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ガミリア共和国 第14話 盗賊と通りすがりの?         (登場人物紹介 シスター)

 足早に歩く王子には、当面の悩みが幾つかあった。


 「そろそろ、休憩にしませんか?」

 「・・・」

 道端の石に腰を掛ける。

 「どうしたんです、さっきから黙っていますけど?」

 「わた・・いや、今から”おれ”と言う事にする」

 「なんです、急に」

 「いつもおれを何と呼んでる」

 「誰もいないときは、王子様。誰かいるときは”すみません”とかでごまかしています。殿下とか閣下なんて言ったら怒るじゃないですか」

 「それも直そう、そうだな・・」

 「急にどうしたんですか?」

 「誰かいるのを気づかずに、”王子様”と言われたら聞いた者は、どう考える?」

 「どこかの王子?あだ名とも考えるか。あとは・・」

 「まあ、どっちかだろうな」

 「王子が居たとか、いい井戸端の噂話になるだろうね。そういうのを集めるのが、草の仕事なんだが」

 「どこに居たか、ばれるんですね」

 「そこで、呼ばれかたを変えたいのだが」

 「それなら”あにき”で、どうです。呼びやすいです」

 「あにき・・か、呼びやすいならいいか。あとな」

 「もっとあるんですか」

 「ぼうの買い出しは、まだだったんだよね」

 「ええ、途中で町を出てきましたから。足りないのが、食い物ですね」

 「おれは、ほとんど買っていない。ある程度は常に持ち歩いていたから、どうにかはなるけど・・そうだね。同じく食料が足りない」

 「次の漁村まで持つかどうか」

 心許ない干し肉や黒いパンを思うと、食事を減らすしかないだろう。


 旅に水は、必要だが水魔法があれば困らない。しかし、持っていない方が多い。


 では、川や池で飲み、袋に入れて持ち歩くことになるが、問題がある。


 町の外では、目につかない場所で糞尿をするのだが、町中ではそうもいかない、石で崩れない窪地を作り囲ってしまう。

 それを専門に集めている者がいるので、小銭を与えて回収してもらうのだ。ちなみに、スラムでは、道端や小屋の裏にするので衛生に問題がある。


 通常は、近隣の村人から聞いた畑に撒くのだが、面倒になって川に投機するのが後を絶たない。

 都市や町は、川の隣につくるか、挟んでつくる。要は、手近な場所に川があるので捨てやすいのだ。当然、川は汚染される。


 町に流れる水は飲めないし、町の近くの郊外でも安心できない。畑に撒く糞尿が雨で流入してくるからだ。


 それで、簡易のろ過をする魔道具が必要となる。旅人は、誰でも持っているので、それを使う。

 ここまでくれば、魔道具の世話になる事もない。



 立ち上がり歩き出す。道は、左が海岸でそばまで森になっている。森を切り開いて畑にしたのだが、防風林になると森を残したのだ。

 真っすぐ切り開くより、切り開きやすい場所だけでいいので、大木や岩があれば放置する。

 森の脇を街道にしてあるのだが、道は真っすぐではなくかなりうねっている。


 1時間ほど歩くと、ぼうが立ち止まる。

 「あにき、前と後ろ。前は、もめていません?後ろは、嫌に急いでいる馬車が来ますよ」


 前は、おれも気づいていた。後ろ?胸騒ぎがする。

 「すぐに森に入るのだ。後ろに見つかる前に」


 後ろに大きな立ち木があり、日陰を歩いていた俺たちに気づいてはいないだろう。

 森に入ると、前の様子を探るため森を進む。


 もめているのは、行商人の護衛と身なりの悪い男たち。

 幌馬車が二台、奥に中年の男と女、様子から夫婦か?手前に冒険者達が四人。

 向かい合って、男たちが八人。言い争いをしている。

 どうやら、強盗のテンプレだ。荷物と女を置いて、さっさと行け。命だけは、といつもの。

 対する冒険者達は、剣と盾を構えてやる気満々。数は倍だが、攻めるに攻めあぐんでいる。そんな状況に紛れ込んでしまった。


 「どうします?」

 「まあ待て、あっちを見てみろ」

 前の木々の間を二人が歩いている、背には弓。

 「仲間ですかね」

 「だろうね、冒険者を狙いたいのだが場所が悪いのだろう。移動中って所だね」


 なにやら考え出した王子、決めたのか。

 「ぼう、あの二人を狙えるか?」

 「そうですね・・大丈夫です」


 あとを追うぼう。

 弓を引き一人を射抜く。横腹から入った矢は、先が少し見えるだけ、すぐには死なないだろうが致命傷だろう。

 うめき声で倒れた仲間に驚き、辺りをキョロキョロする男に、二射目。これは、狙ったように首を貫通。白目になり倒れていった。

 「よくやった、あとはおそらく・・見ていれば、面白い事が見えるはず」



 近づいてきたのは、小型の馬車と並走する二頭の馬。馬車の速さから乗っているのは一人だろう。


 次第に慌てだす盗賊達。冒険者達に矢を射り、混乱に乗じて乱戦にする。はずが、なかなか来ない。

