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新学期〜新しい3人

夏休みが終わって、新学期が始まると、みんなどこかしら、変わっている。

成長したのか?何か得たのか?それとも失ったのか?

ただ、時間は前に進めることしか出来ない。

※夏休み編が終わって、新しい章が始まります。


 9月。新学期が始まった。


 だからといって、暑さがおさまるわけでもなく、駅からの徒歩組は手にハンディファンが欠かせない。

 それはオレも例外じゃなくて、顔に風を当てながら歩いてきても、席につけば汗だくだった。

「みずきー、おはよー!」

 北門すぐ近くにバスが止まる、バス組の希良は涼しい顔して近寄ってくる。

「おはよ。朝から爽やかだなぁ。きらは。」

「なんだよ、それ。

 みずきは汗だくでも可愛いよ。かがやは?」

「はいはい、ありがと。

 なんか当番だからって、先に行った。」

 そう言って、希良の言葉を軽く流して…そっと、あたりを見回す。

 希良のファンの女子数人、宮﨑ほか何人かが、遠慮のない目でオレたちを見てる。

 そりゃ、そうだと思う。

 新学期が始まって1週間。

 オレときらが急に名前呼びになって、ヒマさえあれば、隣のクラスから輝も来て、空き教室で3人でわちゃわちゃしてるし、昼も同じ空き教室で3人で食べるようになって。

 夏休みが終わっていきなり、そんな風になったら、見ないでくれと言う方が無理だろう。


「なんか、思い出したんだけどさ。」

 昼休み、弁当を食べながら、オレが言った。

「何を?」

「具合、悪くなるようなことじゃないよな?」

「違うよ。平気。

 いや、中学の時も3人でこうやって集まってると、色んな人がオレたちのこと見てたよなって。」

 希良と輝が顔を見合わせる。

 あー、これは心配してんな、オレのこと。

「大丈夫?その、最近、結構、見られてるけど?」

「うん、今のところ、大丈夫。

 2人は仕方ないよ、そんだけカッコいいんだから。

 で、そんな2人に可愛がられてるんだから、仕方ないよな、オレが見られても。」

 ケラケラ笑うと、2人がホッとしたのがわかった。

 

 その日の午後、化学の授業の後、ビーカーなんかを洗ってた時だった。

「樺沢ってさ、ツンデレだよな、見てると。」

 一緒に片付けてた石川が、急に、そんなことを言ってきた。

「は?なに、それ?」

「いや、だってさ、田宮や隣のクラスの、保里?だっけ?あのイケメン2人に、急にあんな風にされるようになっても、なんつーか、だから何?みたいな感じじゃん?」

 へえ、そんな風に見えるのか、オレたち、と思いつつ、なんて答えたらいいのか分からず、ちょっと考えた。

「そう言われてもな。オレら別に普通の友だちだし。

 ってか、石川、それお前が思って言ってるわけじゃないだろ。」

「え?なんでわかんの。」

 当てずっぽうに言ってみたら、図星だったらしい。

 石川は1年から同じクラスで、良く知ってるけど、オレと同じバリバリの理系だ。

 数式で割り切れないことにはあまり興味ないタイプってのもあるし、それとは真逆に、遅れて入学したオレに気を遣ってくれたりすることも多かった、情に厚いヤツだから、おかしいなと、思ったのだ。

