29 愆釁
守道は、ググ……と両の拳を握りしめる。
すると、胸部に骨と同成分の黒い液体が毛穴からあふれ出し、それが枠を形成し、筋肉や鉄分を凝縮した殻を形成。
そして、胸から赤く輝く石が飛び出し、ケラチンで構成されるカバーがその石を取り囲む。
黒くなる。
強化筋肉も、強化皮膚も、生体装甲も
赤い複眼状の単眼。
橈骨変身態は地面を蹴ると駆け抜けた。
そして、守道変身態に拳を叩きつける。守道変身態はその拳を掴んで後ろに向かって引きながら顔面を殴りつける。
橈骨変身態はグワッと身体を浮かばせて縁側の角に背をぶつけながら転がった。起き上がろうとするところ、頭を掴み上げ、また投げ飛ばした。
「その残虐性さ。自分に人を愛する資格がないのはもう理解したはずだ。人助けのつもりのあのアホな事をやめろ。二度とするな。貴様は悪人で、醜い化け物だ。生まれの不幸はつらいな、異態仙骨。貴様の父親は婦女暴行の常習犯で、貴様の弟と妹がたくさんいるらしい」
橈骨変身態が蹴りを放った。
それをガードしようとして蹴り飛ばされる。身体出力が下がっているのだ。防御力だったりが下がっている!
「そして、貴様の母親は、当時十四歳だった。おまえを産んだあと、自殺したよ。それを見て、貴様の父親はたくさん笑ったらしい。心が弱いので、玩具にしてもいいと判断したのだろうね」
起き上がろうとして、頭を掴まれ、何度も叩き付けられる。
「貴様は悪なんだよ。魂のレベルでね。だから、人を愛してはならないし、人に愛されてはならない。これからはひとりで頑張っていこうな」
赤い眼から、涙がボロボロと溢れ出ているのを見て、橈骨は笑った。そして満足したのか、オートバイクの方に向かっていく。
「ということなので、君たちもその男をあまり信用しないほうがいい。悪人の息子は悪人でね。悪の心も悪の力も、受け継がれるし、消えやしな」
橈骨は変身を解除すると、去っていった。
守道は頭を地面にこすりつけるようにして無理矢理起き上がり、立ち上がるとオートバイクに向かっていった。そして、やっぱり無理だったらしく、その場に蹲った。
自分の心のなかに嫌な感情がある事には気づいていた。
人を殴るたびに、心がざわざわする。締め付けられるような感覚があって、その吐き出し方が分からない。
次の瞬間、なんとかオートバイクに掴みかかって、明子や步生が何かを言うのを聞かずに飛び出していった。
頭の中では、助けを求める声が響いていた。




