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■ Ep.99 第57.7話:幕間【黒の離宮】~蛇の王の目覚め~

【第57.7話(Ep.99):まえがき】

いつもお読みいただきありがとうございます!


前回(Ep.98)は、天上界の精霊王たちが「空腹」という名の禁断症状に突き動かされ、修学旅行をグルメツアーに改変しようと画策する様子が描かれました。しかし、コタロウを狙っているのは食いしん坊な神々だけではありません。


今回の第57.7話は、王国の最深部、地図にない洋館**「黒の離宮」**からお送りします。

姿を現したのは、影の宰相ヴァルド公爵と、謎の組織「蛇の知恵オピュクス」。


彼らが狙うのは、古代要塞アトランティアの再起動。そしてそのために、アヤネを「燃料(贄)」、コタロウを「制御ユニット(器)」として使い潰そうとする残酷な計画が明かされます。

これまでのコメディ気味な空気から一転、修学旅行が**「血塗られた戴冠式」**へと変貌していく、ゾクッとするような闇の胎動をお楽しみください!

【Ep.99 第57.7話:本文】


1. 地図にない洋館


王都の北、人里離れた鬱蒼たる森の奥深く。

そこには、王国の地図には記されていない、古びた洋館がひっそりと佇んでいた。

通称、「黒の離宮」。

表向きは王族の静養地とされているが、その実態は、この国の「影」と「諜報」を一手に掌握する影の宰相――ヴァルド・フォン・ルミナス公爵の根城である。


深夜の執務室。

重厚なカーテンが閉ざされた部屋で、ヴァルドは揺らめく暖炉の炎を見つめながら、琥珀色の酒が入ったグラスを傾けていた。


「……兄上(国王)も、私の兄(当主)も、揃いも揃って平和ボケしおって」


彼は吐き捨てるように呟いた。

第19.5話で語られた通り、彼は無能な国王と、お人好しな兄(クラウディアの父)を軽蔑しており、自らが王国の実権を握る野望を抱いている。


「学園祭……くだらん。豚どもが餌を食んで踊っているに過ぎん。 だが、その宴も終わりだ」


---


2. 蛇の使者


「――失礼いたします、閣下」


音もなく、執務室の闇の中から一人の男が現れた。

全身を包帯で巻き、黒いローブを深々と被った男。

その手首には、己の尾を噛む蛇――ウロボロスに似た、不気味な刺青が刻まれている。

謎の組織**『蛇の知恵オピュクス』**の幹部だ。


「手筈は整ったか?」 ヴァルドが冷ややかに問う。


「ククク……万全です。 修学旅行の目的地、『浮遊島アトランティア』。 あそこは単なる古代遺跡ではありません。かつて神々に挑んだ人間が作り上げた、**『対・精霊用戦略要塞』**の成れの果て」


男はしわがれた声で嗤う。


「島の制御システム(中枢)には、すでに我々の『ウイルス』を仕込みました。 学園の飛行船が到着し、結界が解かれた瞬間……島は目覚め、我々の意のままに動く『空飛ぶ処刑台』となります」


---


3. 二つの鍵:器と贄


男は懐から、二枚の写真をテーブルの上に並べた。

一枚は、太陽のような笑顔を浮かべる篠宮アヤネ。

もう一枚は、死んだ魚のような目で遠くを見つめる神木コタロウ。


「要塞の再起動には、莫大なエネルギーと、それを制御する『核』が必要です」


男はアヤネの写真を指差した。


「まずは、『光の聖女』。 彼女の規格外の聖属性魔力は、数千年間停止していた魔導炉を強制点火させるための、最高の燃料(贄)となるでしょう」


次に、コタロウの写真を指差す。


「そして、『影の王』。 神木コタロウ。彼の持つ『虚無』の性質と、精霊王すら干渉できない特異な魂……。 彼こそが、暴走するエネルギーを器の中に押し留め、要塞のシステムを掌握するための、唯一無二の**『生体制御ユニット(器)』**となります」


ヴァルドは写真のコタロウを見下ろし、口元を歪めた。


「フン。やはりな。 ただのFランクではないと睨んでいたが……まさか、古代兵器のパーツとして最適解だとはな。 いいだろう。使い潰せ」


かつてヴァルドは、コタロウを「自身の配下(飼い犬)」にしようと画策していた。

だが、今の彼は、コタロウを「生きた部品」として消費することに躊躇いはない。

覇道のためなら、クラウディアの想い人だろうが関係ないのだ。


---


4. 絶望の戴冠式へ


「光を贄とし、影を器とする。 さすれば、天空の要塞は蘇り、その砲口は王都を見下ろすでしょう」


「その時こそ、革命の烽火のろしだ」


ヴァルドはグラスの酒を一気に飲み干した。

氷がカラン、と音を立てる。それはまるで、平和な日々の終わりの鐘の音のように響いた。


「愚かな兄(国王)も、貴族たちも、空から降る絶望にひれ伏すがいい。 私が、この腐った国を『恐怖』と『力』で統治してやる」


「御意に。……では、現地で」


包帯の男は深々と一礼し、影の中に溶けるように消え去った。


残されたヴァルドは、窓の隙間から見える月を見上げた。

その月は、不吉なほどに赤く染まっていた。


「行け、若人たちよ。 修学旅行を……血塗られた**『戴冠式』**に変えてやろう」


(第57.7話 完)

【第57.7話(Ep.99):あとがき】

お読みいただきありがとうございました!

……ヴァルド公爵、姪のクラウディア様の想い人であるコタロウを「生きた部品」呼ばわりするとは、なかなかの悪役ヴィランっぷりですね。


今回のハイライトを振り返ると:


影の宰相ヴァルド: 第19.5話でも触れられた「野望」がいよいよ本格化。平和な国を恐怖で統治しようとする、ガチな独裁者ムーブです。


アトランティアの正体: 単なる遺跡ではなく「対・精霊用戦略要塞」。精霊王たちが食べ放題を楽しもうとしている場所が、実は自分たちを撃ち落とすための巨大な罠だという皮肉な構造になっています。


器としてのコタロウ: 魔力のない「虚無」の魂だからこそ、巨大なシステムを掌握できる。コタロウがサボるために磨いてきた「力のいなし方」が、皮肉にも最凶の兵器のパーツとして評価されてしまいました。


天上界では「ビュッフェ」の準備が進み、地上では「革命」の毒が仕込まれる。

そして、その板挟みになるコタロウ。……修学旅行、本当に行かせて大丈夫なんでしょうか?


【次回予告】

第57.8話(Ep.100)幕間:『聖教会枢機卿にて:異端審問の決定』

ついにエピソード100到達!

しかし、お祝いムードを粉砕するように、聖教会の最高意思決定機関がコタロウを「魔王」と断定。

アリス様でも止められない、教会の闇の処刑部隊**「断罪者エクスキューショナー」**が放たれます。


次回、四面楚歌のコタロウに、絶対絶命の包囲網が完成します。


次回もよろしくお願いします!


【作者からのお願い】

物語を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークや、下の評価欄から**【★★★★★】**で応援いただけると嬉しいです。

皆様の応援が、ヴァルド公爵の執務室にある酒の熟成度と、コタロウが修学旅行に持っていく「身代わり人形」の数、そしてアヤネが犠牲にならないための「幸運値」に直結します!

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