品々を売っていた。思わずのぞき込むと、時間を忘れて見いっていた。

 そんな店が数店、点在しながら並んでいる。通い詰める兄さん。


 結果、干し肉を買いそびれてしまった。漁村に降りると言うので、そこで買い足そうと思っていたら、店がない。数日なら持つが、きしから分けてもらっても次の町まで持たないだろう。途中の村で買える保証もない、それで困っていると。


 泊まった男に相談するが、干し肉は海が荒れた時の非常食だが、今は荒れる時期ではないので、どの家にもないだろう。ただ、行商人は持っているので、くれば売ってもらえるとの事。ただ、いつ来るのかは分からないと言われた。


 「代わりに干物は、どうだい。あぶって食えば、香ばしくて上手いぜ」

 「そうだね、兄さん。あれほど言われても買わなかった罰に、干物とパンで、次の町まで行ってもらうよ。ここからだと、港湾都市ナバリアが近いから、そこまでの我慢さ」

 「そんな」

 泊まった家の両親が作った干物を、麻袋に詰めてもらった兄さんときしは、ナバリアに向かい歩き出した。


 ☆☆



 漁村から田園風景を歩いているシスターと姉さん。泊まった家の嫁さんから、実家の母の腰痛を治して欲しいと、依頼を受けていた。治る腰痛と治らない腰痛があると説明したが、それでもお願いしますと言われて向かっていた。


 漁村から街道に出たら、そのまま畑を進むと村に入れると言われてやってきたのだが。村の様子が、少しおかしい。とりあえず入ってみる。


 入って右の三軒目。


 玄関をノックするが返事がない。このまま帰る訳もいかず、引手を引いてみる。カギはかかっていなかった。


 「ごめんください、どなたかいらっしゃいませんか」

 ほどなく。

 「だれかな?」

 初老の女の人が、歩いてきた。この人が、母親だろう。


 訳を話して、家に入っていく。家の人は、畑にでているので誰もいないと言う。

 様子を見る為、ベッドで寝てもらい腰に手を当て、魔力を入れてみる。右手から腰を通して左手に戻すのだ。


 「腰の骨がすり減っていますね、これが腰痛の原因です。」

 「治りますか?」

 「骨の再生をやり、固定すれば前と同じく動かす事ができますが。数日かかります、どうしますか」

 「再生だけ、やってもらったらどうです」

 「魔法で作った骨は、もとに戻りやすいので、数日で今の状態になると思います」

 「そうですか・・夕方には夫と息子夫婦が帰ってくるので、それから相談していいですか?今日はここに泊まってください」



 夕方までしばらくあるので、村を散策する事にした。

 「骨って【ヒール】で治るのか?」

 「【ヒール】と【ピュア】を組合せるです。本来の形は、骨自体が知っているので、血液と体液それに体内に取り込んである魔素で減る前の状態まで再生させます。そのままだと、柔らかい骨にしかならないので、固い骨にしていきます。急にやると、体が異常反応を起こすので、三日かけて徐々に増やしていくのです」

