修学旅行〜3日目ノ貮・秋の遊山
間違いなく、青春の1頁。秋の陽射しが、きっと、柔らかく、温かく、彼らを包む。
悩みは尽きなくても、笑いや歓声はもっと尽きなくて。
秋のテーマパークの時間は、間違いなく、きらきらとした、青春の1頁。
開園して、すぐに行っても、エヴァのアトラクションは人気で、まあまあ並んだ。
でも、期待を裏切らさない内容と迫力で、エヴァ好きの希良も、オレも、もちろん他のメンバーも、大満足だった。
なんだけど。
「ちょっと先に、設定とか?聞いておけば良かったかも。」
と、輝がいい出して、宮﨑や松尾たちも、
「後でいいから、ちょっと教えて!」
などと、希良とオレに頼んできたものだから。
「いいけどさ。」とオレ。
「簡単じゃないから。言っとくけど。時間、ある時にな。」
と、希良が言うと、
「ここにもいたのか、真正のヲタ。」
と、松尾が笑って、
「なんか、ガンダム、語る時の樺沢と同じだな。」
宮﨑が希良の肩を抱いて、面白そうに笑った。
それから、絶叫系が苦手な人に合わせて、巨大な3階建てのメリーゴーランドに全員でワイワイ、向かうことになった。
「えー、3階って、高くない?」
「でも、景色はいいらしいよー。夜景が綺麗なんだって。夜もう一度、乗りたくない?」
「てか、田宮くんたち、リアル白馬の王子様なんですけど〜。」
「ねね、みんなが乗って、動き出してから、でいいから!マスク取って、フードもう脱いで、写真、撮らせてね!」
「あ、じゃあ、我々、樺沢くんたちの前の方に乗らないと!」
「あ、馬車!馬車に乗って、撮影する?」
一度火が付いた女子たちの盛り上がりは、誰にも止められない。
多少の抵抗は試みたものの、最後は目黒さんと村田さんが、オレたち3人の手を引いて、並んだ馬に乗せようとしてきた。
「おーい、ほどほどにな〜。こんなんで目立ったら、そいつらの苦労、水の泡だぞ!」
石川がそれを見かねて、声をかけてくれた。
「あ、そうだよね。ごめんなさい。」
と、静かにはなったものの、行動はそのままで、3人、圧倒されて、そのまま並んで、馬(白馬)に乗せられて。
大撮影会は、静かに、決行されることになった。
「えっと、なんかさ、いいの?2人とも、この状況?」
オレは心配になって、前にいる輝と、後ろの希良に問いかける。
「いやぁ、そりゃ…なぁ。」
ヨシとはしていない顔をして、前髪を掻き上げて、首を振る輝。
今はフードも脱いで、マスクも外したので、まぁ確かに、クールビューティー系、リアル白馬の王子様だ。
「今、ここで、逆らったら、さらに大騒ぎになりそうじゃん。それで注目集めたら、元も子もないだろ?ここは仕方ないって。」
同じく、納得はしていないけどって感じの、小さい声が希良から、返ってくる。
そう言う希良も希良で、キラキラアイドル系、リアル白馬の王子様なんだけど。
間に挟まって、オレはどんな顔して、どんな風に思っていたらいいのか、途方に暮れる。なのに。
「樺沢くん、めっちゃ可愛いんだけど。」
前の馬車に乗ってる、村田さんが、目黒さんにキャッキャ言っているのが聞こえて。
回り出した馬たちと一緒に、オレの頭のも、ぐるぐる回り出した。
「みずき、こっち向いて。」
呼ばれて振り返ると、希良がスマホを構えてこっちに向けていた。
「動画撮ってるから、動いて!」
そう言われて、オレが気の利いた動きを出来るわけもなく、ぎこちなく手を振って、ピースをするくらいがやっとだった。
「なんだよそれ。」
背中から、クールビューティー系白馬の王子様の笑い声が聞こえる。
「みずきらしいよ、ま、可愛いから、いい事にしてやる。」
キラキラアイドル系白馬の王子様から、お許しをいただけたので、やれやれと思って、前を向くと、今度はすごい連写のシャッター音が聞こえた。
「3人、ちょっと左に体、傾けて!」
隠し撮り担当の目黒さんから、指示が飛び、何故か、反射的に従ってしまう、王子様たち(オレは違うけど。)だった。
「大豊作だわ〜。」
目黒さんがカメラロールを見返しながら、ほくほくした笑顔を見せてくる。
オレたち3人は白馬の王子様から一転、マスクにフードを被った不審者に成り下がり、みんなの中に紛れて、フードワゴンに並んでいた。
「さっき撮った動画、たく兄に送っていい?」
