ガミリア共和国 第15話 土石流と漁村 (登場人物紹介 姉さん)
漁村に降ろされたシスターと姉さんは、一緒に降りた村人の家に泊めてもらう事が出来た。
漁村に降りる人を探していたシスターは、ケガをしている猟師を見つける。教会の慈善事業ですと言って、治療すると村の話を聞いてみた。
村には、骨を折り動けなくなった者と、ケガをした者がいるとの事。薬を頼まれて、港湾都市まで行ってきたと言うので、一緒に降り治療しましょう。と、なった。
奉仕活動として治療を終えると、猟師夫婦と治療を受けた家族から、感謝と治療代の代わりにと、魚や海藻の乾物をもらう。それでは足りないと、質素ながらも酒の席を作ってくれた。
この地には、始めて来たというシスターとその護衛に、村人たちはここいらの様子を語ってくれた。
国の東端、山脈の麓は、神が山を切り落としたと言われています。
広大で垂直に切り分けられた崖の両端から、大河が流れています。一本は、この先の湾岸都市ナバリアへ、もう一本は隣国の港湾都市へと流れています。
それぞれの川は、途中から支流に流れていきます。それぞれに内側へと四本、計八本の支流と二本の大きな川となって、海に注がれていきます。
山脈の形がイカの胴体に見え、頭部と呼ばれている部分はないが、断崖の両端から出ている10本の川が触覚や足に見える事から”イカ山脈”と呼ばれています。
過去、大規模な土石流が発生して、十本の川を飲み込んでいきました。海まで達した土石流は、森を薙ぎ払い、海岸からさらに岩礁を押し分けて止まったと言われています。
大きな川の河口は、広大な平地となり、やがて港湾都市となっていきました。支流では岩礁が押し出されたので、中型の船の航行が可能になり、拓けた河口に人が移り住んで、村ができたのです。
「村の経緯は、わかりました。たしか、漁村は五つだと聞いたのですが?」
「そうです、今は5つです。この漁村は、最もナバリアに近い支流に出来た漁村になります。」
「八本の支流なら、残り三本には村は出来なかったのですか?」
「そうですよね、きになりますよね、一番奥と三番目は土石流の勢いが小さくて、小型の船しか通れないのです。小さな小舟では、猟で食べていけないと村は、出来ませんでした。
二番目は、ここと同じ幅で岩礁は押し出されたのですが、最後に流れた土石流が海岸前で止まってしまったのです。
村は、水が無ければ生活できませんので、村は川のそばに出来ました。ただ、村と街道の間に崖が出来ているので、買取をする行商人は入ってきません。乾物にして、隣の漁村に持っていくのですが、どこでも行商人が来ない時は乾物を作っているので、買いたたかれてしまいます。
生活できないと、人は去っていき、今は廃村になっています。」
村の歴史を肴に、一夜を明かした二人は、国の中心”農業都市イルミス”を目指して歩き出した。
☆☆
戻って森の様子を見ている王子と、先に行って様子をうかがう”ぼう”。
ぼうの行く先に、川があり、橋が架かっていた。そこには、普通にある事なので、注意して見ないと気が付かない事があった。
「あにき、こっちに来てください」
言われて行ってみると。橋の手前の森、川べりの空地にしては周囲より幅が広い。
ぼうは、空き地を森へと入っていく。
「これは、道になっていますよ。古いのと新しい轍のあとです」
奥に入っていくと、途中で森に曲がっていく。意識しないで街道を進んでいれば、気づくこともないだろう、巧みに隠されている。
「よく見つけたな。誰かいるかもしれない、静かに行ってみよう」
海岸の手前の森は、切り開かれていた。大きな小屋があり、人が住んでいる生活感がある。海岸には、やや大きめの船が引き上げられている。小屋の周囲を見てみるが、誰もいない。
誰もいないようだと、小屋を調べる事にした。小屋につながって馬小屋があり、四頭の馬がつながれていた。
小屋に入ると、荷馬車と幌馬車が並んで置いてあり、中の荷物も荒らされた様子も無く、積まれたままにしてあった。
積み荷には、行商人の食料だろう、干し肉と固いパンも載せてあった。小屋には、盗賊達の食い残しがあったが、これよりいいものを食っていたようだ。干し肉と固いパンなど、見向きもしなかったのだろう。
これで、とりあえず腹を減らすことはなくなったと、ホッとするぼう。
「あの盗賊の隠れ家でしょうか?」
「そうだろうね、積み荷から行商人を襲っていたようだね。金目の物だけ処分したのだろう」
ただ、住んでいる様子は無い。盗賊をやる時の一時的な仮住いで倉庫なのだろう。
