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■ Ep.121 第66話:帰還、そして新たな日常へ

【Ep.121 第66話:まえがき】

いつもお読みいただき、ありがとうございます!


前回、第65.5話(Ep.120)では、コタロウが深い眠りについている間に、セフィラ先生とクラウディア様による「大人の後始末(弾劾裁判)」が完了しました。

敗北したヴァルド公爵の資産はすべて没収され、コタロウの平穏を守るための「サボり基金」へと姿を変えています。


今回の第66話(Ep.121)をもちまして、長らく続いた【第6章:修学旅行と古代遺跡編】が堂々の完結となります!


救助艦隊による王都への帰還。

世界を救った自覚ゼロのサボり魔を待っていたのは、安らかな眠りではなく、さらに「サボりにくくなった」過酷な日常でした。


激動の修学旅行、その結末をどうぞ見届けてください!


【Ep.121 第66話:本文】

1. 偽りの調書と、没落の影


天空要塞アトランティアが海面に着水してから、数日が経過した。

王都近海には王宮直属の魔導艦隊が展開し、事態の収束に当たっていた。


だが、公式な記録に「影の宰相による世界滅亡の危機」や「聖女の電池化」といった真実は、一文字も記されていなかった。


公式発表: 「浮遊島アトランティアの予期せぬ古代魔導回路の暴走による自然発災」。


ヴァルド公爵の処遇: 「未開拓領域の調査中に未知の魔導病に罹患。責任を痛感し、全役職を辞任のうえ、北方離宮にて長期療養」。


断罪者の末路: 「古代防衛システムの誤作動に巻き込まれたことによる、名誉ある殉職」。


「……実に見事な『カンニング(情報修正)』ですね、セフィラ先生」


救助された学生たちが待機する大型客船のデッキで、リリス・フレアガードがひび割れた眼鏡を直しながら、隣に立つ教師を仰ぎ見た。

セフィラは新しい胃薬の瓶を空けながら、水平線を眺めていた。


「真実など、この国には重すぎます。……それに、あの不届きな生徒コタロウが『目立つのはサボりの邪魔だ』と、寝言で言っていましたからね。……代償として、ルミナス公爵家の資産はすべて学園の復興支援金として『寄付』していただきましたが」


セフィラの視線の先では、クラウディアが王宮の役人たちを相手に、堂々たる態度で交渉を続けていた。

叔父を弾劾し、その資産を「サボり基金」へと付け替えた彼女は今、ローゼンバーグ家の全権とルミナスの利権を掌握し、文字通り王国の経済の首根っこを掴もうとしていた。


「……彼を自由にするために、彼女は世界を支配するつもりかしらね。……非論理的だけれど、ローゼンバーグらしいわ」


2. 夕日のデッキ、交差する想い


帰還の途につく船の甲板。

黄金色から茜色へと移り変わる夕日が、海面をキラキラと輝かせている。


俺、神木コタロウは、ようやく体力が回復し、手摺りに寄りかかって海風を浴びていた。

結局、修学旅行らしい思い出と言えば、激マズのドリンクを飲んだことと、要塞を海に叩きつけたことくらいだ。


「……あ、コタロウくん! 見つけました!」


後ろから、懐かしい日だまりのような声。

振り返ると、少しだけ顔色の戻ったアヤネが、白いワンピースの裾をなびかせて駆けてくる。


「アヤネ。……体、もう大丈夫なのか?」


「はい! セフィラ先生にたっぷりマナを補充してもらいましたから! それに……」


アヤネは俺の目の前で足を止め、少しだけ恥ずかしそうに俯いた。

そして、ためらうことなく、俺の腕にギュッとしがみついてきた。


「……コタロウくんが、助けてくれたこと。……私、覚えてます。真っ暗な中で、コタロウくんの声が聞こえて……。凄く、温かかったんです」


「……たまたまだよ。俺のペンが、偶然システムに繋がっただけだ」


「もう、またそうやって誤魔化して! ……でも、ありがとうございます。……私、コタロウくんの聖女でいられて、良かったです」


アヤネは顔を上げ、花が咲いたような満面の笑顔を見せた。

その眩しさに目を細めていると、反対側から、凛とした、けれどどこか楽しげな声が響いた。


「あら、アヤネさん。……独り占めは感心しませんわね?」


クラウディアだった。

彼女は交渉を終えたのか、いつもの傲慢な、しかし俺にだけ向ける熱を孕んだ笑みを浮かべて歩み寄ってきた。


「コタロウ様。……今回の件で、わたくしは確信いたしました。貴方は、わたくしが跪き、そして支えるべき唯一の王。……叔父様を失ったわたくしを、貴方の力で『支配』してくださるのを、ずっと待っていますのよ?」


