41 好機
「もう大丈夫だ」
「すごい殴ってたね」
「あのくらいしなきゃ反省はできない」
「怪異ってなぁに?」
「知らん。妖怪とかだろ」
「それと融合して、変身できるようになって……なんだよね。それってもしかして、普通の人間でもできる?」
「知らん」
頭の中で「異態家のみ」という声が聞こえた。
「異態家のみらしいな」
「そうなんだ。でも良かったなあ、元気な姿見れて」
「元気に見えるか」
「元気でしょ。前みたいに無理して笑ってない」
「…………」
「とりあえず、君のこととかは秘密にしておくね」
「いい飯のタネだろ」
「イザタキくんが困るでしょ、記事なんかにしたら。多分心当たりある人ってたくさんいるんだろうし、話題の人になっちゃうよ」
「……それもそうだ。ありがたいな」
「助けてもらった恩だもの」
「いらん」
「え? いらない?」
「いらない。恩返しいらん。俺は普段からこのようなことをしている。であれば、家に帰る暇もない。ならば家には帰らないほうがいい。そもそも、俺なんかに帰る場所はいらないはずだ」
「じゃあずっとひとりってこと?」
「そうなる」
「さみしくない?」
「独りには慣れてる」
「果たして本当にそうかな?」
「何の含みを持たせてるんだ。俺の事は俺が一番よく分かってる。俺は平気だ。なんともない。心配するな」
「心配しちゃうな〜。うちにご飯食べに来る?」
「断る。恩を売るつもりはない」
「恩を返すつもりがあるんだよね。おいでよ〜ね〜ほら〜」
「断る。叩くな。叩くな尻を。揉むな尻を」
とりあえずこの秘密基地とやらは記事にできるのか、と訊ねてみる。
「できそうにないなあ。あんまりにもハッキリとすべてが書かれすぎてて、逆に信憑性なんかひとつもないし。ほら、嘘でもちょっとだけ真実混ぜる派なんだよね。うちの雑誌は」
「ならめっちゃ嘘を混ぜればいいじゃないか。富士山のめっちゃ地下深くに、百年以上前の拠点が発見された、調べてみたら大量の改造人間が襲ってきてマジで怖かったけど二十人の忍者に助けられて事なきを得た、これで行こう」
「いけるわけがなさすぎる」
「なぜ?」
「嘘が大はしゃぎしすぎている」
「嘘が大はしゃぎってなんだよ」
「さすがに読者から『今回はそういうお話か』って思われるよ」
「オカルト雑誌読んでる奴にはバレないよ」
「すっごい失礼。私の読者は賢い人たちばかりだよ!」
「そうかよ。じゃあ俺はもう去るな」
「え! 待って待って! ちょっと待って!」
「なんだよ」
「連絡先交換しようよ。ってかJINEやってる……!?」
「悪いが携帯は持ってないんだよ。代わりに会いたくなったらこっちから会いに行く。じゃあな」
「えーっ、待ってよー」
待たなかった。
オートバイクで山を降りる。
降りきったところで、携帯電話を取り出して、時刻を確認。
「時間食ったな。ハァ……」




