FILE25 変わり始める
気がつけば、もう村に、つい最近まであった紅葉は目につかなくなっていた。
時間の感覚が薄い空下村は一時間単位、つまり一科目六十分単位で休み時間も含み授業が進められ、終わりと初めにはチャイムが鳴るがそれを一時間で村の住民たちは時間の感覚を掴む。
「さて、四時間目が終わったし………昼飯でもするか。」
「緩いなぁ……相変わらず。」
真吾の授業が終えた頃だったので、瑠亜はあははと苦笑いをした。
さて、昼はいつもどおり、皆が机を合わせて昼食を取るのが普通になっていた。
「村もだいぶ寒くなってきたね。この間まで死ぬほど暑かったのに。」
そう話す瑠衣に、死ぬほど暑くはなかろうに、と飛夜理は返した。
「そうよ………。まだ涼しくなったほうよ」
愛歌はそういった。すると悠志は、君にとってはね、と言い返した。
君にとっては?と瑠衣も瑠亜も首をかしげた。それに麗華は、暑かった……というのかしらね?と言っていたが、愛歌は、暑かったのかもしれないとぼやいた。
「色々あったから、ね。…………でも、今は何もない。何もないからこそ、幸せ。暑くない。」
「愛歌は、やっぱり普通の人とは観点が違うね。」
瑠衣がくすっと微笑んだ。
「それに普通に暑くもあった。」
「そうなんかい」
あはははと皆は声を合わせて笑っていた。そして、愛歌は、こうつぶやいた。
「村が変わったから………、私も。皆も。変わり始めるの。」
そっか、と飛夜理は隣で微笑んだ。その顔を見てか、愛歌は顔を背けてしまった。
「やれやれ………。」
「姉貴、どうかした?」
「ううん、なんでもないよ。」
瑠亜にそう瑠衣は返事をした。きっと今年からは疲れる秋かもね、と瑠衣は心の中でぼやいた。
さて、その頃、職員室ではどこかざわついた雰囲気があった。
「し…………真吾、準備はいい…?」
「あぁ。…………先輩は………?」
「俺は別に構わん。理事長、副園長は?」
「あ?知らんぞ。どこへ言ったんじゃ………。」
律はマイペースということがあり、居なくなるのはよくあったので、その内帰ってくるから始めようかと智ノ科が言うと、四人は動き始めた。
昼食を食べ終わった皆は教室でのんびりとしていた。
そんな平和を崩壊させに来る奴が一人いた。
「やっほ〜♡みんな〜♡」
この声は!!と言うように飛夜理は表情が固まった。
「おい!!飛夜理!!悠志!!いる……………かって遅かったか!!」
創がせっぱ詰まった表情で乱暴に扉を引いた。…………珍しい状況にどう対処したら良いかわからない皆は固まっていた。
「創先生………その、落ち着いてください。どうかしたんですか?」
飛夜理が聞くと創は「いや。いろいろあってな……」とぼやき、飛夜理と悠志を教室の外へ呼んだ。
「実は…………。」
彼らの話が終わったのがわかったのは、叫び声だった。
こんにちは。愛歌よ。今日は空下村に珍しいお客さまが来ているの。創立者なのに全く来ることは少ないのだけど。
「愛歌ぁ、久しぶりだな。」
「来たよー」
こちら二人は作者の心井菜城愛さんと絵師のたぴおか先生。二人とも基本放置しつつも、良く分からない妄想は良くするらしいんだけど………。
「ほら、愛歌ー。鮒寿司買ってきたよ。」
「………!ありがとう………。」
たぴおか先生はいつも来る度に私の好きな物をくれる。
「愛歌も物好きなやつだなぁ。こんな臭い…………いや、臭のきつい寿司をまぁ……」
そして、菜城愛さんはいつもそう言う。
作者が来る日は大体緊急事態か暇潰しか私たちが呼ぶか何かあった時。多分今回は普通の暇潰し。
「あ、お久しぶりですね、お二人とも」
「飛夜理じゃないのー!………アンタ、相変わらずいい腕してるじゃ……………ぐは」
「黙れ、変態菜城愛☆」
「たぴ…………ひでぇ 」
「なんだって?」
「ナンデモナイデス」
たぴおか先生強し………よね。菜城愛さんは前から何かと変態っぽい所があったけど、まさか酷くなってるなんて。
「あ、そうそう、今日はね、色々予告しに来たんだよ。ね、菜城。」
「うん。そうだった。わしら作者組と空下はここではじめる前は別の場所や別の形で続けてたの。始まりは違う形で最初の話はもっともっと違うものだった。………まあ、本題としては、私たち、この10月で5年目の節目を迎えるのよ。だから、その予告だよ。」
「…………なにそれ。」
「いやぁ、読者の皆様には、大変お世話になってるし、こんなクズをありがとうございますなんてのもよく思うし」
……………こうやって、菜城愛さんはちょっと自己評価が低い。低すぎる。
「まぁ、私らもいい節目だしね〜。何年続くか見ものだよ。」
「じゃあ先生ら、俺をやたら女装させたがるの辞めてくれません?」
「「やだ。」」
飛夜理の反論も虚しいだけだった。
「だって似合うアンタが悪い。」
「そうだそうだ」
ぐっと歯を食い縛る彼は、どうしようもない様子で、折れた。
「さて、暫く居座るから。」
「「は?」」
菜城さんは、ついに現実と空下村の境目がわからなくなったらしい。




