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■ Ep.122 第66.1話:幕間【精霊界ホールディングス定例役員会~アトランティア・ビュッフェ報告~】

【第66.1話(Ep.122):まえがき】

いつもお読みいただき、ありがとうございます!


前回、第66話(Ep.121)をもちまして、激闘のアトランティア編メインストーリーが完結いたしました。コタロウが泥のように眠り、少女たちが後始末に奔走する裏側で、この世界の「理」を管理するあちら側の方々も、かなり慌ただしいことになっていたようです。


今回は、第6章の特別幕間インターミッションその1。

舞台は人間界を遥か離れた、精霊たちの総本山。


世界を裏から経営する巨大組織「精霊界ホールディングス」の役員たちが、コタロウが提供した「アトランティア・ビュッフェ」の結果をどのように評価し、どのような経営判断を下したのか。

神々の不届き極まるビジネス・トークをお楽しみください!

【Ep.122 第66.1話:本文】

1. 虹色の摩天楼と、CEOの溜息

次元の彼方、虹色のオーロラが揺らめく空にそびえ立つクリスタル製の摩天楼――「精霊界ホールディングス(S.W.H.D)」本社ビル。その最上階にある、全面ガラス張りの大会議室では、世界の理を司る役員たちによる緊急定例会議が執り行われていた。


「……ふぅ。全く、どいつもこいつも勝手なことばかりしおって……」


上座に座る大精霊王・CEOエーテリウスが、地面まで届く長い白髭を揺らし、深い溜息をついた。彼の頭上の光輪(天使の輪)は、心労とストレスによってチカチカと不規則に点滅し、肩や腰に大量に貼られた「魔導湿布」からは微かにメントールの香りが漂っている。


「CEO、そんな湿気た顔をなさらないで? プレゼン資料が曇ってしまいますわ」


そう言って優雅に微笑んだのは、光の精霊王 兼 副社長(CSO)のセレスティア・“オーラ”・ルミナスだ。純白のシルク製ビジネススーツに身を包んだ彼女が動くたびに、天然のレンズフレアが会議室を白く染め上げる。


「今回は我が社の重要取引先(太客)であるコタロウ君が、アトランティアという巨大な『不良債権』を最高の『一皿』に仕立て直してくれたのです。ブランド戦略としては、これ以上ない成功事例ケーススタディですわよ?」


2. 営業本部長の接待報告と、PR担当のゴシップ

「全くだ! 今回の『アトランティア・ビュッフェ』は、気合と根性が詰まった最高のもてなしだったぜ!」


ガハハと豪快に笑ったのは、火の精霊王 兼 営業本部長のヴォルカン・イフリートだ。褐色の肌に燃えるような赤髪をオールバックにした彼は、高級イタリア製スーツの上着を脱ぎ捨て、ワイシャツの袖をまくり上げてネクタイを緩めている。


「魔王軍の連中との接待ゴルフも悪かねぇが、やっぱりコタロウの野郎が重力で圧砕したマナは格別だ! 最近の人間は熱意が足りねぇと思ってたが、アイツの事象改変(ペン回し)には、熱い『魂』を感じるぜ!」


「ちょーウケる。ヴォルカン、単に美味しいマナがタダで食べられて浮かれてるだけでしょ~?」


翡翠色のボブカットを揺らしながら、最新型の極薄スマホをいじっているのは、風の精霊王 兼 広報・人事部長のシルフ・“ゼフィア”・エリアルブリーズだ。


「精霊ネットワーク(SNS)でも、アトランティアの起動は超トレンド入り。でもコタロウ君が全部『休止サボり』モードで上書きしちゃったから、今は『奇跡の生還を遂げた英雄』として聖教会の司祭たちまでファンクラブに入会してるし。これ、コンプラ的にセーフなの~?」


「……前例のない事態ではあるが、結果として要塞の墜落は阻止された。法務・総務的には黙認せざるを得まい」


分厚い六法全書を机に置き、パツパツのスリーピース・スーツを整えたのは、土の精霊王 兼 総務・法務部長のノーム・“テラ”・グランドロックだ。


「しかし、あの小僧が供えたマナ菓子は……実に美味であった。法的な解釈を広げれば、あれは正当な『ロビー活動』の一環と見なせるな。うむ、今後も厚遇すべきだ」


3. 経理部長の遅参と、北方支部のV字回復

そこへ、会議室の自動扉が静かに開き、冷ややかな冷気が室内に流れ込んだ。


「遅れて失礼いたしました。……経理・財務部長、セレイン・“クリオス”・スティルウォーター、ただいま合流しました」


現れたのは、水色のロングヘアを夜会巻きにまとめた氷の美女、水の精霊王セレインだ。銀縁の眼鏡を光らせ、手にしたクリスタル・タブレットを冷徹に叩いている。


「あらセレイン、お疲れ様。貴女、せっかくの晩餐会ビュッフェに来られないなんて、一体何をしていたの?」


セレスティアの問いに、セレインは眼鏡のブリッジを指で押し上げ、室温を5度下げながら答えた。


「……北方第8エリア、海底神殿支部のV字回復対応です。あちらの黒字転換(前年比3000%アップ)による急激なマナ流入により、経理処理と貯蔵タンクの増設が限界に達しておりました。……コンサルタントKコタロウが残した『常夏リゾート化案』のROI(投資対効果)が良すぎて、逆に現場がパニックになっていたのです。アトランティアの現場立ち会いは、監査担当のウンディーネに任せておりました」


