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ぁ…っ、んっ…<point of view of Kuchinashi and Yusuke>

 目が覚めると、見慣れた天井が目に入った。

 病院の名残はもうその天井にはない。私はいつもとは少し違う、妙に覚醒している脳を働かせながら、ベッドの上で寝返りをうつ。

「…」

 私の心音だけが、窓のない静かな部屋に響く。

 それはいつもよりもずっと激しく、早い感覚で鳴っている。これはさっきまで見ていた夢の名残か。

 私は何故か鮮明に思い出せる夢の内容に顔が熱くなるのを感じて、気を紛らわそうと枕元の時計を見る。そしてその針が示している時刻を読み取った私は、軽く今の状況に絶望した。

 あと10分ほどで朝食の時間だ。我が家で働いている桜木さんが、そろそろ私を起こしに来てしまう。

 桜木さんは彼女が高校生の時から私のお世話をしてくれている使用人で、私の第二次性徴くらいから私専属の使用人をやっている。初潮等人に言いにくいことを色々相談したのも、母親ではなく彼女だった。というか、母親に彼女に相談するように言われていた。

 そんなこともあり、私と桜木さんはかなり仲がいい。そりゃもう学校のクラスメイトなんて比較にならないレベルで仲がいい。同じクラスに友達いないけど。私のクラスでの立ち位置はどうでもいいが、彼女に現在のこの状況を知られるのはよくない。おそらくからかわれてしまう。特に今日は木庭君がいる。同い年の男子にこんなこと知られたくはない。どうにかして取り繕わなくては。

 私はとにかく現状を確認するべく、上半身を起こす。

 そこでようやくあることに気付いた。

 いや、気付いたというか、本当は目が覚めたときから予想はしていたのだけれど、気付かないフリをしていたというか、そもそも桜木さんに知られることを憂慮していたのはこの事実というか…まぁとにかく確認しなければなるまい。

 寝巻きのワンピースの裾をおそるおそる捲りあげて、中を確認する。

 しかし、体が固くて問題の箇所はよく見えない。

 仕方ないので下着を脱いで、それを確認した。

 うん。下着に大きく染みが出来ている。生理はまだ2週間ほど先なのに、私の何がこの染みを作ったかについては考えないことにして、これからこれをどうするかを考えよう。

 未だにはっきりと思い出せる夢の内容を振り払って、下着を隠す場所を探す。この部屋は桜木さんが隅々まで掃除してしまうし、このまま着替えずにいると桜木さんが私の着替えを手伝い始めてしまう。…急いで着替えて持ち歩くか? いや、ばれたら何と言い訳をするつもりなのだ。大体、桜木さんに知られることを恐れて木庭君に知られたら本末転倒だ。

 木庭君に知られるリスクをなるだけ排除しながら、桜木さんに知られないようにするには…そもそもこの下着を洗濯籠まで運ぶのも桜木さんなのだから、乾かさないと根本的な解決にはならない。

 焦るばかりでまとまらない思考を一旦落ち着けようともう一度横になる。

 落ち着こう。この際桜木さんに知られるのは仕方ないような気がする。今更彼女に、私の興奮しているところを見られたから何だと言うのだ。いや、それは恥ずかしいのだけれど。

 だって、あんな夢見たら誰でも興奮くらいするだろう。ドキドキするだろう。昨日は昼にちょっと寂しい思いをして、夜も木庭君にあんなこと言われて、ずっと木庭君のことばかり考えていた。寝る前にも、木庭君がこの部屋にやってきて、寝ている私にデートレイプ紛いのことをする妄想をしたさ。でもそのくらい誰でもするに違いない。桜木さんだってするはずだ。

 その結果、さらに激しい内容の夢を見て、寝ている間にちょっと愛用の抱き枕とイチャイチャしちゃったけど。…私、寝言言ってないよね? 寝てる間にそういう声出てたら恥ずかしいなぁ。流石に大声で喘いだりしてないだろうし、ここもあんまり廊下までは音が響かないけど、万が一と言うこともある。何せ夢の中で私は大声を上げていた。凄く恥ずかしい内容の言葉を木庭君に言わされていたし、嬌声なんてずっと口から零れていた。今にして思えば、あのエッチに現実味はまったくないけど、下着がこんな風になるくらいにはドキドキした。

 …何か、夢の内容思い出したら、またドキドキしてきちゃったな。結局昨日の晩は数十m横の部屋で寝る鈴先輩や木庭君の存在が気になって、妄想するだけだったし、ちょっと欲求不満気味なのかも…。

 ちょっとだけなら大丈夫かな。だって、このままじゃきっと朝御飯なんて食べられないし、何より体がスッキリしたいと言っている。諸々一晩中中途半端に興奮しっぱなしだったのだ。今日、再び1人になれるのは多分今夜。それまでお預けなんて耐えられそうもない。

