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修学旅行・1日目ノ肆と2日目ノ壱〜旅の夜と朝

旅の途中。非日常の中で出会う、色々な感情。

目を背けたいこともあれば、あらためて気付くこともある。でもそれは、全てが自分自身から、起きてくるもの。

※久しぶりにBL要素、アリで、お届けします。

 そうこうしてるうちに、輝たちの班が風呂の時間になって、先に席を立つことになった。

「じゃ、先に行くけど、みずき、ホントにもう大丈夫?」

 輝が出て行く前に、やっぱり心配そうに声をかけてきた。

 風呂の後はもう、班ごとに部屋に入って、寝るだけだから、輝とは明日の朝まで会えない。

 希良とオレが一緒だから、多分、安心な反面、余計に気になるんだろう。

「うん、平気。ありがと。また明日な。」

 オレも、ちょっと寂しい気がしたけど、笑って、お茶を飲むと、手を振って、輝を見送った。

 

 少しして、オレたちの班も風呂の時間になって、食堂を出た。

 その時、希良がオレの腕を引っ張った。

「みずき、なんで調子悪いの、言ってくれなかったんだよ?」

「あーいや、そんな大したことないって思って。」

「かがやは気がついたのに、オレ、気付けなくて、ごめんな。」

「そんな、きらが謝ることじゃない。オレがちゃんと…ごめん。ありがとな。」

 そう言うと、希良の手を握って、2人、歩き出した。

 

 自分たちの荷物が運ばれてる部屋に行くと、もう布団が敷かれていて。

「あーもう、このまま寝たい!疲れた。」

「ダメだよ、みずき。ほら、浸かるだけでもいいから、風呂行こうぜ。」

 布団に倒れ込んでゴネるオレを、希良が宥めすかして、連れて行こうとしてくる。

「そうだぞ、ここは有名な温泉なんだから、入らないなんて、損だぞ。ほら、行くぞ。」

 石川が希良と一緒になって、オレを追い立てて、松尾と田内がそれを笑って見ている中、オレは渋々、タオルや着替えを持って、みんなに着いて行った。

 そうやって行ったものの、入ってみたら、温泉は最高で、しかも最後の班だったので、大浴場を貸切りで、お湯を掛け合ったり、露天風呂で大はしゃぎするくらい、楽しくて。

 希良とも、背中を流し合って、髪を洗い合って。

 やっと希良も、調子を取り戻したみたいで、オレも、自分を許せる気持ちになった。

 

 その夜。

 当たり前だけど、就寝時間が過ぎて、電気を消しても、誰も眠らなかった。

 とはいえ、オレはもう疲れて、今にも落ちそうになりながら、みんなの話に生返事を繰り返していた。

「ところでさ、樺沢って目黒と付き合ってんの?」

「あ、それな。オレも聞きたかった。どうなの?」

 田内がいきなり、とんでもないことを言い出して、松尾も乗ってきて。

「え?なんの話?」

 一気に、眠気が飛びそうになった。

「いや、だってさ。あいつ、田宮推しとか言ってる割には、樺沢の写真、やたら撮ってるし、気にしてるし、なんつーか、面倒みてるじゃん。な?田宮、そう思わね?」

「付き合ってなくても、目黒が樺沢のこと、好きとか?」

「あー、確かに、それはある。でも、目黒の「好き」は恋愛ってのとは違う気がするけどな。」

 話を振られた希良が、分かるようなわからないようなことを返した。

「えー?じゃ、何?」

「そりゃ、お前、推し活ってヤツだな。」

 希良の言葉にわけわからん、という感じの顔を向けた松尾に、石川がわかれよ、という風に返していった。

「うん、多分、それ。オレ、目黒さんにいっつも、「尊い」って言われてて。あと、それも、きらたちと込みでってことらしいから。あ、『箱推し』って言うんだよな?きら、そう言ってたよな。」

 眠気をこらえて、なんとか石川の言葉に乗っかった。

「なんだよ、それ?」

 何度目かの松尾の疑問。どうやら、松尾はなかなか直球なヤツみたいだった。

「乙女心は、オレたちにはわからんのだよ、松尾くん。」

 石川がふざけながらも、まとめようとする。コイツはガチで良いヤツだ。頭いいし、何より、自然に人の気持ちに寄り添える。

「あとはもう、好きに想像してくれ。

 オレ、もうダメ、眠い。」

 そう言うと、眠りに落ちて行った。

「ほら、そのくらいにしようぜ。また明日、樺沢の調子が悪くなったら、可愛そうだろ?寝るぞ。」

 遠のく意識の中で、石川がそんなことを言っているのが聞こえて、心の中で何度も、ありがとうと言い、明日はもっと、石川と話したいなぁって思いながら、完全に落ちた。


 次の朝。

 誰よりも早く寝たせいか、オレが目を覚ました時、部屋は薄暗くて、まだみんなは寝息をたてていた。

 スマホがブルッた気がして、見てみると、輝から『起きてる?』と、メッセージが来ていた。

『起きてるよ。』と、返すと、『エレベーターホールまで、1人で来て。』と返ってきて。

 少し考えてから、そっと、希良を起こさないように、気をつけて、布団を抜け出し、ジャージの上着を羽織ると、部屋を出た。

 

