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■Ep.98 第57.6話:幕間【精霊会議】~食糧危機と、王の気まぐれ~

【第57.6話(Ep.98):まえがき】

いつもお読みいただきありがとうございます!


前回(Ep.97)は、現実的な「金貨1600枚」の請求書と、闇精霊ネロ様による甘く危険な「指吸い報酬」が描かれました。コタロウが下界で借金とヤンデレに追われている間、実は天上界でも深刻なパンデミック……もとい、「コタロウの飯が食えない」という名の禁断症状が発生していました。


今回の第57.6話は、視点を一気に**【精霊界・第1階層】**へと移します。

マナ不足で肌がカサつく水の王、火力が落ちてショボくれる火の王、そして「コタロウが私より先にネロに餌付けした」ことにブチギレる光の女神。


神々のワガママが、コタロウの待ちに待った(?)「修学旅行」をどう変えてしまうのか。天上の取締役会による、不届き極まる**「グルメツアー介入計画」**の全貌をお楽しみください!

【Ep.98 第57.6話:本文】


1. 天上の禁断症状


世界の外側、因果の地平の彼方に存在する**【精霊界・第1階層】**。 普段なら虹色のオーロラが輝き、至福の音楽が流れるこの「神々のサロン」は今、この世の終わりかのような重苦しい空気に包まれていた。


円卓を囲むのは、世界のことわりを司る五柱の精霊王たち。 だが、彼らの様子がおかしい。


「……乾く。肌が、乾くわ」


水の精霊王ウンディーネが、目の下のクマを指先でなぞりながら呻く。彼女の自慢である瑞々しい肌はカサつき、背後の水流も勢いを失ってチョロチョロと流れている。


「火力が……上がらん。ここ数日、種火のような気分じゃ」


火の精霊王ヴォルカンが、小さくなった炎の髭をいじりながら溜息をつく。いつもの豪快さは見る影もない。


「ねえねえ、もう我慢できないよぉ。下界に降りて、あの子を拉致してこない? 監禁して、毎日マナだけ絞り取ろうよぉ」


風の精霊王シルフが、爪を噛みながら貧乏揺すりをしている。その瞳は完全に据わっている。禁断症状だ。


そして、議長席に座る光の精霊王セレスティアは、空になったティーカップを恨めしげに睨みつけていた。


「……味がしない」


カチャン、とカップを置く音が虚しく響く。


「通常の高純度マナ結晶すら、今の私には『砂利』を噛んでいるようにしか感じられないわ。 ……ああ、忘れられない。あの時の『カオス・ソルベ』の味が……脳が痺れるようなあの感覚が……」


彼女の脳裏に蘇るのは、第51.5話でコタロウが作った、光と闇を強制融合させた禁断のデザート。 あの常識外れの濃厚な味を知ってしまった彼らにとって、既存の精霊界の食事マナは、もはや「味のしないガム」でしかなかった。


2. 供給停止の理由


「コタロウからの供給が、完全に止まっているわね」


土の精霊王ノームが、重々しく報告書を広げた。


「原因は明白じゃ。あやつ、地上の『学園祭』とかいうイベントで忙殺されておる。 屋上の修復、借金の返済、および……例の**『闇精霊ネロ』への優先的な餌付け**」


ピキッ。 セレスティアのこめかみに青筋が浮かぶ。


「……んですって?」


「報告によれば、コタロウは毎晩、ネロとかいう闇精霊に指を吸わせ、高純度のマナを与えているとのこと。 自身の保有マナが枯渇し、我々に回す余裕がないのじゃろう」


「ふざけないでちょうだいッ!!」


セレスティアがバン! と机を叩き、立ち上がった。 背後の六枚の翼が怒りで逆立ち、サロン全体が閃光に包まれる。


「私たちが『オリハルコン』や『ヒヒイロカネ』を投資したのは何のため!? 美味しいごマナを食べるためでしょう!? それなのに、あの子ったら……私という『正妻スポンサー』を差し置いて、あんな生意気なペットとよろしくやってるですって!? ……許せない。これは契約不履行よ! 浮気よ!」


神の怒りではない。ただの空腹と嫉妬による逆ギレである。


「落ち着いて、セレスティア。怒りでカロリー消費したら、もっとお腹が空くよ?」 シルフが諌めるが、セレスティアの瞳はギラギラと肉食獣のように輝いていた。


「いいえ。待つのは終わりよ。 コタロウが持ってこないなら……私たちが『現地』に行って、無理やり作らせればいいのよ。 最高のフルコースをね」


3. 浮遊島アトランティアの秘密


セレスティアが指を鳴らすと、円卓の中央に巨大な立体地図ホログラムが展開された。


映し出されたのは、雲海の上に浮かぶ巨大な島。 古代の遺跡が点在し、中央には天を衝くような巨塔がそびえ立つ、神秘の浮遊島だ。


「これを見なさい。次なる人間たちの行事……『修学旅行』の目的地。 浮遊島アトランティアよ」


「……懐かしいな。数千年前、人間たちが『神の真似事』をして滅んだ、古代魔法文明の遺跡か」(ノーム)