 この時の私は、端的に言えば寝ぼけていた。興奮しているから眠くはなかったけど、とても冷静ではなかった。桜木さんのことも時間のこともすっかり忘れて、夢の続きを夢想する。

 私は夏用の薄い布団を被り直すと、抱き枕を抱き寄せて左足を乗せる。…これなら見られても不自然じゃないよね? などと先輩や木庭君に見られた時のことをちょっと考えて、静かに寝巻きの裾捲る。そして右手をそっと濡れている秘所へとあてがった。

「っ…」

 静かに指を動かし始めると、お預けを食らっていた体は予想よりもずっと早く、そして強く歓声をあげた。私は一緒になって口から漏れそうになる声を必死に押し殺しながら、抱き枕とベッドの間に顔を入れる。

 声、出てもあんまり響かないようにしなきゃ…木庭君に聞かれちゃう…。そんな考えが頭を過ぎると、指の動きに合わせてピクリと体が小さく跳ねる。

「ぁ…っ、んっ…」

 私は普段はあまりこんなことしない。しても月に1回位。初めて1人でしたのは中学2年生の時。それまでは性的な興奮を覚えることはあっても、それはずっとそのままにしていても気にならなかったし、何よりそれがどんな風に気持ちがいいのか知らなかったから我慢できた。

 しかし興味本位で始めてみてから、最近ちょっとずつ頻度が増えている。はしたないことだと思いつつも、高校に入ってからはほぼ毎月のようにしている気がする。

 木庭君にされていると思いながら刺激を与え続けると、緊張が全身に伝わって、自然に体に力が入る。いつもなら思わず手を止めてしまうところだが、構わずに指を動かす。

「んぅっ…っはぁ…はぁ」

 全身が震えて、そして弛緩する。ただ心地よい開放感のみが体を支配していて、何も考えられない。どこを動かすのも億劫だ。

 しばらくその体勢のまま荒くなっていた呼吸を落ち着けてから、抱き枕の下から顔を出す。

 そして私は固まった。

「おはようございます。夢見お嬢様」

「…」

 視界に飛び込んできたのは、ニコニコしている眼鏡面。桜木さん。

「何やらベッドでモゾモゾしていましたね。それにいつもよりも顔が赤いご様子。あっ、ティッシュはこちらにご用意させていただきましたよ」

 意地の悪い笑顔で箱ティッシュを差し出しながら、そんなことを言う桜木さん。こ、この人は…。

 ホワイトアウトしていた思考の再起動に成功した私は、ティッシュを受け取ろうと右手を掛け布団から出して、慌てて引っ込める。私は顔を背けながら左手でティッシュを引っ張り出して、右手などを拭き始めた。

「…いつから見てたの?」

「2分ほど前です。私が部屋に入った時には既に顔を隠しながら結構激しめにモゾモゾしていらっしゃいました。声は頑張って抑えていらしたようですけれど、これからは臭いなども気にされた方がよろしいかと」

 あ、確かに…全然考えてなかった…。

「お嬢様の排卵日も近いですし、性的欲求が高まるのも仕方ないかと。思い人と同衾する夢でも見ていらしたのですか?」

「桜木さんに関係ないでしょ…」

 テキパキと私の着る物の準備を始める桜木さん。私はかなり広範囲に影響を及ぼしていた液体をふき取って、寝巻きを脱ぐ。体は色々アレになってるままだけど、しているところをじっくり観察された後となってはもうどうでもいい。私のはしたない体を見てあざ笑うがいいさ。

 彼女は私の着替えを手伝いながら、笑みを崩さない。そんなに私の1人エッチ鑑賞会は楽しかったか。

「ふふっ…最近は排卵日前後に必ずしていらっしゃいますね。恥ずかしいことではありませんけれど、朝食に遅れるなどあっては旦那様に心配されてしまいますよ?」

 あっ、月一ってそういうことか!

 私はちょっとした謎が解けてちょっと安心する。体が交尾したがっているわけか。月に一度の発情期ね。変なことじゃなかったんだ…。

 ちょっと安心したところで、ずっと気になっていたことを聞いてみる。

「…桜木さんも、その…1人でこういうことする…?」

「そうですねぇ…バレないように気をつけてはいますけれど、相手がいない時はお嬢様より頻繁にしますね。小学校高学年くらいの時はそれこそ毎日のようにしていたような気がします。実の兄の自慰を偶然見て以来、頻度が少なくなった記憶があります」

 そう…なんだ…。

 着替えを終えた私は、少し胸が軽くなったような感覚を覚えながら、お風呂場へと向かう。下着は恥ずかしいけど桜木さんに渡してしまおう。もちろんこれ以上の人間にバレないように口止めと工作をお願いして。




 ****




 昨夜、親友が同級生の女子と外泊をした。

 そのことを考えると、下半身が強張る。

 今まで万次のことを考えて勃起したことなどなかった僕が、今この瞬間梔子さんと万次が肌を重ねているかも知れないと思うと、興奮して仕方ないのだ。どういうことだ。僕は本格的に万次に恋でもし始めたのか? それとも相手は梔子さんか?