「みずき。」

 エレベーターホールまで行くと、その横、自販機のあるスペースから、輝の声がした。

「かがや。おはよ。どうした?」

 近づいて覗き込むと、急に腕を取られ、そのスペースに引き込まれ、あっという間に、輝の胸の中に包まれていた。

「はー、やっと、みずきと会えた。」

「え、なんで。昨日、ほとんどずっと、一緒だったじゃん。」

「あんなの、ぜんぜん、みずきが足りない。」

 そう言うと、ギュッと腕に力を入れて、顔が、唇が、オレの首に押し付けられた。

「ちょ、かがや、待って、待って!」

「やだ。待てない。時間、ないんだから。」

 輝は止まるどころか、オレのTシャツの裾から、手をさし込んできて、指が這うように、腰のあたりから胸に上がってきた。

「あ…。」

 肌が粟立つ感覚に、声も出ない。

 その様子を見ながら、輝は嬉しそうに顔を寄せ、舌で口をこじ開けくる。

 胸を弄られ、口の中を掻き回されて、経験したことのない感覚に、オレは腰が立たなくって…床に崩れ落ちた。

「ごめん、やり過ぎた?平気?」

「平気、じゃないよ。もう…、かがや。」

 そう言いながらも、オレは輝の胸にもたれかかってしまい、輝が、またオレを抱き抱えると、そのまま、立ち上がらせてくれて…。

「ありがと。今日はこれでいいや。オレの充電完了だ。」

 最後にもう一度、軽くキスされて、オレはちょっとふらふらしたけど、輝の顔を見たら、なんだか自分も、満たされた気がして…。

「これでいい、じゃねぇし…。」

 そう言った、オレの言葉に、2人で笑うと、お互いそっと、それぞれの部屋に戻った。

 

 2日目の朝、バスで旅館を出たオレたちは、その日の最初の目的地、吉野ヶ里遺跡へ向かった。

 バスの席は、オレと希良が昨日と入れ替わって、希良が窓側にオレが通路側になって、オレの隣に石川が座った。

「樺沢、昨日は大丈夫だったのか?無理すんなよ。

 なんか、ごめんな、調子悪いって、知らなかったから、からかって。」

 前の席の宮﨑が、振り返って、そんなことを言ってくれた。

「ありがと。もう大丈夫。それに、宮﨑が言ったことなんて、忘れてたから、関係ないよ。気にすんなよ。

 でも、気を付ける。みんなに心配かけちゃ、悪いしな。」

「いや、そういうことじゃないだろ。お前、勘違いするなよ。オレらは心配かけられたから、どうこうってんじゃないんだぞ。

 目黒じゃないけど、樺沢も含めて、みんなで楽しくって、なぁ、目黒?」

 宮﨑が、隣の席の目黒さんに同意を求めて、でもちょっとふざけて、そう言うと、目黒さんがスマホをこっちに向けながら笑った。

「えー、ヤダなぁ、宮﨑くん、私のセリフ、取らないでよね。

 でも、その通りだよ、樺沢くん。今日も可愛いね。

 その調子で、よろしくお願いしまーす。」

 目黒さんもふざけながら、オレに、スマホを向けて、シャッターを切った。

「目黒、今日も可愛いってのは、オレのセリフ。」

 今度は希良が、またまたふざけて絡む。

「なんだよ、それ。そんなにセリフが決まってるなら、みんなに台本渡しておいてくれないと、困るんだけど。」

 最後に、石川がオチにして、バス全体がドッと笑った。

 

「あ、そう言えば、目黒、あれ、どうなった?文化祭の打ち上げ。」

 バスが出発して少しした頃、思い出したように、石川が目黒さんに聞いた。

「ああ、それ!ごめんね、みんなには、昨日の食事前に言ったんだけど、石川くんの班、いなかったんだね。」

「そうだよー。オレら、田宮と樺沢と保里の、イケメン狩りに巻き込まれて〜。な?」

 田内がまたそんな、ふざけたことを言うから、つい、つっこんでしまう。

「だーから、イケメン狩りは田宮と保里で、オレはオマケだって言っんのに。」

「てか、文化祭の打ち上げって、もうやったんじゃないの?

 当日、みんなでカラオケ行ったって?」

 希良が不思議そうに、目黒さんを見た。

「そうなんだけどね。あの日は2人ともいなかったでしょ?