「さて、これからどうしようか」
なにやら考えだした王子。
「ぼうは、荷馬車を操れるかい?」
「田舎では、収穫の時乗っていました。その時に操り方も教わっています」
「じゃ、二頭立てでも大丈夫かな?」
「たぶん」
小屋に泊まった二人は馬に飼葉と水を与え、荷馬車と幌馬車を小屋から出す。軽く馬車の様子を見るが、足場が悪く、草も生い茂っているので詳しく見る事が出来ない。馬を取り付けると、街道までひいて行った。
街道で、車軸や車輪・馬具に異常が無いか二人で確認していく。服は、小屋にあった行商人達が着ていただろう服と幅広の帽子を被っている。
「行商人になって、次の漁村にいくんですか?草、戻ってこないですか?」
「草は、途中の漁村を廻りながら、港湾都市ナバリアまで行くだろうね。私が、何処にもよっていない事と、途中ですれ違わなかった事から、畑を横断して”農業都市イルミス”に行ったと思うだろうよ」
「追いかけて来ませんか?」
「イルミスに連絡はするだろうが、イルミスまで追いかけてはこないだろうね」
「あの暗殺者達が、ナバリアで待っているとかはないですか?」
「それもないと思うよ。あれだけの腕なら依頼料もバカにならないからね。来るか分からないナバリアで、待っている事はないでしょうね。」
「そうですか、そうだといいんですが」
準備の終わった二人は、不慣れな二頭立て幌馬車にぼう、二頭立て荷馬車に王子が乗り込み、最初の漁村を目指した。
何度か野営をしながら、4番目の川が見えて来た。
街道から、川の脇に造られた脇道に入る。森をしばらく行くと漁村が見えた。近寄る村民、最初笑顔だったのだが、急にこわばった顔になる。
理由を聞くと、この馬車の持ち主が変わった事で驚いていると言う。この行商人は、数日前に来るはずだったと言われた。
村から年取った老人が出てきた。村人から話を聞くと村長だという。
村長が出てきたので、途中、盗賊にあった事を話すと、詳しい話が聞きたいと家に案内された。
盗賊は、昔から街道に出ていたそうで。騎士団が盗賊を捕まえ始めると、急に姿を消したと言う。
どこかに隠れ家があるはずと探すが、見つける事は出来なかったそうだ。
この荷馬車のあった場所を教えると、この村がどうこうできる訳もないので、ここの管轄になっている港湾都市ナバリアの騎士団に報告をお願いされた。
今日あった行商人は、昨日ここに泊まって、売る物が無いと注文だけ聞いて出ていったとの事だ。
乗ってきた荷馬車には、村から頼んでいた物が入っているだろうから売ってほしいと言われると、いかにも行商人のようだと王子は喜んでいた。
村を廻る行商人は、三組あり、この行商人もその一組だという。
港湾都市で、小麦粉や日用品を買い付け、漁村で干物と交換して歩く。2つ3つの漁村を廻ると、買い付けた品物がなくなるが、そのまま漁村を泊まり歩き隣国の港湾都市に行くのだとか。
翌日、漁村を出た王子は、次の村を目指す。ぼうは、このまま行商人をやっていれば、苦労しないで旅ができるのではと思っていた。
数日後、見た事のある馬車と二頭の馬にすれ違う。急いで通り過ぎる馬車に、顔を見られる事はなかった。心配していた事が杞憂に終わったと胸をなでおろすぼう。心配しすぎだと笑う王子。
最後の漁村とその手前の漁村に、シスター達ときし達が降りた事を、聞いた王子は、荷馬車の件を報告する為、港湾都市の城壁をくぐっていた。
登場人物☆☆ 姉さん。のちに《ネルシア》と名乗っている。
フリードリッヒ王国より竜討伐に派遣される一員。
母を亡くし父から虐待を受けた少女は、家を飛び出だす。父から逃げて町の反対と逃れた少女は、浮浪児達を取りまとめる”ボス”の仲間となっていた。
数ヶ月たったある日。父が探していると聞いた少女は、会いに行くが、父の姿は以前よりやせ細っていて仕事をしているようではなかった。
少女に待っている様に言い、出かけるので後をつける。父のあっていたのは、話に聞いていた奴隷商のようだ。
その場を逃げ出した少女は、町の裏手で不審な男に出会う。話をすれば、魔法使いだと言うので弟子入りを頼むが、適性が無いとダメだと言われるが、少女には、【火】【水】の適性があった。
弟子になり修行を積むが、やがて魔法使いは亡くなってしまう。葬儀を終え、師匠の兄弟弟子に修行の継続をお願いする。習っていなかったポーションと魔道具の作り方を教わると、修行の終了を告げられ、次の修行先を進められる。
向かったのは、王都。竜討伐の訓練を受ける事になった。




