フリードリッヒ王国 第11話 竜に滅ぼされた村と交易都市 (登場人物紹介 王子)
フリードリッヒ王国の王都は、海と山の中間に位置する。竜の被害が拡大すると、討伐の費用を捻出するため増税を行った。これは、竜の被害を受けたどの国も同様の対策を取っていた。
竜討伐失敗とさらなる増税、海側の住民にとっては迷惑な話である。次第に海側と山側と対立する様になり、結果、三度目の竜討伐失敗の混乱に乗じて海側は独立していまう。
海側の貴族達は、竜討伐に消極的であったため、討伐隊には最低の兵しか出していなかった。討伐隊全滅により、大きく戦力を下げた山側には、独立を阻止する事は出来なかった。
これは、竜被害にあった国のいづれも同じ運命をたどる。どの国も討伐隊を幾度か出し、いづれも全滅し、対策として増税を行い。海側の独立という結果になってた。
フリードリッヒ王国は、穀倉地帯にできた幾つもの村々を、支配することで出来た農業国であり、海の恵みにも恵まれていた。
独立により海の交易品が絶えると、やむなく、冒険者ギルドを強化し、獣を多く狩らせて肉の供給で凌ぐしかなかった。
それは、山側の隣国も同じだった。
王都を出た王子達は、竜の被害を調べる為、山に向かって移動していた。
そこは、一面の草原になっていた。五年以上放置された土地は、草と所々に低木が生えているだけの場所になっていた。
「ここが最後に襲われた村ですか、何もありませんね」
「燃えた家の後や崩れた石の塀を想像していましたが、本当に何もないです」
来てみれば、何もなさ過ぎて拍子抜けするしかなった。
「ここ。ああ、こっちもか。変な窪地になっていますよ」
「窪地なら、そこら中にありますね。」
「草で見えませんが、草が全体にへこんでいる場所がそうですね」
「なんでしょうか、このへこみ」
「こっちに来ると、足跡がある」
村はずれで王子の声がする、行ってみると竜の足跡が残っていた。
「調査団の報告には、足跡はここだけで、飛んできてここに降りた後、周囲に足跡が確認されなかった事から、ここから飛び立ったのだろうと推測されています」
「意味が分からない、眷属でも連れてきたのでしょうか」
「報告書には、周囲の村から見えたのは一匹の竜だったとあるので、眷属はいないだろう」
「今ここで、これを説明するのは、無理でしょうね。」
王子達は、村々を移動しながら依頼があればこなし、村が無ければ野宿をし、移動していた。
「次は、交易の都市です。そこで、長旅の準備をします」
「越境するのですか?」
「そうですが、周囲の国とは幾度か争いをしているので、友好国ではありません。そこで、竜の山のすそ野を迂回しながら隣国の隣を目指します」
「敵の敵は、友ですか」
「まあ、そういう事です」
現在のフリードリッヒ王国には、都市と呼べる町は二つ。首都と交易都市。
すこし歴史をさかのぼってみる。
村々を支配して王国の基礎が出来ると、次第に周囲を支配し拡大していく。海に達した王国は、港を中心に港湾都市を作り王都と共に栄える事になる。
その港湾都市が独立した後、王国内部で王位継承の争いが始まっていた。要は、責任の擦り付け合いである。現王に退位を迫り、次期王を誰にするか・・。
小国に普通、宰相という役職はいない。いるのは、大国である。
現王になる前、王と王妃・兄が二人と妹一人がいた。三人兄弟だが、妹は早々に政略結婚で他国へ行く事になる。
そのすぐ後、兄の一人が急死した。原因は、心臓麻痺だと薬師の医者が言っていた。
この交易都市は、フリードリッヒ王国と近接する四国の中心にある。その為、各地の交易品が集まり大層にぎわっていた。
意図して作った商人の都市なので、四国それぞれが干渉できないでいた。都市を牛耳っていたのが、この都市の商業ギルド。
いくつかの大きな商会が運営に携わり、小国に負けない私兵を持っていた。
その利権を狙い隣国が動く。同調したのがフリードリッヒ王国を除く三国。
形勢不利と判断した商業ギルドは、フリードリッヒ王国に援軍を要請する。
これに騎士団を率いて、都市に入ってきたのが、当時の騎士団長、今の宰相になる。
結果から言おう、三国の侵攻はなかった。
都市内に入った騎士団は、治安維持として都市内で好き勝手していた私兵を次々に捕縛、処刑していく。
急激に、私兵がへり戦力が低下していく交易都市。ギルドより抗議が来るが、騎士団長は手を緩めずに粛清していく。
ひと月近く、何処も攻めてくる様子がない。不審に思ったギルドは、三国に書簡をだす。
