表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/25

ガミリア共和国 第13話 船酔いと巨大イカ           (登場人物紹介 きし)

 きし・姉さんの四人は、予定通りに船に乗る事が出来た。


 問題が無いわけではない、全員が船酔いでダウンしてしまったのだ。

 船員に治し方を聞くが、そのうち慣れるさと笑われるだけ。

 二人部屋の二等船室で、青くなりジッとしている四人。


 これは、病気ではなくて状態異常?

 そう考えた兄さん、原因を考える。


 いつもと違うのは、”揺れ”?

 揺れない様にするには・・・・・


 思い出したのが、知り合いの錬金術師が作った『水ベッド』。夏暑くて眠れないと言う貴族の依頼で、作っていた。

 ぐっすり眠れるようになったと好評だったベッドは、富裕層に売れた。同じくらい貧乏なあいつが、と当時はかなりうらやましかった。


 単なる水ではなく、振動や揺れを無視できる水袋が出来れば。


 非常時と姉さんの部屋のドアをノックする。

 「だれ?」

 気怠そうな姉さんの声。

 「僕だよ、相談したいのだけれど開けてもらえる」


 かすかな衣擦れの音がドアに近づいてくる。

 僅かに開いたドアから、酸っぱい匂いが流れてくる。

 迷惑と顔に書いている姉さん。


 「船酔いを治す方法を考えたのだが」

 と、気が紛れると甲板に連れ出し、長椅子に座らせて話してみる。


 青い顔で目を閉じながら水を飲んでいる。

 「水ベッドねえ。作った事がないから、どうやれば。

 単純な水は作れる、問題はそれの膜と船の揺れを吸収する水?。

 膜は、魔法では作れないから錬金術でやってみて、水だけど・・」

 考えこんだ姉さん。

 

 ドオーン


 唐突に船が止まった。前に投げ出される二人、慌てて何かを掴もうとするが何もない。離れて座っていた二人とも床に体を打ち付けてしまう。

 「イテテ」

 姉さんを見ると、顔をしかめて床に座りこんでいる。

 「大丈夫かい?」

 「ケガは無いようよ、それよりなにが起きたの?」

 腕をさすりながら、辺りを見回している。


 「スクイッドモンスターが出た」

 水夫が叫びながら、右往左往している。

 「イカの化け物?」

 近くに来た水夫を呼び止め、状況を聞き出す。


 クラーケンは、巨大なイカかタコの魔獣だが、こんな近海には出ない。

 ただ、その幼体となるイカやタコが船に絡まる事があるそうだ。

 今回は、強大なイカが船尾の舵に巻き付いたという。


 船尾に向かうと、5人の水夫と冒険者が、弓とクロスボウで射っているのだが、海水で勢いが殺され、効果があるように見えない。


 フラフラしながら様子を見ていた姉さん、何を思ったのか

 【火球(ファイヤーボール)


 ジュ

 意味もない事をしている。


 「・・・」

 分かっているだろうから、指摘しないで見ていると。


 なにやら怒ったのだろうか、巨大なイカが浮かび上がってきた。

 これは好機と、矢が勢いよく射かけられるが、表面のヌメリ?に邪魔されるだけでイカの皮?まで到達していないようだ。

 「これじゃ・・」

 冒険者達は、射るのをやめ呆然と眺めている。


 【水球(アクアボール)

 姉さんは、小型の水球をウオーターボール、大型の水球をアクアボールと区別して使っていた。

 イカの皮の端の方、本体の上が盛り上がって来た。体内に水球を発生させたようだ。


 「嬢ちゃん、持って来たぜ」

 屈強な水夫が四人、大きな弩を持ってきた。これ、船首にあったやつ?