 で、みんなが、樺沢くんと田宮くんがいる時に、ちゃんと2人を労いたい、ってことになって。

 今日の夕食後、先生から許可取れたので、みんな残ってね〜!」

 毎度のことだけど、目黒さんの掛け声に、バスの中、全員が賛同の声を上げた。

「え?そんなの、気にしなくていいのに。

 オレ、何もしてないし。

 最後、片付けもできなくて、迷惑かけて。」

 申し訳なさで、目黒さんの顔も見られず、ボソボソと呟く。

 そしたら。

「ほら出た。樺沢の得意技。」

「出たな『自覚ゼロ』の樺沢。」

「『ポワポワ姫』だね〜。」

 なんか、バスのあちこちから、そんな声が聞こえてきた。

「もう、だから、何だよ、それ?昨日からずっと田内に言われてんだけど?」

「宮﨑、説明しろよ。

 お前が言い出しっぺだろ。」

 田内が手を伸ばして、宮﨑を突いた。

 宮﨑?ってことは、悪口なのか?

「あー、もう。めんどーだなぁ。」

 そう言いながらも、宮﨑が後ろを向いて、オレの顔を見てきた。

「樺沢、お前さ、自己評価低すぎなんだよ。

 なのにその自覚ゼロで。

 さらに、自分の地頭の良さとか?

 ビジュの可愛いらしさとか?

 全部の自覚もゼロだろ。」

 そんな風に並べ立てられて、返す言葉もゼロだった。

「だーかーら、『自覚ゼロ』な。」

「え、それって…?」

 ちょっとだけ、凹みかけるオレ。

「まぁ、待て。最後まで聞け。」

 が、さすがに宮﨑はスキがない。

「お前、今、悪口言われてるって思っただろ?

 それも違うんだよな。

 この前のその、お前らがいなかった打ち上げの時に、オレらクラス全員が、樺沢のそういうとこ全部?ポワポワしてて、良いよなぁって。」

「は?」

 今度は、違う意味で驚いて、言葉が出ない。

「意見の一致をみたんだよな。」

「いや、ワケがわからんのだけど。」

 褒められてる?と言われても、戸惑いしかない。

「その、わけのわからない感じも、ポワポワしてて、可愛いよねー。」

「だから、『自覚ゼロのポワポワ姫』ってね。」

「聞いただろ?

 というわけで、オレらみんな、お前のこと良い、ってか、まぁ、好きだなって、そうことになったんだよ。」

 誰か、前の席の方から、女子のそんな声が聞こえて。

 宮﨑がちょっと照れくさそうに、投げやりに言って。

 それを聞いた希良が、

「てか、みんながみずきのこと、そう思ってくれるのは、いいけど。

 みずきは、オレのだから。」

って、ちょっと不満顔で、そう言って。

 え?きら、こんなときに、何を?

「はいはい、田宮と保里の『姫』だもんなー。」

 誰かが、そう言って、バスの中全体がまた、ドッとわいて。

 それに、どう反応したらいいの、かわからず、情け無い顔で笑って、希良を見ると、なんか嬉しそうな、きらきらした笑顔が返ってきた。

 こういうの、中学の時にもあった気がしたけど、はっきりとは、思い出せない。

 でも、明らかに違うのは、みんながオレを、オレたち3人を、肯定して、良いと思って、好きだと言ってくれてるってことだった。

 そんな、オレの驚きと、戸惑いはそのまま、置き去りで。

 修学旅行2目が始まった。


 2日目の最初の目的地は、佐賀県に入って、吉野ヶ里遺跡。

 班行動でそれぞれ、事前に決めたテーマを元に、見学と歴史学習をする。

 オレたちの班は、全員が見事に理系なので、どちらかと言えば、歴史は苦手。

 もちろん、超進学校、苦手と言いながらも、まったくではないけれど、やっぱり昨日に引き続き、全体が解散したら、5人揃って、隣のクラスの青木班へ擦り寄って行く。

「悪いな、保里。今日もよろしくな。」

「オレは良いけど、みんな、面白い?マニアック過ぎない?」

 輝が気にして、みんなを振り返る。

「かがやの話、面白いよ。話すの上手いし、飽きないよな。」

 一番後ろから、オレがそう言って、着いていく。

「なら、良いんだけど。」

 輝が、前髪をかき上げるのが見えた。それは、輝が困った時や、戸惑いを隠そうとする時に、良くする仕草、クセみたいなものだと、この前、思い出したんだ。

 あ、輝が照れてる。

 後ろ姿でもそれがわかって、その背中が、愛おしかった。

自己肯定感・激低王子、としてここまで書いてきたみずき君が、ここに来て、「姫キャラ」確定しましたww

そして、輝くん、ちょっと暴走でしたが、そんなこんな、この先、ぐるぐる回りますが、どんどん、距離か近くなっていく予定ですww

ただ、在庫が少なくなったので、そろそろ、週一、水曜日の投稿に戻りそうですが…変わらず、お付き合い、よろしくお願いします!!

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