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ドロットマン  作者: 蟹谷梅児
EPISODE 12
36/65

36 日生

 土曜日になると、步生は大滝守道のことを調べ始めた。


 興信所に依頼できるほどの金を使うのはさすがに力みすぎなので、自分でいろいろと調べてみることにした。


 まずは彼が卒業した小中高を調べる。


 花巻市内の小学校を卒業して、花巻市内の中学校を卒業して、北上市内の高等学校を卒業していた。


 まずは高等学校の方に行ってみた。


 当時彼の担任だったという中田(なかた)直人(なおと)いわく、「人の輪の中からはずれたところでニコニコ笑っている男だった」という。


「とにかく、優しいんだよな。優しすぎて不気味に思われていた。あと、ずっと笑顔なものだから、言い方は悪いけれど、ちょっとアレな奴だと思われていたのもあると思うね。友達は一人もいなかったんじゃないかな。私の知る限り校内にはね、ひとりもね」


 つぎに、中学校のほうにも行った。


 当時彼の担任だったという横井(よこい)和子(かずこ)いわく、「責任感がひたすらにつよい子だった」という。


「自分に与えられた役割があると、それを完ぺきにこなしたがる子でね。もうちょっと手抜きしてもいいのにな〜ってところでも、『自分にできることを精一杯やるのがいいんです』って笑うの。優しいしよく笑うけど、変な子だったね」


 そして、小学校の方にも聞きに行った。


 当時の担任はすでに辞めてしまっていたが、彼を知っている教師が校長になっていたので、話を聞くことができた。


 その教師・井上(いのうえ)利明(としあき)いわく、「根暗な少年」だったという。


「とにかくいつも保健室にいてね、ずっとベッドの上で、耳を抑えて、まるまっていて、幻聴がひどくてろくに授業に出られないみたいで。ひどいときなんかはウガーッて癇癪を起こして、ご両親が迎えに来ることもあったね。でも、六年生の頃だったかなあ。下級生の……吉田(よしだ)ちゃんっていう子がね、誘拐されちゃったことがあるの。その時、吉田ちゃんはご両親の都合で学校休んでたんだけど、保健室の先生が『大滝くんがいきなり保健室飛び出して行っちゃって』って慌ててたの思い出すよ」


 彼は昔を懐かしむように言う。


「それから数時間後に、交番から学校に電話が来て、『おたくの児童がふたりボロボロの状態で見つかりました』って。びっくりしたね。あとで話を聞いてみると、あの子、『助けてって聞こえたから助けに行った』って。あのときはちょっと、こわかったかな」


 彼は申し訳なさそうに言った。


 步生は、次に彼の親を探ってみた。


 異態橈骨の話を鵜呑みにすると、彼の父親はそうとうなクズで、彼の母親は大滝守道を産んだ当時中学生。


 その母親を探してみる。


 割とすぐに見つかった。自分には探偵の才能があるのかもしれない、と思いながら、その少女のことを調べていた。


 日生(ひなせ)(あおい)。なんのへんてつもないごくごく普通の少女だった。素行が悪かったりということもなく、友人たちからの評判も良く、責任感が強く優しくていつも笑っているような少女だったという。


 事件のあと、赤子を産んで、自殺してしまったと言う。


「…………」


 もし、ちゃんとした手順で、何事もなく彼女の息子に生まれていたら……彼は日生守道だったら……と考えてみる。


 しかし、考えようもないもしもの話。


 彼は大滝守道で、異態仙骨なのだという。


 彼女の両親にも話を聞くことができた。「もし、彼女の子が今も生きているとしたら、どう思うか」と。不躾ながら訊ねた。彼の両親は口をそろえていった。


「醜いから死んでくれ」

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