 それどころか、馬車が近づいてきた。状況は、刻一刻と悪くなる。


 ここで逃げ出せばよかったのだが、馬車を見た頭の欲が勝った。

 「おめえら、あの馬車もいただくぞ。馬を止めろ」

 三人が囲いを解き、馬車に向かう。


 とまった馬車と馬に。

 「わりいな、ちょいと訳ありでね」

 「通りたかったら、馬車と馬を置いて帰りな、なあに命までとらないさ」

 馬から降りた二人。冒険者風でもない、どちらかと言えば町に普通にいる住民に見える。剣や盾も持っていないので、主人に仕える従者のようだ。


 「なんだ?やるのか」

 向かってきた二人は、何も持っていない。が、圧を感じたのかショートソードを構え、威嚇する。


 動じる様子のない二人は、バァッっと小走りしながら腰に手をやり、三人の脇をすり抜ける。首を押さえて倒れる三人。

 「なっ」

 何が起きたか理解できない盗賊達、そのまま立ちつくしてしまう。


 向かっていく二人は、スルスルと音も立てないで近づいていく。次々に倒れる盗賊達。


 「悪いね君たち、急いでいるのだよ。これをどけてくれないか」

 声を掛けられた冒険者達は、少しの間固まっていたが声に反応して、正気に戻る。

 「わかりました、助けていただきありがとうございます」

 路上に倒れている盗賊を道端に引きづっていると、二人は馬車の中の人となにやら話あっていた。


 片付いたところで、馬車と馬に乗った二人は声もかけずに、走り去っていった。


 盗賊を討伐した冒険者は、その所有権を持っている。というのが一般的な常識になっていた。


 馬車が通り過ぎれば、所有権を放棄したとなる。

 盗賊達の持ち物を探り、目ぼしい物を取り上げた冒険者達は、動き出した幌馬車に従って歩き出す。まるで、何もなかったかのようだ。


 「こうなるのが、分かっていたのですか?」

 「そうだね、思っていた通りになったよ」

 「あの馬車は、なにか知っているのですか?」

 「馬車は、おれを追ってきた草だろうね。馬に乗っているのは、暗殺者(アサシン)だと思うよ。ぼうは、あれに勝てるかな?」

 「無理です、首を小走りしながら斬るなんて出来ません」

 「そうか、隠れて正解だったね」

 「ホントに、それでこれからは?」

 「そのまえに、ぼうがやった二人から頂いてきたらどうかな、冒険者達のように」


 ぼうが向かうと、王子は街道にでて盗賊達を見ていた。

 「終わりました。なにかあります?」

 「よく見てごらん。ここは、街道で森と広大な小麦畑しかないのだよ」

 「それが?」

 「この盗賊達、どこから来たのだろうね」

登場人物☆☆ シスター。のちに《シルビア》と名乗っている。


 フリードリッヒ王国より竜討伐に派遣される一員。



 神官は、治癒魔法の最終訓練として、巡回に出る。そこで訪れた、どこにでもある寒村。


 少女の父親は、さほど広くもない畑と幾本かの果樹を持つ農夫だった。

 木に登り果実を採っていたが、不用意に枝に身を預けると、枝ごと落下してしまう。骨を折り動けなくなったが、生活の為、無理をして畑に出ていた。無理が続くはずも無く、次第に動けないようになる。やがて、床につくと、起きることが出来なくなっていた。それからは、覚悟したのだろう、食事をとらなくなるとそのまま亡くなってしまった。

 代わりに母親が果樹と畑をやるのだが、床についた父親と幼い子供の面倒を見ながらでは、気ばかりあせるだけで、十分な作物を作る事が出来ない。

 父親が亡くなり、それを追うように無理をした母親が無くなった。


 村では、さほど珍しい事でも無い。またかと、村長は村人に面倒を見る者を聞き出す。二名が名乗り出たので、それぞれに果樹と畑を与えて食事と身の回りの世話をさせる。

 時おり訪れる”人買い”と呼ばれる奴隷商に売り払うのだ。


 そこに巡回の神官達がやって来た。広場に集まった村人から離れて、家に背を預けひっそりと立っている少女。

 付き添いのシスターは、みすぼらしい少女から何やらオーラが漂っているのを感じた。

 村人に聞くと、最近亡くなった母親の子供で他に身寄りがないので、村で食事だけ与えているという。


 少女に近づき、頭をなでる。シスターの顔を見る瞳には、輝きがなかった。体を触ってみるが、特に抵抗する様子もない。

 両手を持ち、自分の魔力を流し込む、軽く強制魔力循環を行った。少女は、驚いた顔をしたが、すこし気分が悪くなっただけなので、そのままジッとしていた。

 この子には、治癒魔法かアンデッドに有効な光魔法、いやさらに上の神聖魔法の適性があるかもしれない。


 「この子を教会にあずけることは、出来ますか?」

 村のお荷物となっていた少女、この申し出にだれも異議を言う村人はいなかった。


 その後、教会で治癒魔法や光魔法を習得して、シスター見習いとなった少女は、保有魔力の多さから竜討伐のメンバーと推挙されていった。

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