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もうひとつの鍵

止まった世界に、低い振動が広がった。

地面がかすかに揺れ、僕とアヤが立つ街路のアスファルトに、細かな亀裂が走っていく。


「……また揺れてる」

アヤが息をのむ。

鍵の共鳴が、まだ収まっていないのだ。


僕は手の中の鍵を握りしめた。

だが、ふと気づく。

振動の源は、僕の鍵だけじゃない。


「アヤ……今の感じたか?」

「ええ。私の鍵じゃない。もっと遠くから……」


その言葉を合図にしたかのように、街の向こうでまばゆい光が閃いた。

時間が止まった世界に、確かに“もうひとつの共鳴”が存在している。


「まさか……俺たち以外にも」

「鍵を持つ人間が……?」


言葉を失う僕らの前に、影がざわりと揺れた。

監視者たちが動きを止め、まるで“その存在”を待ち構えるかのように視線を向ける。


――カツ、カツ、カツ。


止まった街に足音が響く。

逆光の中、ゆっくりと歩いてくるシルエット。

背の高い影を引き連れて現れたのは、僕と同じ制服を着た少年だった。


「……お前は……」

見覚えのある顔だった。

クラスの隅で、ほとんど声を聞いたことのない存在。

名を思い出すのに、数秒かかった。


久遠くおん……?」


彼は淡々と僕を見つめ、手を掲げた。

その掌には――僕と同じ、しかし形の異なる古びた鍵が握られていた。


「……やっと見つけた」

声は低く、感情が読み取れない。

だが、その瞳の奥にははっきりとした敵意が宿っていた。


「この世界の主導権は、俺がもらう」


光が弾け、監視者たちが一斉に動き出す。

そして僕ら三人を、まるで試すように取り囲んだ。


「ハル!」

アヤが叫ぶ。

僕は頷き、鍵を構え直す。

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