希良がそう言って、ぎこちない笑顔で、ぎこちなく手を振るオレの動画を見せてくる。
後ろに、笑ってる輝が写っていて、そっちの眩しさにやられそうだ。
「いや、なんで?」
「昨日、ちょっと、心配してたから。なんかオレたちのこと。」
「え?そうなの?」
オレじゃなくて、たく兄、希良に連絡してきたのか…と、ちょっと複雑だったけど、「良いよ」と、笑って答えた。
「あ、じゃあ、オレが撮った、2人の動画も一緒に送れば?希良も写ってた方が良いだろ?」
と、輝が、いつの間か撮っていた動画を見せてくれた。
動画を撮り終わった希良とオレが、なんだかワチャワチャ話してる様子が、えらく楽しそうに映っていて、ちょっと驚いた。
「いつの間に撮ってたんだよ?気がつかなかった。」
「目黒さんたちの激写に紛れて、な。すごいだろ?」
「へー、やるじゃん、かがや。オレも欲しい、送って。んで、たく兄だけじゃなくて、まち姉たちにも送るよ。」
「あ、それ、お願い。あとあと、面倒にならないようにさ。」
修学旅行に来てから、忘れていたけど、文化祭の写真集を叔母さんが見て、いち兄たちに話してから、またちょっと、気まずい事があったのだった。
「あ、あとさ、たく兄が、オレに連絡してきたんじゃないからな。気にすんなよ。オレから、ちょっと、聞きたい事あって、連絡しただけだから。」
希良がそう、オレの気持ちを見透かしたように笑った。
「え、イヤ別にそんなこと、気にしてないけど。」
「ウソつけ、さっき、思いっきり、不機嫌な顔してたぜ。」
「からかうなよ、きら。みずき、大丈夫。そんな顔、してなかったよ。」
輝がそう言うと、希良がマスクを下げて、舌を出し、それを見て、ふくれっつらをしたオレに、抱きついてきた。
「ごめんて。怒んなよ。」
フードをぐいぐい引っ張って、オレの頭を撫でてくる。
「もー、やめろよ、怒ってないって。」
「ほら、みずき、こっちきて。」
輝が笑いながら、オレを引っ張るから、オレら3人、側から見ると、フードを被った謎の3人が絡み合っている、不思議な光景だったかもしれない。
「おーい、ほら、そこ。固まってないで、ちょっと、バラけろよ。」
石川が心配して、そんな声をかけてくる。
今のところ、大きな騒ぎにはなっていないけれど、さっき、メリーゴーランドでマスクを取った時に、チラチラ、見てくる、女子高校生が何人かいた。
その後も、フードワゴンで買った、アイスやチュロスを食べてる時にも、別のグループみたいな人たちが、こっちを見て、指差したりしていたから、気をつけた方が良さそうだった。
オレたち3人は、すぐにバラバラになって、人の流れに背中を向けると、海の方を向いて腰を下ろした。
「んとに、なー。やれやれだ。」
海に向かって、マスクを外すと、誰に向かってでもなく、独り言ちた。
フードは被ったままだったので、やれやれな顔も、小さな独り言も、誰にも気づかれなかったと思ったんだけど。
「樺沢くん、お疲れ様。はい、これ。みんなで分けたから。食べて。」
目黒さんが紙に包んだクッキーを、スイっと目の前に差し出してくれた。
「あ、ありがと。いただきます。」
「隣、いい?座っても。」
いつもは、何か言ったり、写真を撮ると、すぐにオレたちから離れていくのに、珍しく、そんなことを言ってきたので、
「もちろん。どうぞ。お姫さま。」
と、ちょっとふざけて言うと、少し、横を広く空けようと、腰を浮かせた。
「えへへ、ありがとう。なんか、照れちゃうな。」
「写真は?撮らなくて良いの?たまには、2人で撮る?」
オレは目黒さんの返事を待たずに、自分のスマホを出して、手を伸ばして、
「はい、チーズ。」
と、ベタなかけ声とともに、顔を寄せて、シャッターを切った。
「あー、オレにしちゃ、よく撮れてる。ほら。」
そこには、まるで、カップルのように顔を寄せて、はにかんだ笑顔の2人が写っていた。
「目黒さん、可愛く撮れてるよ。送るね。なんなら、ロック画面にしてもいいし。」
ふざけ半分で、そんなことを言う。気がつくと、オレ、1人が、喋っていて、目黒さんは送られた写真をじっと見ていた。
「あ、うん。ありがと。そうしようかな…。」
ポツリと、そう言うので、つい、オレは、今度は、からかうように、
「えー?ホントに?でも、きらの方が良いんだろ?