 「へえ、今度やってもらおうか」

 「姉さんのは、骨じゃなくて支える筋肉でしょ。それはポーションのほうですね。姉さんの方が詳しいのでは?」

 「ちぇダメか。飲んでも一時的に痛みが消えるだけなんだよな」


 村の中心に広場があり、隅に井戸があった。そこに老婆が倒れていた。

 「大丈夫ですか」

 様子を見ると、息もあり脈も正常なので、おぶって先ほどの家まで連れて来た。


 「おや、どうしたの」

 聞くと斜め向かいの婆さんだというので、そのまま入って行き、目についたベッドに寝てもらう。

 物音に気付いた近所の家から、幾人かが出てきた。

 事情を説明すると、この村の雰囲気が悪いのか聞き出す事が出来た。



 一週間前、神父風の男が村にやって来た。

 男は、港湾都市ナバリアで流行っている宗教を広めに来たという。

 神に祈れば、どんな病も治ると言うのだが、誰も信じようとはしなかった。


 それから三日後、急に村に病人が増えた。病人と言っても体がだるくなるだけなので、そのまま仕事をしている人が多かった。

 四日後、半分がだるいと仕事を休んでいた。

 五日目、前に来た神父がやって来た。体の不調を訴えると。

 「神に祈りなさい。神に祈った者には、聖水をあげるので飲めば神の慈悲が受けられる」

 そして六日目、シスターと姉さんがやって来た。


 最初の一本は、無料だった。飲めばうその様に、体が軽くなっていく。

 それならばと、二本目をもらおうとすると。

 「神も無限ではありません」

 寄付をお願いされた。言われた寄付は、たいした金額でもなかったので、村人は、家族の数買い求めたのだと言う。


 今日たおれた老婆は、寄付をしなかったようだ。

 「体の不調は、村全部ですか?」

 「いいえ、奥の家がおおいようです。」

 「村の手前ですけど、この家は?」

 「ここは、大丈夫です」

 「村の様子を見てみましょう」


 二人は、奥と手前の違いを探す。すぐに分かった。

 「村の入り口に小川が流れています。細長い村の奥の人は、広場の井戸を使うのでは?」


 井戸の水を汲んでタライにあける、小川の水を汲んで隣のタライにあける。

 「同じようだけど?」

 姉さんは、薄く青に染まった紙を取り出し、それぞれのタライに入れてみる。

 「これは?」

 「ポーションを作った時、いつも入れるの。毒や体の不調になる物が入っていたら困るでしょ」


 小川のタライの紙は、変わらない。井戸に入れた紙が薄く朱に変わっていく。

 「これが原因だね。井戸を浄化すれば、原因は取り除かれるけど」

 「誰かが何かを入れたのか、水源が汚染されたのか、ですか?」

 「そう。あの井戸、浄化できる?」

 「上から浄化の魔法を唱えても、下には届かないのではないですか」

 「なにか方法を考えてみる」


 夕方、夫と息子夫婦が帰ってきた。


 事情を話すと。


 腰の治療を頼まれた、寝たり起きたりの母が治れば喜ばしいとの事。治療の間は、家に泊まる事になった。


 井戸と小川の話は、村長の家で行われた。村から人が集まって来た。

 結果、今まで何年も井戸に異常はなかった。あの神父が来てから病人が増えた。井戸を浄化する事に、だれも止めようとはしなかった。


 次の日、一回目の治療の後。村長と村の幾人かが、井戸に集まった。

 「これは空になった魔石です。これに浄化の魔法をかけていきます。入れて10分たったら、井戸を汲み調べてみます。」

 姉さんの足元には、いま汲み上げ、紙片が朱に染まったタライがあった。


 再度汲み上げた水は、紙の色を変える事はなかった。シスターから一時的かもしれないので、時間をおいて幾度か試した方がいいと忠告された村長は、昼と夕方調べてみる事にした。

 それを受けて、村で話し合いをするという事になった。


 「シスター。これを持って、ナバリアに行ってくる。錬金ギルドなら、もっと詳しく調べれるはず」

 井戸水と村長から預かった聖水をもった姉さんは、ナバリアに向かう。


 「他の村で、井戸を使っている村はあるかしら?」

 「ここらだと、近くにもう2つだけだったはず」

 腰の治療が終わったら、見に行きます。

登場人物☆☆ 兄さん。のちに《ブラネリ》と名乗っている。


 フリードリッヒ王国より竜討伐に派遣される一員。



 彼は、過去を話したがらない。聞いても、話を逸らすか逃げていく。彼が、話し始めるのは、一人前の錬金術師になった後からだ。

 その錬金の腕は、高名な師匠から習得したと思われるが、その師匠の名すら教えてくれない。そんな彼が話始めるのが、小さな町で錬金魔道具を売る工房を持った頃から。


 工房では、持ち込み魔道具の修理と自作した魔道具の販売、そして新たな魔道具の開発をしていた。


 工房最後の日、彼が何を研究していたのか誰も知らない。それを教えてもくれない。ただ、特殊な魔法と関連していたようだ。彼が買い付けた、特殊な素材から推察するしかないが。


 錬金ギルドから、高価な素材の提供と、不足する素材買取の為、ギルドに多額の借金をしてしまった兄さんは、ギルドからの依頼を断れないでいた。


 竜討伐のメンバーを募集する


 討伐隊に参加しても、討伐に達成しても借金は変わらない。ただ、死ねば返せなくなるだけなのだが、あまり高額なので、死んでも返せとギルドから言われている。

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