37 変化
誰に聞いても、彼の友人だったような人間はいなかった。
誰に聞いても、大人は誰も彼を理解しようとしなかった。
それなのに、彼はそんなことを構ったものかと人助けばかりしている。自分が救われるわけでもないのに。
それが不思議でならなかった。
けれどその不思議はすぐに消える。
多少人より責任感が強くて、多少人より優しいだけ。だから、彼はずっと誰かのためにばかり生きてしまうのだ。
そういうことなのだ。
彼がなんのために生まれてきたのかわからなくなってしまった。自分のために生きようともできず、誰かの為に生きてしまう彼のことを考えてしまうと、胸が締め付けられるようだった。
意味がわからない。
知り合いだし、恩人だから、贔屓目に見てしまうが、それを抜きにしても、大滝守道という男はきっと世界でいちばんやさしい男だと思う。
彼の生き方を見ればそれを否定することができないことくらい、誰にでもわかるはずだ。
彼はそのくらいわかりやすく善人なのに、それがどうして「醜いから死んでくれ」だなんて言われなければならないのか。
步生にはわからなかった。
他の誰が敵になろうと、最後まで自分は彼のことを信じよう。
そう思うことにした。
会いたい。
逢いたい。
また声を聞きたい。あの白い肌を見たい。赤い右眼を見たい。白い髪を見たい。左目の下のホクロを見たい。またピースマークをしてほしい。笑う時の細くなる目を見たい。あの少し低い声を聞きたい。
逢いたい。逢いたい。逢いたい。逢いたい……。
肉体がその強い想いを理解。
おそらく、その身体には神性が宿っていた。
あまりにも、想いすぎてしまった。
步生の肉体が「願いが叶う可能性が一番高い状態」になっていく。
大滝守道には、ふたつの神が宿っていた。
ひとつは邪視。中途半端だし、神性もねじ曲がって正常な状態ではないが、邪視はたしかに神に近い存在である。もうひとつは縛絡。神性は奪われた状態にあるが、縛絡自体にのこった残りカスの神性でも人間の体質を変えることくらいは出来てしまえる。そのふたつが混ざり合った。邪視の持つ変身能力と縛絡の持つ変身能力が步生にも中途半端に作用してしまった。
肉体の変質。
その日の晩に、風呂場で気がつく。
「あれっ……? あれっ……あれっ!? ない!!」
あまりにも、自然に自分のものがなかったので。