 「あそこ」

 姉さんが海面から出ているコブを指さす。


 「オッシャー」

 叫び声と共に飛び出す細腕ほどの矢。

 「根性入れろ」

 矢には、ロープがついている。後で聞いたら、岩礁の無い切り立った崖に打ち込み、荒しが通り過ぎるまで流されないようにする弩だという。

 出来るだけ細くする為、金属を織り込んでいるとの事。


 ふくらみに刺さったロープに近づく姉さん、手に持つと。

 【(サンダー)


 ビクッ

 波打つ強大イカ。


 【水爆(アクアバースト)

 大きくイカの皮が盛り上がる。おさまると海上に巨大イカが浮き上がってきた。


 「気絶したはずです、あとはお願いします」

 「おいおめえら、気合を入れろ」

 次々に太い銛が、イカの頭(目と皮の間)目掛けて投げられる。

 「船長、もう無いんだが」

 「しゃーねえ、ついてこい」


 腰に大きいナタ?をぶら下げて、海に飛び込む船長。後を追う水夫達。


 本体の上に、刺さった銛を頼りによじ登ると、銛を抜き頭に打ち込む。それに続く水夫達。

 ここは大丈夫だろうと、船長は船尾に絡みついてる触覚を斬り離しに行った。


 「で、嬢ちゃん、どこがいるんだい?」

 「先のエンペラー?というの。そこがいい」

 「で、こいつを食うか?少し大味があぶるといい味になるぜ」


 船尾から切り離された触覚とエンペラーが、船上に引き上げられた。残ったイカは、船より大きいので放置する、しばらくすると海底に沈んでいった。


 水夫達は、エンペラーと触覚の表皮を剥ぎ、小さく切り刻むと大きな七輪であぶっていく。戦勝祝いの酒盛りが始まった。

 「これも嬢ちゃんのおかげだぜ、なにかお礼になる事はあるかい」

 「じゃ、この(表)皮をもらうね」

 「こんなもんでいいのか、全部持って行ってくれ」

 「エンペラーの分だけでいいわ」


 「兄さん、これで袋が出来るでしょ」

 「おぉ」


 ヌメリを何とか取り、悪戦苦闘の末。二個の大きな袋が出来上がった。

 【アクア】

 袋に手を触れ、水を入れていく。粘度のある水だそうで、固さを調整できるそうだ。


 二等船室は窓が無く、奥の正面に固定机と椅子。その両側にベッドが固定されている。机幅の間は通路になっていて、荷物はベッドとドアのある壁との間に置く。


 その通路に、水ベッドを挟み入れる。固定ベッドより少し低い水ベッドに、シスターが寝ている。

 船が急停止した時、勢いでベッドから転げ落ち、反対のベッドにぶつかったのだが、自分で治療したという。

 「もう少し固くお願いします」

 言われるまま調整していると、スウスウと寝息が聞こえてきた。大丈夫だろうと、きしの部屋に。


 きしは寝ていた、正確に言えばベッドに頭をぶつけ気を失ったようだ。

 部屋の外に引きずり出して、水ベッドを入れる。シスターと同じ固さに調整し、きしを寝かしつける。


 翌日には、二人とも船酔いは治っていた。


 快適な船旅は続き、兄さん達は4番目、姉さん達は5番目の漁村に帰るという村人と一緒に降り、ガミリア共和国に足を降ろした。


 余談。水ベッドを見た船長は、部屋に運びこむと一晩で気に入り。高額買取となった。船と自宅に置くそうである。


 ほくほく顔の兄さんと姉さん。

登場人物☆☆ きし。のちに《キシム》と名乗っている。


 フリードリッヒ王国より竜討伐に派遣される一員。



 村に現れた魔獣討伐に来ていた辺境伯騎士団、話していると「坊主、俺たちとくるかい?」と冗談半分で話しかけられた。それを本気にした彼は、両親を説得し騎士団に入れてもらう。

 従士隊で訓練を受けていたのだが、竜討伐の話に思わず「はい」と答えてしまった。


 しばらくすると王都に向かう馬車に載せられ、討伐隊に参加することになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