あ、そうだ、きらと一緒に撮ってあげるよ!きら!」
と、希良に手を上げたんだけど。
「いい!いいの!ほら、クッキー、食べよ。」
上げた手を下ろされて、その手にクッキーをのせられた。
そっか、希良は推しだから、逆に恥ずかしいのか?と、勝手にそう思って、オレは手のひらのクッキーを口に入れた。
口に入れた途端、ほろほろと崩れるそれは、ほんのり甘くて、なんだか温かい味がした。
ハウステンボスは聞いていたよりはるかに、想像していた、何倍も広くて、修学旅行の1日で周りきるのはほぼほぼ、無理だった。
それでもオレたちは、アトラクションによって、何人かに分かれたり、まとまったりしながら、船にのり、観覧車に乗り、でかいハンバーガーをパクつき、ソフトクリームを食べて…。
ものすごい量の写真を撮って、山のようなお土産を、予算の許す限り、買った。
暗くなってから、最後に、もう一度、メリーゴーランドに乗りたいという、女子たちの希望を叶えるべく、みんなで並んだ。
でも、その時は、何故か、昼と違って、みんな静かで。
並んでる時から、キレイな夜景が見えて、エモいというか、メロい…なんだか、しっとりした時間だった。
さすがに目黒さんは、何枚かシャッターを切っていたけれど、1日、遊び疲れたこともあるのか、みんな、じっと静かに、夜景を見ていた。
オレは、というと、この1日、マスクをしたり、フードを被ったりすることで、色々、思うことはあったけれど、特に誰かに何か言われるでも、されるでもなく過ごすことができて、体調を崩すこともなく、何よりも、みんなに迷惑もかけずに済んで、とにかく、ホッとしていた。
「みずき、かがや、こっち見て!」
今回は一番前に乗っている、キラキラアイドル系白馬の王子様が、振り返って、声をかけてきた。
「動画?」
「うん。ほら、動いて!」
と、言われて、今回は後ろにいる、クールビューティー系白馬の王子様と2人でぐるぐる、体を回してみたりした。
「おぉ、みずきに成長が見られる。これはまち姉に報告だ。」
「んだよ、それ。」
帰りのバスに向かいながら、希良にそんなことをいわれて、オレは怒ってみせた。
「どれ、見せて。ホントだ。みずき、すごいじゃん。」
輝まで、楽しそうに笑って、オレの動きを見ていた。
「何なに、オレも見たい。」
「えー、オレも。」
石川や松尾たちも、希良の手元を覗き込んできた。
「もー、ダメ、そんな、面白いもんじゃないって。」
そんなことを言いながら、ゲートを出ると、そこには校長先生をはじめ、先生たちがオレたちを待っていてくれた。
「校長先生!」
オレがそう手を振り、希良も輝も一緒に3人で駆け寄った。
「おかえりなさい。どうだった?楽しかったかい?」
暗くなっても、まだ、フードを被って、マスクをしたままだったオレたちに、校長先生がそう言って、肩を叩き、フードを脱がせてくれた。
「はい、先生たちのおかげで、何事もなくて、ホントに楽しかったです!」
希良がそう言って、とびきりの笑顔を先生たちに向けた。
「ホントに、ありがとうございました!」
「すごい、楽しかったです。先生方と、みんなのおかげです。」
輝に続いて、オレもそう、お礼を言ったけど、校長先生たちはみんな、首を振って。
「先生たちは何もしてないよ。君たちが、頑張ったんだ。
さ、バスに行って。あと少しだからって、気を抜かず、気をつけるんだよ。」
その言葉に、3人ともちょっと、泣きそうになりながら、「はい」と返事をして、フードを被り直し、他のみんなと一緒にバスに向かった。
バスのところまでくると、オレは思わず、輝とハグをした。
「また、あとで会えるけど、とりあえず、今日はホント、お疲れ様!
楽しかったな。」
すぐに離れるつもりだったのに、輝がしばらく離してくれなくて。
「かーがや、そこまで。みんなが見てる。」
希良が間に入ってきて、やっと、離れたけど、その時の輝は、嬉しそうな、でもやっぱり、寂しそうな顔をしていた。
そんな輝に後ろ髪を引かれながら…オレたちは、それぞれのバスに乗り込んだ。
3人の王子様、降臨回ですww
遊園地、メリーゴーランド…となれば!?ということで…。楽しそうでいいですよね。そしてメリーゴーランドといえば、筆者、激推し某BLドラマでも同じようなシーン、ありましたが、名シーンでした!
そして、ハウステンボス!行ったことないです。行きたいです!なのに、見てきたような…ww