「そう。この島の地下には、かつて私たちが危険視して封印した**『古代マナ・プラント(魔力生産炉)』**が眠っているわ。 その出力は、現代の魔導炉の数万倍。 もし、この封印を解くことができれば……」


ゴクリ。 精霊王たちが一斉に喉を鳴らした。


「無限の……マナ・ビュッフェ?」 「食べ放題……飲み放題……!」


「ええ。 本来なら、封印の解除には複雑な手順と鍵が必要だけど……。 コタロウが持っている**【魔導ブラック・バトン】**。あれには『古代核エンシェント・コア』が組み込まれているわ」


セレスティアが悪魔的な笑みを浮かべる。


「あの子のバトンを『鍵』として炉に突き刺せば、システムを強制起動できる。 そうすれば、島全体が巨大な『調理器具』となり、極上のマナが噴き出すわ」


4. 全力介入指令


「決定よ」 セレスティアが高らかに宣言した。


「作戦名:『修学旅行グルメツアー介入計画』! 精霊界は、コタロウたちの修学旅行に全力で干渉します!」


彼女は次々と指示を飛ばし始めた。


「シルフ! 島周辺の気流を操作して、彼らの乗る飛行船を『遺跡の入り口』近くに不時着……じゃなくて、誘導しなさい!」 「ラジャー! 乱気流でシェイクしてあげる!」


「ノーム! 遺跡内部のダンジョン構造を書き換えて、コタロウが『最深部(厨房)』に行かざるを得ないようにルートを固定しなさい!」 「承知した。迷路を一本道にしてやろう」


「ウンディーネ! 現地の精霊たちに布告を! 『コタロウ一行を全力で歓迎し、もてなし、そして追い詰めて、バトンを使わざるを得ない状況を作れ』とね!」 「ふふ、分かりました。適度な『ピンチ』という名のスパイスですね」


「サラマンダー! 貴方は……とりあえず直火焼きの準備をしておいて!」 「応ッ! 焼くぞ!」


精霊王たちの欲望が一つになった。 彼らにとって、修学旅行は「学生の思い出作り」ではない。 コタロウという「シェフ」を遺跡という「厨房」に放り込み、最高の「フルコース」を作らせるための儀式なのだ。


「待っていなさい、コタロウ。 貴方の平穏な旅行なんて、私が許さない。 ……空の上で、たっぷりと『料理』してもらうから覚悟なさい?」


セレスティアは舌なめずりをし、アトランティアの地図にフォークを突き立てた。 こうして、コタロウたちの修学旅行は、出発前から「神々の欲望」によってハードモードが確定したのだった。


(第57.6話 完)

【第57.6話(Ep.98):あとがき】

お読みいただきありがとうございました!

……神様たちが完全に「ダメな美食家」の集まりになっていますね。世界のバランスを守る存在が、食欲と嫉妬で動くあたり、この世界の精霊王たちもなかなかに不届きです。


今回のハイライトを振り返ると:


精霊王たちの禁断症状: 既存のマナを「砂利」と吐き捨てるほど、コタロウの料理マナに調教されてしまった王たち。特にウンディーネ様の「美肌の危機」は切実です。


セレスティア様の浮気認定: 「私という正妻スポンサーを差し置いて!」と怒る姿は、もはや女神の威厳ゼロ。完全に浮気現場を押さえた妻のテンションでした。


アトランティアの再定義: 古代魔法文明の戦略要塞を「巨大な調理器具」と言い切る発想の飛躍。コタロウの安眠は、出発前から粉砕されることが確定しました。


さて、天上が「食い気」で盛り上がっている一方で、地上の闇ではまた別の「悪意」が目を覚ましています。


【次回予告】

第57.7話(Ep.99)幕間:『黒の離宮:蛇の王の目覚め』

影の公爵ヴァルドと、謎の組織「蛇の知恵オピュクス」。

彼らが浮遊島に仕掛けた「毒」と、コタロウに向けられた「生体制御ユニット(器)」としての残酷な計画。

修学旅行を血塗られた「戴冠式」に変えようとする、闇の策動が描かれます。


次回もよろしくお願いします!


【作者からのお願い】

物語を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークや、下の評価欄から**【★★★★★】**で応援いただけると嬉しいです。

皆様の評価が、セレスティア様が用意するデザート用フォークの鋭さと、コタロウが修学旅行に持っていく「胃薬」のストック数に直結します!

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