52 醜心
あちらこちらで助けを求める声がする。
あちらこちらで「たすけて」という声がきこえる。
そのたびにオートバイクを走らせる。
声のする方にオートバイクを向かわせる。
人を救う。
人を助ける。
そのたびに、身体に傷が増えていく。
黒い傷跡が増えていく。
心が死のうとしている。心はすでに死んでいる。
一度死んだ命を、一度救われた命を、どう使おうというのか。
どう使おうというのか? わからない。
自分でももうわからないのは、おそらくもうすでに彼が何も考えていないからだろう。
それでいいのか?
そんなことはもうどうでもいい。
もうどうでもいい。何もかもがどうでもいい。
人間としての正しさだとか、そういうものはどうだっていい。
与えられた力には黒い運命が伴うものである。
大抵は、それを理解した頃にはもう手遅れで、毎日毎日、身体が動こうとするままに身体に自由を許すだけの意思人形。
過去に逃げようとしても、自分には歴史がない。
ただ普通の人間として生きた。
誰にも愛されなかった。
友達はいなかった。恋人もいなかった。
大滝夫妻にも、ほんとうは嫌われていたんじゃないかとする思う。
楽しかった記憶なんてない。
大滝夫妻が死んだときはまだ自分だって若かった。
まだまだ親に甘えていたかった年頃なのに、いきなり保護者になって、日常のほとんどが消えた。
もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。もうなにもかんがえるな。




