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Re:FILE2-3 風に乗って飛んでいく

 舞菜はいつものように。笑顔。だが、まだ悲しみの目をしていた。

 さすがに飛夜理も愛歌もその表情に唖然とした。舞菜が無理に笑うのはいつもの話。だが、その笑ではないと、内心わかっていた。


「愛歌……」


「優も舞菜も今まで頑張ったのよ。優は舞菜を傷付けないように、舞菜は優に不安をさせないように……あの世界では、それがすれ違ったのだけど。」


 悲しそうでも、飛夜理は笑う。やだな、と愛歌は少し視線を落とした。


「私はあのふたりを、ふたりの絆を信じてる。」


「そうだな。……きっとあいつらなら大丈夫だ。」


 飛夜理も、愛歌も、言葉は違えど、思い、願う事は一緒だった。……このふたりに永遠の幸あれ。


「飛夜理!えへへ、ごめんね。急に出て行って…」


「あ、愛歌さん。戻ってたんですね。」


 2人はなにごともなかったように声をかけた。「それより、帰りなさいよ。みんなが心配してるわ」と愛歌はそっけなく言葉を投げた。なんでこんな言い方しか出来ないかね、なんて飛夜理は思うのだ。


 そして、四人は教室に戻った。

 まっさきに気付いた麗華は2人に抱き着いた。


「私は優には舞菜を傷付けたらぶん殴るって言った!!舞菜には優と向き合えって言った!!二人とも、約束破った……」


「ごめん……」


「すいません……」


「でも……あんたら2人には絆がちゃんとある……お互いを大事にしてくれるなら、私は文句言わない」


 麗華ははにかんだ。泣きそうな目をしていた。そのあとに瑠亜が「そーだな」と笑った。


「俺も姉貴もその絆を放り投げてしまった……だからあんな目にあった。2人は、そうはなってほしくない。」


 うんうん、と瑠衣は上下に首を降った。

 あぁ、と優が呟くと「僕も馬鹿でしたね」と話した。すると、夢も愛歌も、悠志もにっと笑い、「しっかりしろ」と告げた。


「おらおら、俺からも話さな気がすまんぞ。」


 現れたのは、創だった。白衣を着て聴診器を掛けた彼はまるで医者だった。……いや、彼も変わってはいるが、れっきとした医師で、優の担当医である。優への……担当医科は、神経・心療内科。


「聞いたとおり、空下家には不思議な話、男には【解離性同一障害】……つまり、なんだ。二重人格が代々引いているんだ。……優もそのひとり。」


 彼の言うことだから、というのもあるが、皆は信用せざるを得なかった。

 それでも彼らは、いつもと変わらない笑顔でいた。それを見て、優はほっとしたのか、いつもより優しく微笑んだ。


「優、いい仲間を持ったな」


「………はい。」


 創の言葉に笑う優は凄く清々しい表情をしていたのだろう。創は「こんにゃろー」と彼より身長の高い優の頭をわしゃわしゃと撫でた。パニックになる優を放っておいて、創は、さぁ始めるぞ~と叫んだ。


 屋上には、希とふぶきが珍しく、2人で話していた。


「時間は戻りません。前にしか進みません。彼はそれでも、前に進みました。」


「あら、難しいこというのね♡……そうね。でも優は、運命を受け入れた…ただそれだけ。それは、とても大きなこと。だから、周りが助けるの。」


 希が目を開いていることにふぶきは少し驚いたが、それでも目が優しかった。ふぶきは「そういうものですか…」とつぶやいた。


「そういうものよ♡きずなのことだって、皆受け入れてくれたんだよ♡だから、きっと大丈夫……それに、優には舞菜がいるんだもの♡」


 希の見る方には真っ青で遠くまで続く空。青く澄んだ、永遠にまで続く空。希はふふっと少し微笑んだ。


「彼らは、今から少しずつ自分に潜む【闇】に向き合っていくのよ。」


 希は、一切ふぶきの方を見ずに答えた。


 悲しみは幾度とある、訪れては彼らを苦しめる。でも、その苦しみを抜ければ必ず、幸せな自分が見える………昔、ふぶきの母が彼女に伝えた言葉だった。


「いつか、不幸は、……………雨は必ず止むのです。」


「なぁにぃ?それも母上の言葉かしら♡」


「いいえ………これは、私の言葉ですよ。希。」


 希は表情を変えなかった。そのまま、遠くをみすえた時、愛歌と飛夜理がこちらに来るのを見て、「それじゃあね♡」と言って希も姿を消した。


「ふぶき…。あなたはわかってたんでしょうね。きっと……。」


「なんのことだか。」


「まぁ、2人とも。それはいいから。ふぶき、授業始まるぞって、濱崎先生が。」


「あぁ、あの人の授業でしたか……面倒ですね。」


 そんなこと言ってないでさっさと行きなさい、と言う愛歌にふぶきは、「優は、鬼にもなります。ですが、」

 愛歌はその言葉に、ふっと微笑んだ。


『その反対にもなりますよ。』


 風に乗って飛んでいくその言葉は、幸せな2人を願うようだった。

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