表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドロットマン  作者: 蟹谷梅児
EPISODE 10
31/65

31 遭遇

 六月二十日・金曜日。

 岩手県北上市某地区・猪地家。



 今日も雨が降った。数日ぶりの雨である。


 光輝は傘を取って、通学路に出ては「あー雨だなあ」と嫌そうに呟いた。それを見る者がいた。木札男である。木札男は水溜りに浮かんでいた蜘蛛の死骸を持ち上げると、怪異にしてみせた。恐るべき大蜘蛛である。蜘蛛は人の頭部が二つ繋がっており、その二つの頭部に腕が生えている様子だ。


「やれ」

「はい」


 木札男の作り出す怪異は知性を獲得していた。より高い知性へ、より高い知性へ、と移り変わるそれは、より人に近づいていく。


 光輝の前に大蜘蛛が現れた。思わず声をあげようとして、喉が詰まった。口に糸をかけられたのだ。


「んん! んん!!」


 糸が光輝の身体に巻き付いて、絡め取っていく。時代に持ち上がっていき、捕食者の目をした大蜘蛛を前にして、恐怖を感じた。


 助けてほしい、助けてほしい。


 ビカットマン。


 ──ヴゥン!


「待て!」


 オートバイクの鳴き声がまるで意思を持っているように鳴り響いた。大蜘蛛がそちらを見る。木札男は「きたか」とつぶやき、その場を離れた。


「猪地……光輝……! 君がなぜ、そいつに狙われてるかはわからない。きっと何らかの事情があるんだろう。それは知らん。俺は正義のヒーローじゃない」

「ならば、貴様は、何様だ……!!」


 大蜘蛛が喚いた。


「俺か。俺は大滝守道……いや違うな。異態仙骨。異態仙骨だ。身体に刻まれた罪は……俺が、異態に生まれた人間だということだ。俺の持つ力は邪視。裏返った光を使う。闇だ。影の力だ。俺の中にある邪視は光を欠如しているので影になっているんだ。悪の力だよ。悪だ。俺は悪人なんだ。だから、君の思うヒーローじゃない。お前の愛するその人はヒーローだろうが、俺はそうじゃない」

「そんなことない」


 光輝は口の糸のへばりついているのを掃き捨てて、小さく叫ぶように返した。


「証明してやる。だから見てみなさい。俺の……」


 守道は変身態になると、手を蛙の形に組んだ。大蜘蛛が飛ばした蜘蛛糸は現れる縛絡に弾き散らされる。


「業轍」


 大蜘蛛が踏みつけるように前足を動かす。


 仙骨変身態はその前足を斬り飛ばす。


 赤い血が周囲に飛び散るのを踏みつけて、仙骨変身態は、地面を蹴った。飛び上がると、光輝を掴んでいた腕を斬り散らかした。


「これがヒーローじゃなくて何なんですか」

「口を開くな」


 大蜘蛛は睨みつける。


 仙骨変身態は剣に熱を込め、突き刺す。


 自殺波動が大蜘蛛の身体の中で暴れ回り、そして大蜘蛛はドロッと溶けるように爆発してしまった。


 その爆発が晴れると、仙骨変身態は変身を解除して、オートバイクに戻っていく。


「待って……! 待って!」


 守道は待たなかった。

 オートバイクを走らせ、次の声に向かっていった。


 光輝はただその場に残されてしまった。あの目を思い出す。まるで感情なんかないようで、それでいて優しさの詰まったような、あの目。


「自分を肯定する方法を知らないんだ、あの人……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