32 独唱
六月二十八日・土曜日。
大滝家。
步生はふと思い立ち、守道の部屋に入った。
部屋にはベッドと、小さな机、それと本棚がある。
本棚にはいろいろな料理の本だとか、裁縫にまつわる本だったり、そういう物がぎっしりと詰まっていて、彼の趣味だとかはおそらく反映されたものではなかった。
机には引き出しがあり、それを下から開けてみると、一番下には高校時代の教科書だとか参考書だとかが入っている。
そのひとつ上の引き出しを開ける。
そこには、貰った手紙だとか封筒だとかが押し込んであった。
さらにその上を開ける。
そこにはノートパソコンがある。つけてみると、パスワードが書いたテープが貼り付けられてあったので、簡単にはいることができた。どうやら釣りだとかに興味があったらしく、「釣り 始め方」「東北 釣りスポット」「バイカー 釣り」だとかを検索してあった。画像フォルダには明子の思い出アルバムで、六割が明子だった。そして残りの四割は風景写真である。
一番上の引き出しには鍵がかかっていた。机の上においてあったので、開けることができた。そこには日記帳があった。大昔からいなくなる前日までの日記がつけてあった。
何も聴こえないようになりたい。
眠りたい。ねむい。眠いのに眠れない。
苦しい。頭が痛い。死にたい。助けてくれ。助けてほしい。
誰でもいいから、こんな声聞こえなくしてくれ。
苦しい。胸が痛い。つらい。死んでしまいたい。
痛い。人を殴りたくない。つらい。つらい。いたい。
苦しい。眠い。眠れない。頭が痛い。耳がいたい。
脳みそがつけられてるみたいだ。痛い。痛い。
もういやだ、もうなにもききたくない。
いやだ、たすけてほしい。たすけてほしい。
くるしいから、誰か助けに来てほしい。
病院に行っても解決しない。誰も俺を助けてくれない。
いたい、いたい、くるしい、くるしい。
もうかんべんしてほしい。
つらい。つらすぎる。こんなのはつらすぎる。
もういやだ、もういやだ、もういやだ、たすけてくれ、たすけてくれ。だれでもいいからもう本当にたすけてくれ。たのむから。
いたい。いたい。死にたい。死にたい。死にたい。
死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。
死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。
死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。
死にたい。死にたい。死にたい。
…………。
押し入れのなかには、今までの日記帳もあった。どうやら、十歳の頃から書いているものらしい。そのすべてに、「苦しい」「死にたい」「誰か助けて」という文言があった。
その日記帳を閉じて、押し入れに戻す。
それからすぐに、部屋を出た。
茶の間に入ると、つけっぱなしになっていたテレビにニュースが映っており、昨日降った雨で氾濫した川で溺れていた子供を救出する通りすがりの青年の映像。




