FILE15 秋祭りと文化祭の狭間で
「愛歌。しっかりしろ。」
「あ、うん………。ごめん。ぼーっとしてた」
大丈夫だけど、と飛夜理は呟きながら下をうつむく。そして、ばっと青いタオルを愛歌に渡した。
「?……………タオル?」
愛歌が首をかしげていると、瑠衣が後ろから抱きつき、
「あーら、飛夜理さん、くっっそ純粋ですなぁ。」
「…………どゆこと?」
「愛歌、さっきの抹茶オレのせいで下のカッターシャツだけが透けてるよ~」
あ、と呟き、愛歌はセーターを脱いだ。そして、タオルが首元に巻かれているのをみて、瑠衣と瑠亜と飛夜理は同じことを思う。
(あ、セー●●ム●●のマー●●リーみたい。)
あとの皆は何を考えにやけているお前らと言った目で三人を見つめた。
「いや、気にしないで。」
「色々大人の事情だ。…………うん。」
そうか、と周りは納得した。
割とのんびり午後も終え、文化祭は名残惜しいながら、終わりを告げた。
「ふぅ。疲れたなぁ」
割と体育会系の真吾が珍しくため息をついた。
「一番真吾先生が似合ってたけどね」
悠志は間に口を出した。
確かに似合っていた。もあがメイクをしたそうだが、「腹立つ!!なんであたしより似合ってんだよ!!」と朝から大声を出していた。可愛らしい顔つき、細身で身長の高い彼は学生スカートでも割とにあっていた。
「でも、飛夜理も……………って、こいつは完全にウケを狙ってたか。」
へ?と呼ばれた飛夜理は振り返った。
巫女服にフリルをつけたようなメイド服を文句を言いながらも一日着た飛夜理も偉いものである。
「おい、早う出てこんかばぁか。」
口の悪い瑠衣が外から叫ぶ。そうだ、今は教室を片付けていた。と思い出すとカラカラとドアをあけた。
「わりぃ、わりぃ」
飛夜理はへこへこと頭を下げて中へと促した。
「珍しー。舞菜が頭くくるなんて」
「えへへ~。」
麗華と舞菜の会話が聞こえてきた。照れくさそうに舞菜が笑う姿は久しぶりに見た気がした。
「ま、舞菜さん、お似合いですね。」
「そう?ありがとー♪」
優のセリフに舞菜は純粋に喜んでいた。それから、優はそーっと飛夜理の方に寄ってきた。
「ひ、飛夜理さん……………ぼ、僕、やばそうです……………。」
「へ?」
「ううう、舞菜さん、可愛過ぎますよおお」
「そこかよ!!」
全く、と飛夜理は軽くため息をついた。優がこんなふうに言っているのは珍しかった。
まぁこんな日があってもいいか、と飛夜理は呟いた。
外には赤くなりかけの紅葉が見え、秋の訪れはもうすぐかと言った風景だった。
そういえば、もうすぐ秋祭りだ。と思い出した。
「…………飛夜理、いくぞ。」
いつの間にか隣にいた愛歌が飛夜理を呼んだ。
彼はよたよたと愛歌の後を追った。
「弱々しい歩き方ね………ふふ」
なんとなく、愛歌が微笑む姿を、飛夜理は初めて見た気がした。
教室にはいつになく、にこにこと楽しそうなみんなの姿が見れた。もうすぐやってくるその時にも、こんな風だったらな。飛夜理も愛歌も、教室にいた皆はそう思った。
「ほれ。稀姐がやってるカフェから差し入れだぞ。」
「正確に言えばもあが稀先輩のカフェで買ってきただな」
「なっ!!」
もあと真吾がケーキの箱を持ってきた。いつの間にという反応にもあは顔を赤くして「いつでもいいだろ!ほら、お疲れ様!」と言って、荒々しく箱を置いた。
「もあ先生イケメンす!!」
と、瑠衣と麗華は言ったが、またさらにもあは顔を赤くした。
「あー!!!!食わねぇなら理事長んとこ持ってくぞー!!!」
冗談ですよーと麗華が話した。
確かにある意味イケメンな性格ではある。と、瑠亜は呟いた。
「じゃ、愛歌切って」
もあが言うと、はーいと言って、いつもの手持ちが紫の刀を出した。
「待て待て待て!!愛歌!!刀でケーキ切る奴がいるか!?」
真吾のツッコミにも動じず、愛歌は、
「えっ、これで人は刺さないから大丈夫…………。」
「そういう問題じゃないよ!!」
キョトンとして言った姿に瑠衣はまた突っ込む。
「それじゃあ、小型の殺人用の薙刀は如何ですか?」
「優、それを満面の笑みでいうな!!」
瑠亜はぎょっと優の薙刀を見て目を丸くした。
「全然小型じゃねぇ!!って、そこじゃない!!」
そんな会話がここの日常会話でしたね、と通りかかったふぶきは呟く。そして、教室をちらりと覗いて、正門の方へと向かった。
「よかった。罪人さんが楽しそうでよかったです。」
そう一言呟いて。




