39 侵入
「私いま、オカルト雑誌の記者をやってるんだよね。幽霊が出た廃病院とか、お札だらけの廃屋とか、そういうところにも行ったなあ。けど、あんな大きな猿に襲われたのも、人が変身するのも初めて見た」
「そういう世界もある」
「大滝くん雰囲気かわったね。目どうしたの?」
「病気で色が変わった」
「その白い髪の毛は?」
「病気で色が変わった」
「大滝くん、なんかすごい根暗になったね」
「はっきり言うな」
「大滝くぅん」
「異態仙骨だ」
「イザタキくん」
「もうわからん」
「一緒に行かない? この、下」
「俺はライターではない」
「ライダーではあるけどねっ! ワーッハッハッハッ!!」
「お前そんなキャラじゃないだろ」
「旦那の影響かなぁ」
「旦那ヤバい奴なんじゃないか?」
「ヤバい人だよ〜」
じゃあ行こうね、と言われて無理矢理地下に連れて行かれる。
階段を降り、木の板で囲まれた廊下を歩いていると、一つの鉄扉を見た。その鉄扉の横には「路児」と書かれた木製の板が落ちている。
「あれっ。あかないや」
彼は鉄扉を蹴り飛ばした。
「開いたな」
「歴史的価値のあるだったらどうすんの」
「こんなものに価値なんかあってたまるか」
二人はさらに奥に進んだ。
そこには色々な研究器具がのこっていた。
大日本帝国陸軍といえば、昭和二十年ごろまで存在していたらしいが、その時代にこのようなものはあったのだろうか、と不思議に思う。
「見て、研究日誌的なやつあるよ。先に読んでいいよ」
「怖いのか」
「レディを守ってこそのでしょ」
「怖いんだな。オカルトライターなんてやめてしまえ」
その研究日誌的なやつを開いてみる。
現代的に意訳し、要約する。
・上層部に無敵の兵士を作れと言われた
・マジで困ってしまった
・無敵の兵士なんて作れるわけねぇじゃん
・バカじゃねぇの?
・一昨年の敗戦にマジギレかな?
・GHQが泣いてるぞ
・じゃあもうなんかパパッとつくってそれっぽくするか
・なんか岩手とか良さそうじゃない?鬼とかいるし
・じゃあ鬼でなんか作ってみようかな
・鬼ってなんだよ、バカか?
・上層に「じゃあ改造人間作ってみたら? 得意じゃん」と言われた
・こんな地下の大した器具もないところで改造人間とか無理だろ
・路児という改造人間ができた
・やればできるもんだなあ
・路児には死んだ赤子の遺体を使ったので赤子だが、これをもとにして成人男性を改造できるようにする、くらいはできるかもね
・路児が成長を始めた
・路児に「我が名は陸天である」と言われた
・話を聞けば、陸天は天獄という小僧に負けてしまって、この国を侵略することができなかったが、どうも今はその小僧もスタンスを変えているらしいので、再び復活した、とのこと
・陸天に「なんで俺改造されてんの?」と言われたので困った
・愛と平和ってだいじだなあ
「は?」
「どういうこと? 改造人間?」
琴音が彼を見る。
「俺は違う。俺は怪異との融合だ」
「怪異との融合? 聞きたい!」
「面倒くさいな……俺は一度死んだ。そこで、俺の中にもともといた邪視という怪異が俺の命になった。この目の色も髪の色もその影響と言っても過言ではない」
彼は手を蛙の形にして、言う。彼の頭の中で邪視が「何か近づいて来ている」と言った。
「話は終わりだ。お前はここにいろ」
「なんで?」
「戦いになる」
地上から、廊下の奥から何かが近づいてくる。
仙骨変身態は変身途中。
部屋を出ると、二本の刀を掴み上げ、左右から高速で攻めてくる大蛇を真っ二つにして焼き切り尽くした。
「俺は、洋楽を意味のわからない使い方をする日本の広告と、自宅への不法侵入が嫌いだ」
「そうか。奇遇だな。俺もだ」
白髪を完全に覆い隠す黒い強化筋肉強化皮膚。赤い一つ目。
「奇遇じゃねぇよ、二本棒」
対するは、経緯を生み出す木札の男。