「わかるよ、それくらい。

 まぁ、誰が何に興味持ってるのか、知らんけど。

 そいつ?そいつら?に言って。

 オレたち、ホントは中学の頃から、今みたいな感じだったんだって。

 ワケあって、高校に入ってから、ちょっと距離取ってたけど、もうその必要がなくなったから、元に戻っただけなんだって。」

 自分でも驚くくらい、すらすらと、そんな言葉が出てきた。

 石川は目を丸くして、オレを見てる。

 みんなに言っていい、みたいな、そんな答えは予想してなかったのかもしれない。

「ワケって何?」

 おお、これは石川の純粋な興味だなと思ったけど、そこは。

「それはプライベートなことだから、言えない。残念ながら。」

「あ、ごめん。調子乗った。」

 素直に謝られたので、怒る気にはならない。石川はいいヤツだし。それに言えないのは、オレが覚えていないからで。

「いいよ。別に。分かってくれたなら。」

 石川はホッとして頷くと、あらためてオレの顔を見て話し出した。

「ごめんな、今のは、宮﨑たちに言われたことだったんだ。

 オレが樺沢と、係一緒で、よく話してるからって。何か聞き出してこいって言われて。

 オレ、はっきり言って、お前たちがなんで急に仲良くなったのかとか、全然興味ないのに。

 あ、樺沢たちに興味がないって、そういわけじゃないんだぜ。」

 オレは樺沢のこと好きだし…と、口の中でボソボソっと呟いた。

 やっぱ石川はいいヤツだ。

「オレも石川のこと、好きだよ。

 こうやって係のことやる時も、考えてること似てるから、やりやすいし。」

「あ!やっぱり?だよな、オレもそう思ってた。

 1年の時も、樺沢がグループ入ってくると、オレ、やりやすかったし、この前の発表会の準備と片付けも、オレたちが一番手際よかったよな。」

 石川が、今日イチ、いい笑顔で笑いかけてきて、オレもそれに応えた。

「だな。まぁだからさ、石川に聞いてこいって言った宮﨑たち、的外れなことはしてないよな。

 でも、石川の性格、分かってない。」

 どうせ、オレは半端なヤツですよーと、心の中で宮﨑に舌を出した。

「樺沢があの2人に大事にされるの、なんか分かるよ、オレ。」

 石川が小さく頷きながら、そう言った。

「そう?ありがと。

 そんな風に思ってくれるのは嬉しいよ。」

「今、聞いたこと、教えてくれたこと、オレ、言わないよ。アイツらには。」

「え、でも、それじゃ、石川の立場、悪くならない?」

 心配になってそう言うと、石川はタオルで濡れた手をふきながら、もう一度、いい笑顔で笑いかけてきた。

「ありがと、こんなオレのことまで心配してくれて。

 でも、大丈夫。ちゃんとオレのこと分かってくれてるやつもいるし。

 そんなんで悪くなる立場なら、オレにだって選ぶ権利ある。」

 なんか、思ってた以上に石川がいいヤツ過ぎて、泣けてくる。

「オレの方こそ、ありがと。

 でもさ、石川、こんなオレ、とか言うなよな。

 石川は、すげ〜ちゃんとした、いいヤツだよ。」

「やめろよ、泣けてくるじゃん。」

「実はオレも。」

 なんだよ、これ、と顔を見合わせて2人、大笑いした。

「みずきーまだ終わらない?手伝う?」

 廊下で待ちくたびれた希良が覗きにきた。

「あ、ごめん、ごめん。もう終わる。

 ちょっと石川と話してた。」

「ごめんな、田宮。

 ちょっと樺沢、借りてた。もう終わったから。」

 オレと石川の妙に息のあった様子に、希良が首を傾げた。

「うん、別にいいよ。石川はいいヤツだから。」

 その言葉に、石川とオレはさらに大笑いして、訳がわかってない希良がなんだよと、膨れっ面をした。


 その日の帰り、バスを待つ希良に付き合ってる時間、中庭を見下ろす空き教室で、オレは石川とのことを2人に話した。

「みずきー、そういうときは、オレを呼べよ。

 廊下にいたのに。いくら石川はいいヤツだからって、また具合悪くなったら、どうすんだよ。

 なぁ、かがや?」

「まぁまぁ、落ち着けよ。

 今、聞いた感じだと、石川ってヤツはみずきと気が合うんだろ?

 だからか、みずき、ちゃんと自分の中で消化して話してるじゃん。

 大丈夫だよ。みずきはそんなに柔じゃない。」

 散々、夏休み中に心配かけたから仕方ないけど、最近の希良は、ちょっと過保護だと思う。

「うん、石川とは、いつも係が一緒だから。

 でも、きらが廊下で待っててくれたから、うまくやれたんだってのもある。

 オレが呼べば、すぐに来てくれただろ?」

 ごめんな、希良と思いながら、甘えた顔で笑って言った。

「まぁ、もちろん、そうだけどさ。」

 そんな話をしているうちに、そろそろバスがくる時間になって、3人揃って下駄箱まで行って、玄関を出たところで右と左に別れる。

「じゃあな。」

「またな。」

「気をつけて。」

 希良は1人、バス停に、オレとかがやは2人で駅に向かった。


「1年と3ヶ月くらい?」

 帰って行く希良の背中を見送って、オレはふとそんなことを言った。

「ん?何が?」

「きらが1人でいた時間。」

「ああ…。」

 

 高校に入って、1年の時は3人バラバラのクラスだった。

 オレは少し遅れて入学したので、クラスでそれほど仲の良いヤツが出来なくて、何かあれば、石川とか他の誰かに組んでもらって、1年間、やり過ごした。

 でも、部活に行けば輝がいた。

 行き帰りの電車や駅でも、見かけたら、安心したし、よく輝から声をかけてくれて、他愛のない話をした。


 その時は全部忘れてたから、最初は友だちって感じじゃなかったけど、それでも、1学期が終わる頃には、友だちだと思っていたし、振り向けば、手を伸ばせば、届くところにいつも輝がいてくれた。

 輝も同じような気持ちだったって、前に話したことがある。

 まぁ、友だちになってくれって2年になってから言われたんだから、そこは色々、考えることがあったんだとは思うけれど。


 でも、希良は。

 他に友だちがいて、たくさんのヤツらに囲まれていたけど、1人だったって、この前、言われた。


 そうだ、2年になって、同じクラスになった時のこと、良く覚えてる。

「樺沢ー!良かった。やっと同じクラスになれたな。

 これからよろしく!」

 先に席に座っていたオレのところに駆け寄って来て、満面の笑みってのはこういうことだなって顔、しかも抜群に可愛い顔して言ったんだ。

「うん、こちらこそ、よろしく。」

 そう言いながら、オレは、なんでこんな人気者のイケメンがオレに声かけてくるんだ?くらいのことを考てたんだから、その時のオレを殴りたい。


「心配、なんだよ、きら。前は同じクラスにいても、声をかけるくらいしかできないって言ってたから。

 今はやっと、堂々と?心配出来るからな。」

「うん、わかってる。夏休み中、オレ、たくさん、心配かけたし。

 あー、違うか。中学出てからずっとなんだよな。

 きらにも、かがやにも。でもさ、堂々と心配するって、何それ?」

 まぁな、と2人笑って駅に向かう。


「そう言えば、来週からだな。塾。」

「あー、そうだった。金曜日から?」

 オレが憂鬱そうに答えると、輝が笑った。

「そんな顔すんなよ。3人で一緒なんだから、それほど悪いことないって。」

「てか、オレにとっては、それだけだよ。

 あ、あと、そうなると帰り、3人一緒に帰れるな。」

 オレが嬉しそうに笑うと。

「いまの、きらに聞かせたかったな。」

 輝がそう言って、さらに笑った。

やっと新学期。3人が新しいフェーズに入ります。

これから、ヲタク度全開の「文化祭編」が始まります。

まだまだ長いですが、よろしくお付き合いください!

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