セレインは淡々とタブレットに表示された収支グラフを円卓に投影した。


「……結果を報告します。今回、彼がアトランティアのOSを書き換えた際、我が社の共通バックエンド・システムにも、測定不能なレベルの最適化パッチが適用されました。……要塞の戦略級エネルギーを全て『食事』に変換するという荒技は、会計学的に言えば『負債をすべて純利益に振り替える』ようなもの。……不届きなまでに、天才的な経営判断ですわ」


4. VIP対応と不憫なコンシェルジュ

「うむ……。もはや、アイツをただの『監視対象(Fランク)』として扱うのは不可能じゃな」


エーテリウスCEOが、点滅する光輪をハンカチで拭きながら宣言した。


「神木コタロウの評価ランクを、『最重要取引先(スーパーVIP)』へ格上げする。……今後、彼が『サボりたい』と言えば全力でその環境を整え、『カニが食べたい』と言えば最高級の素材をドロップさせるのじゃ。……よいな?」


「異議なし!」


ヴォルカンはゴルフスイングの構えで賛成し、シルフは「新キャラ登場~!」とSNSに投稿。ノームは静かにお茶を啜り、セレインはコスト計算を完了させて頷いた。


「……それから、駐在員のセフィラについてですが」


セレインが冷徹に付け加えた。


「……彼女を正式に『スーパーVIP専属コンシェルジュ』に任命しました。任務は『彼の無茶振りに全力で応えること』。……給料(マナ支給量)は1.5倍に設定しましたが、先ほど通信した際は、胃薬の瓶を抱えて絶叫しておりましたわ」


「あら、なんて光栄なことかしら! 最高級のブランド・パーソンの側にいられるなんて、彼女のキャリアにとってもダイヤモンド・グレードの煌めきですわね!」


セレスティアが天然のレンズフレアを最大出力で放ち、会議室は再び眩い光に包まれた。


5. 魔王たちの胎動と、女神の期待

「……さて。……デザートの時間は終わりじゃ」


エーテリウスが木槌を叩き、会議室の空気が一変した。

スクリーンには、世界の果てで蠢く、不穏な影たちが映し出される。


「今回、アトランティアが放った『根源のマナ』の薫りは、精霊界だけではなく奈落あちらの連中……魔王たちも刺激した。……彼らが、このスーパーVIPという『特大の餌』を放っておくはずがない」


「ヒャハ! 面白くなってきたじゃん! 魔王軍の公式アカウントも、コタロウ君の動画をチェックし始めてるよ!」


シルフが楽しげにスマホを振る。

セレスティアは窓の外を見つめ、自身の額にあるものと同じ紋章が、遥か遠方で輝いているのを感じた。


「……いいわ。……彼がサボり、逃げ回るたびに、この世界は美しく書き換えられていく。……次に彼が私の元へ運んでくる『一皿』が、魔王の首か、あるいは世界の変革か。……楽しみですわね、コタロウ?」


副社長の妖艶な微笑みと共に、虹色の摩天楼での会議は幕を閉じた。

人間界の日常が戻る裏側で、神々の、および魔王たちの、一人の少年を巡る「不届きな争奪戦」が、密やかに、そして苛烈に始まろうとしていた。


(第66.1話 完)

【第66.1話(Ep.122)幕間:精霊界ホールディングス定例役員会・あとがき】


お読みいただきありがとうございました!

アトランティアの危機を「不良債権の処理」と言い切り、戦略級エネルギーを「ビュッフェ」として完食する……。人間界の常識が一切通じない、精霊界ホールディングスのホワイト(?)な社内事情をお届けしました。


今回のハイライトを振り返ると:


・精霊界の役員報酬マナ

CEOエーテリウス以下、五大精霊王たちがそれぞれの専門分野で世界を経営しているメタ的な構造。彼らにとってコタロウは、もはや「美味しい食事を提供してくれる凄腕の外部コンサルタント」のような扱いになっています。


・スーパーVIPへの格上げ:

本人がどれほど目立たずサボりたいと願っても、精霊界が総力を挙げて彼を「特別待遇」し、全力で甘やかす(あるいは無茶振りする)方針を決定。これがコタロウの平穏を内側からじわじわと侵食していくことになります。


・不憫すぎるセフィラ先生:

専属コンシェルジュに勝手に任命。給料1.5倍の対価は、コタロウという名の「超大型案件」の直撃による胃の穿孔。彼女の平穏はアトランティアと共に海に沈んだようです。


精霊たちがデザートを堪能して満足げに会議を終えた一方で、その裏側――人間界の闇を象徴する場所では、全く逆の「絶望の会議」が始まろうとしています。


【次回予告】

第66.2話(Ep.123)幕間:『聖教会枢機卿にて』


壊滅した暗殺部隊。砕かれた断罪の短剣。

王都の地下聖堂に集まった枢機卿たちが、かつて「異端」と呼んだ少年に、新たなる恐怖の二つ名を冠する。

「奴は理を喰らう『聖域の破壊者サンクチュアリ・デストロイヤー』だ……」

教会の独善をペン回しで粉砕された者たちが、次なる「静かなる包囲網」を画策します。


次回、信仰を揺るがすサボり魔の影。ご期待ください!

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