 いや、2人がセックスしているかも知れないと思うのは不快ではない。むしろなんだか嬉しいのだ。そしてそれを想像すると、興奮する。

 おかしい。梔子さんと部長がセックスしているのを考えて抜いた経験なら軽く数十回はあるが、万次が誰かとセックスしているの考えて勃起したことなど一度もなかったのに。どういうことだろう。

 今2人に電話をしたら、梔子さんの悩ましい声が電話越しに聞こえてきて、万次が僕と何気ない会話をして…鍵がかかった自分の部屋で、僕は妄想の中の2人と、ティッシュを汚していた。

 今日2度目の射精を終えて、ぐったりとベッドに横たわる。

 あー…2人とも何しているんだろう。3泊4日って言ってたな。…僕も行きたかった。行って2人のセックスを盗み見しながら自分のチンコを擦るんだ。多分、めちゃくちゃ興奮する。

 まぁ経験から考えれば、今何も起きてない可能性の方が圧倒的に高いんだけどね。ご両親もいるみたいだし、梔子さんガード固そうだし、佐伯先輩も一緒だし、万次は出発前相変わらず小心者だったし。

「はぁ…」

 見慣れた天井に親友の顔を思い浮かべる。

 明日は部活に行っても万次いないんだよなぁ。何気に高校に入って初めての経験だ。万次が部活を休む時は僕も一緒に休んだし、それじゃなくても万次の部活への出席率は高い。多分美少女揃いのあの部活を気に入っているのだろう。誘った甲斐があってよかった。

 別荘では梔子さんと仲良くやってるかなぁ。でも万次って、別に梔子さんが特別好きってわけでもないんだよね。可愛いとは思ってるみたいだし、放っておけないとも考えてるみたいだけど、それは万次のよくある『好き』であって、特別な『好き』ではない。その辺を理解していないと、万次は結構勘違いされやすいんだ。まぁ、女の人でそれが分かってるのなんて万里さんくらいのものだけど。

「あー…暇だなぁ…」

 このまま寝ちゃおうかな。下半身丸出しだけど、気温から考えると多分風邪はひかなそう。イッたからいい感じに体は疲れているし、このままぐだぐだしていると明日外出するのが億劫になってしまいそうだ。

 …そういえば、明日は誰が部活に来るのだろうか。部長は昨日から旅行に行ってるし、神代先輩もそろそろ実家に帰省するんじゃなかったかな。

 そうなると、武彦先輩と小牧先輩と僕で3人か。うわ、そんな人数で何するんだろう。行かなくてもいいかな。でも、武彦先輩と小牧先輩を2人きりにするのって危なくないのかな。武彦先輩あれで結構性欲強めだからなぁ。間違いが起きないとも限らない。…行くか。

 3人といえば、部長と梔子さん、万次で結構外出しているらしい。あの3人少し前から仲がいいのだ。この前も3人で食事をしてる時に、部長と梔子さんがお手洗いに行って、個室に2人で入って服を…あ、これ違う。僕の妄想だった。

『あっ…部長、ダメです…木庭君が待ってるのに…』

『木庭のことなんて忘れさせてやるよ…』

 なーんて妄想をしてたね、僕。

 万次で抜いたばっかりだから全然下半身は反応しないけど。…そういや、僕っていつから梔子さんが万次のこと好きって知ってるんだっけ。ホモ事件の時から?

 いや、もうちょっと前から怪しいとは思ってたような。まぁ、万次が妙にモテるのはいつものことだ。中学の時から3枚目キャラで通ってるけど、顔はイケメンだし。僕もあの顔になら抱かれてもいいと思う。別にホモじゃないけど。

 ただ問題は、本気になった相手には何故か好かれないことと、好かれても何故か関係が進展しないこと。このせいで本人はモテモテにも関わらず、モテるという実感を抱いていない。

 僕から言わせれば梔子さんや部長、小牧先輩みたいな美少女に好かれてうらやましい限りだ。僕なんて不細工…いや、前衛的芸術作品みたいな顔の霊長類からしか告白されたことないのに。あれならマントヒヒの方が美人だよ。

 ま、本人が気付かない限り、この関係も進展しないんだろうなぁ。唯一佐伯先輩だけ、万次のこと好きなのか苦手なのかよく分からないけど、それでも別に積極的に嫌ってはいないし。

「あーあ。うらやましい。寝よ寝よ」

 僕は緩む頬をあくびで誤魔化しながら、部屋の明かりを消してベッドに再び横になるのだった。

 …あ、結局ズボンはいてないや。

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