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フリードリッヒ王国 第10話 緊急討伐依頼

 王都での訓練も四年半となっていた。


 基礎訓練は終了し、初期の連携の型は、問題なく動けるようになっていたし、多少のアクシデントにも対応できるようになっていた。今は、実際に起こるだろうと想定される連携を話し合い、連携として組み入れていた。


 もうそろそろ、ここを出る時期かな。


 王都の付近の森に、野獣はほぼいない。他の森から移動してきたか、逃げてきた魔獣がいるだけで、それも、騎士団が行っている森での野営訓練の途中で討伐していた。


 そんなある日、冒険者ギルドから緊急討伐依頼が王子に来た。


 群れのボス争いから負けたらしい大型のフォレストウルフが、現れた。討伐に向かった冒険者が、討伐に失敗。

 足に矢を受けたが、冒険者に噛みつき、その後逃走。かなり興奮していて危険なので、王都の門番から森に入らないように注意喚起している。

 それでも、森に入る人はいるだろう。

 緊急事態なのでこの討伐を受けてほしい。


 王子は、これを王都での最終討伐訓練とした。



 ギルドに向かい、フォレストウルフの最初から最後までの目撃位置と討伐失敗の状況を聞き取り森に向かった。



 「ここが、最後に見つかった所だが。向うから来て、ここで住民と目を合わせている。同じ方向に向かったとは思えない。兄さんの出番だ」

 「了解」


 意識を集中して、魔力を弱から強へ、波状的に発生させ戻ってくる魔力を感じる。

 「この方向。かなり大きな魔力反応、距離は歩いて20分位」

 「こっちの魔力に気付いたと思うか?」

 「動いた様子がないので、気づいていないと思います」

 「よし、音を出さないように移動する」

 



 フォレストウルフは、魔力を身体強化に使う。足に使った時は、高速で移動するし、変則的な移動もできるようだ。今回は、後ろ脚に矢を射られ思うように動くことができない。

 そこで、注意すべきなのが前足による爪の斬撃、人の骨ならかみ砕く噛みつきとなる。

 斬撃を飛ばす事は無いが、魔法で強化されているので、カミソリの様に斬れ、深く入り込み、骨があっても切り裂かれると一撃で致命傷になりかねない。

 知性も高く、話す事はないが、人語を理解していると言われていた。



 先ほどから、周りをチリチリと魔力が通り過ぎる感覚がある。近くに魔法使いがいるかもしれない。

 ただ、足に矢が刺さった状態で、動き回るのは得策ではない。


 折れた矢を噛み、矢じりの方向を調整して、一気に引き抜く。あとは、魔力で傷を押さえつけ、止血する。

 移動の必要があるかもしれないと、歩いてみるが片足が上がらない、引きずるように歩くしかない。


 移動をやめ、傷口がふさがるまでおとなしくしていようと、横になる。


 なにやら胸騒ぎがする。なんだろう、怪しい音は聞こえない。気配を探ってみると、なにやら近づいている。幾人もの気配が近づいてきた。


 明らかに敵意を持っている。昨日噛みついた人族が、仕返しに来たのかと思ったが、昨日と違う気配だ。今日あった人族でもないようだ。

 起き上がり、威嚇の唸り声をあげる。


 急に足跡が聞こえる様になった。

 音は6つ、ここを囲うように移動している。

 まだ包囲は出来ていない、そっちに逃げるか?いや、この足では、途中で動けなくなる恐れがある。森の中ならこちらが有利だ、包囲に移動中なら、攻撃してこないだろう。


 一番弱そうなメスに向かい、走り出す。後ろ足がいう事を聞かないが、それでも普通に走っている速さにはなっている。

 メスは驚いたようだ。「キャ」と短く鳴いたが、それからが早かった、素早く足の位置を決め、腰を落として棒をこちらに向けながら、後ろに引き。

 グゥンと突き出した。棒の長さは、メスの半分ほど、いくら端を持っても届かない、脇をかいくぐり横腹に噛みついてやる。


 走りながら少し横に振れた、棒にぶつかることは無いと、メスを目に捕らえながら、棒を横目で見ていた。

 棒が軌道修正してきた、こちらに合わせて振ったのだろう、まだ距離はあると油断した時。不意に棒が伸びた。

 ぶつかる、足に負担がかかろうが、後先考えずに両足に魔力を通し、強引に横に体を向ける。

 空振りした棒は、生き物の様にシュルシュルと戻っていき、最初の棒になった。

 なんだあの棒、間合いがわからない。近寄れば棒で突かれるか叩かれるだろう。

 いつもなら、あの程度の棒、毛皮である程度防いでくれるが、負傷している足を狙われるとまずい。


 この間に、包囲はできたようだ。



 シュッ・シュッ

 弓の風切り音が二個、後ろと脇、予想される角度は・・無意識に魔力をまとう毛皮。ジッと二回、皮膚を削って矢がそれていく。体を軽くそらして矢の刺さる方向を変え、無効化できた。


 目に盾を持ったオスが近づいてきた。音から反対からも来る、なんだこいつら次から次へと全くうっとおしい。


 盾を持ったオスを無視して、半身ずらす。やはりこっちがおとりで、反対の剣を構え迫るオスがメインだな。前足に魔力をいれ、振り上げる、予想していたのか盾を構える。フン、そんな木の盾が役に立つか、斬撃を込めて盾を切り裂くが、爪の後が深く残っただけで砕ける事はない。

 なんだと、今まで木の盾など、乾燥した薄板の様に破壊してきた。それに気を取られたのが悪かった。それは本の一瞬の間、【ファイヤーランス】聞こえた時はもう遅かった、わき腹に突き刺さる火の矢、いや槍か。

 内臓がブスブスと焼けただれていく。あまりの痛さに、周りを一切見ず、一直線に駆け出した。

 先ほどのメスの脇を、突っ走る。としたが、ブゥーン、ゴツ。脳震盪を起こして、気が遠くなっていく。



 「ふう」

 「こいつ、ボス争いするだけあって、ものすごく手ごわかった」

 「最後は、やられると焦りましたよ。見事な一撃でしたね」

 「ええ」

 照れているのがわかる


 「討伐証明に耳と切って、魔石は取り出します?」

 「兄さん。この魔獣の大きさだと使える?」

 「微妙ですね。ただ、研究用にはいいですね、取り出しましょう」


 「では、この魔獣はあちらの空き地へ持っていきましょう。そこで魔石を取り出したら焼却してください。

 その後ギルドに報告。そして城下で祝勝会をやります。

 三日後に、この討伐隊結成となった、竜に滅ぼされた村にいきます」

 「では、もう王都に戻らないのですか」

 「戻るのは、竜討伐の後です」

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