『そちらが攻めてくるなら、交易を全面に止める。』
交易が栄えるという事は、それぞれの国で不足する物があり、仲の悪い他国から仕入れるしかないのだが、それを行っているのが商人達である。
その書簡に驚いたのが、三国。攻める予定もないし、交易都市が滅びるのは自国の民の突き上げが来ると分かっていた。
反乱の種を作ったりしないと、ギルドに返事を出すがもう遅かった。
交易都市の軍事を仕切った騎士団長は、都市運営に問題があるとギルドの解散を迫った。
力の暴力に従うしかなかったギルドは、解散し新たに騎士団長の意を汲むギルドに再編される。
以後、交易都市領主となった騎士団長は、国王に退位を迫り、一人残った王位継承者、現国王が継ぐ事になった。
しばらくすると、前国王と王妃は体調を崩して療養後に亡くなっている。
それに合わせる様に、騎士団長が凱旋。交易都市の実権と利権を持って、王国の宰相となった。
三国から元に戻せと糾弾されるが、宰相はどこ吹く風。武力に応じるなら交易は止めると言われて、現状を承認するしかなかった。
交易都市は、今もにぎわっていた。
立派な宿に泊まった王子達に、一人の商人が近づく。王子の知り合いなのか、少々大き目の袋を渡すと帰っていった。
「なんです?」
「これは路銀だよ。ここから先は、他国になるから貨幣が変わるのさ。それを持ってきてもらったのさ」
袋の中には、模様の違う金貨が入っていた。
「他国の金貨なんですね、初めて見ました」
翌日、町を観光しながら旅の準備をしていた。夜、別の男が王子に近づく、うなずく王子。男が立ち去ると、皆を集めた。
「宿を変えるよ、持ち物を持ってついてきてくれ」
王子は、宿についても荷物をとかせなかった。訳も分からず、宿の裏手に行くと開いている裏門を通って、裏手裏手へと移動する。
裏門にいた男は、先ほど王子と話してしていた男。その案内で着いたのが旅人や薄汚れた市民と浮浪者もうろついている所にある安宿。
「まだ準備が終わっていないのだ、これを準備して欲しい」
メモを渡す王子。
「これだと、明後日にはそろうでしょう」
「よろしくたのむ」
男は、宿から出ると消えていった。
理由を尋ねると王子は、あまり話したくないのかボソボソと話し始めた。
最初に来たのが、王国のお抱え商人。国の依頼で路銀を持ってきた。
次に来た男は、母親の実家に使えている使用人。王子が旅立つひと月前に、ここに来て情報を集めていた。
母が悪い噂を聞いた事で、実家に調査を依頼したのだという。
「確証はないのだが、」
そう言って王子は話し始めた。
「今、兄二人が王位継承めぐって争っているのは知っているだろう。私は、興味がないので、小さな領地をもらえれば、どっちが王位についてもいいのだが、宰相は私が邪魔らしい。小さな芽でも摘んでおきたいようだ」
「・・・・」
王家の事なので理解できないが、兄弟喧嘩に別々の親がそれを後押ししているのだと、何となくわかった。
町を見る事も出来ずに宿にいると、以前の男が入ってきた。
「これでよろしいですか」
中を見た王子。
「ご苦労、助かったよ」
「では、今夜案内します」
逃げるように交易都市を出ていく王子達がいた。
登場人物☆☆ アミッド・フォン・フリードリッヒ。フリードリッヒ第三王子
母、メイド見習いとして来ていた子爵の四女、のちに側室となる
王位継承、第三位(支持者は、勢力争いに出遅れた地方貴族)。王となるつもりはない、小さな領地で静かに暮らしたいと思っている。
王位継承、第一位。第二王子、正妃の子なので、王太子となっている。(支持者、宰相とその近親貴族・騎士団・魔法師団・術師団など武官文官も協力者)
王位継承、第二位。第一王子、長男だが母が側室。(支持者、反宰相派の貴族・なお宰相を快く思っていない騎士団や魔法師団・武官文官の一部もいるが数は多くない。ただ、第一子が継承すべしと宮廷神官達は支持している)”宮廷神官は、国教とした教会から王宮専属として派遣されている者達、その為、宰相とは不仲”
王位継承、第四位。第四王子、側室の幼児。(支持者、無し。ただ、現在は国王の最も寵愛の対象)
王位継承、喪失。第一王女、正妃の間に最初に生まれた子、第一王子の姉にあたる。近いうちに隣国に政略結婚で嫁ぐ事が決まっている。
王位継承、第五位、第二王女、第三王子が生まれた翌年に生まれた妹。妹思いの兄が大好き。兄と同じく王位に興味が無い、兄と一緒に竜討伐に行きたかったが周囲の反対で断念。現在は、兄の役に立とうと護衛の近衛兵と宮廷魔法師から指導を受けている。