「……支配じゃなくて、パトロンとしての義務を果たしてくれれば十分なんだけどな」


「ふふ、次は負けませんわ。……アヤネさん、貴女との『コタロウ様争奪戦』も、ここからが本番ですわよ」


アヤネは「負けません!」と頬を膨らませ、クラウディアは不敵に笑う。

二人の美少女に両腕を抱えられ、夕日の下で晒し者にされる。

俺が夢見ていた「地味なFランクのサボりライフ」が、この瞬間に音を立てて崩壊していくのが分かった。


3. 女神のフルコース、その代償


「……あーあ。……結局、また目立っちまったな」


俺は二人から解放された一瞬の隙に、自分の額に手を当てた。

そこにある「五大精霊王の刻印」は、今回の要塞掌握を経て、以前よりも深く、禍々しいほどの輝きを帯びていた。


セレスティアの満足げな笑い声が、風に乗って聞こえてきた気がする。


『お疲れ様、コタロウ。……貴方が用意したフルコース、精霊界あちらでも大評判よ。……次は、どんな「ご馳走」を私に見せてくれるのかしら?』


「(……勘弁してくれよ、女神様。……俺はただ、昼寝がしたいだけなんだ)」


だが、俺の願いとは裏腹に、世界は動き始めていた。

俺がアトランティアで見せた「神の視点」。

あそこで視た、各地で脈動する古代遺物。

そして、世界の果てからこちらを凝視していた、魔王たちの気配。


俺の「カンニング」は、どうやら世界の禁忌を刺激しすぎてしまったらしい。


4. 新たな日常の開幕


船が王都の港に接岸する。

出迎えたのは、無数の記者と、「王立精霊学園の英雄たち」を讃える大衆の歓声だった。


「神木くん、握手してください!」

「アヤネ様! クラウディア様! ご無事で何よりです!」


熱狂の渦。

俺は顔を隠すようにフードを深く被ったが、隣にいる二人のヒロインが眩しすぎて、隠れることすら不可能だった。


『マスター。報告。……学園の掲示板にて、マスターの「ファンクラブ」の会員数が、今回の事件後、指数関数的に増加。……現在の会員数は、学園の全生徒数を超過しています』


「……全生徒数を超過? どういう計算だ?」


『近隣住民、および精霊教会の若手司祭たちも含まれているようです。……おめでとうございます。マスターの「サボりやすさ」は、現在 0.0001% まで低下しました』


「……死にたい」


俺は絶望的な数値を突きつけられ、遠い目をした。

修学旅行は終わった。

だが、俺の「平穏という名の戦場」は、ここから最悪の形で幕を開けたのだ。


古代要塞アトランティア。

それは、これから始まる世界の変革の、ほんの序曲に過ぎなかった。


(第66話 完)


【第66話(Ep.121):あとがき】

お読みいただきありがとうございました!

これにて、第6章【修学旅行と古代遺跡編】のメインストーリーは完結となります。


世界を救い、女神を満足させ、叔父を没落させて「サボり基金(旧ルミナス資産)」を確保したコタロウ。

しかし、その代償として手に入れたのは、「ファンクラブ会員数:全生徒数オーバー」というサボり魔にとっての終末的数値……サボりやすさ0.0001%への転落でした。


今回のハイライトを振り返ると:


・情報の修正と没落の裏側:

セフィラ先生とクラウディア様による完璧な後始末。ヴァルド公爵の資産がすべて「サボり基金」へ流れたことで、コタロウの経済的自由は確立されましたが、精神的自由はますます遠のいています。


・五大精霊王と魔王の視線:

五柱の神々を満足させたことで、コタロウは「世界で最も美味しいマナを出す存在」として認知されてしまいました。さらに世界の果てに座する魔王たちとのアイコンタクト。物語は学園モノの枠を超え、より壮大なステージへと向かいます。


さて、第6章の物語はここで終わりではありません。

ここからは数回にわたり、激動のアトランティア編を「別の視点」から俯瞰する特別な幕間インターミッションをお届けします。


まずは、あの「晩餐会」を堪能した神々が、あちら側の世界でどのような「会議」を行っていたのか。

世界を裏から支配する(?)巨大組織の裏側を覗いてみましょう。


【次回予告】

第66.1話(Ep.122)幕間:『精霊界ホールディングス定例役員会~アトランティア・ビュッフェ報告~』


次元の彼方にそびえ立つ、虹色の摩天楼。

そこに集うのは、胃痛に悩むCEO、高飛車な副社長、そしてスマホ片手の広報部長。

「……コタロウ君の評価を『最重要取引先(スーパーVIP)』へ格上げしますわ」

神々による、不届き極まる「経営戦略会議」の幕が上がります。


次回、精霊界のホワイトな(?)社内事情。ご期待ください!


【作者からのお願い】

物語を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークや、下の評価欄から【★★★★★】で応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


皆様の応援が、精霊界ホールディングスの「株価」と、次話でCEOが貼る「魔導湿布」の効き目、そしてコンシェルジュに任命されたセフィラ先生の「胃薬手当」の増額に直結します!


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