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夏の残り〜秋の気配・共鳴

暑さの中で震える空気から伝えるもの。それは伝えることが難しい心の奥の音。

空気が澄んでくる秋の気配が共鳴して、それを伝えてくれるようになる。

 両手で顔を覆って、下を向いて、大きく息を吐いた。

「ごめん、ちょっと、オレの話、聞いてもらって、いい?」

 輝と希良が顔を見合わせた。

 なんか警戒されてる?

「いいけど、今、ウチ、親いないから。

 まぁ、すぐそこ、病院だけど。

 調子悪くならない程度にな。」

「うん、大丈夫…だと思う。」

 自信ないけど、そう言って、一度、深呼吸してから、オレは2人に向かって、言った。

「あ、まず、一昨日、海でかがやに話したこと、きらにも話したいんだけど、いい?」

「おお、それな。オレも聞きたかった。

 かがや、ごめん、先にいいか?」

 輝がそれに、もちろん、と頷いて、オレは希良にここ数ヶ月、感じてる違和感について、輝に話したことと同じように話した。

「そうか。なんか、そんな感じ、してたけど…。

 大丈夫なのか?例えば、今、こうしてて。」

 希良が心配そうに、眉を寄せてオレを見た。

「うん、今は平気。

 ずっと混乱してるってわけじゃないんだ。

 たまに、ちょっとな。変な感じがするっていうくらいで、それで発作が起きるわけでもないから。」

 オレは希良の顔を見て、にっこり笑った。

「そか、なら良かった。な、かがや。」

「うん。でも、なんかおかしい感じしたら、すぐに言えよ。オレたちに何が出来るか、わからないけど。」

 輝も心配そうな顔をして、そう言った。

「ありがと。でも、さっきかがやが言ってたみたいに、オレは、今、2人と一緒にいることが大事で。

 それで、ちょっと2人に聞いて欲しいことがあるんだ。」

 そう言って、オレはもう一度、ゆっくり深呼吸をした。

 その様子に2人の間の緊張感が増した。

「あの、オレさ、2人とこれからも、中学の時みたいに、一緒にいたいんだ。

 この夏休みが終わっても、ずっと。

 きらのこと、きらって呼びたいし、かがやのことはもちろんで。

 2人にはみずきって呼んで欲しい。

 父さんには、ちゃんと話すし、輝のご両親がわかってくれたら…。」

 一息でそこまで言うと、2人の顔を見た。

 2人はさっきと同じように、顔を見合わせて、次の瞬間、揃って笑い出した。

「なんだよ、かしこまって、何言うかと思ったら。」

「今の話、そんなにショックだったのか?

 あ、それとも、昨日、オレがわかってないって言ったからか?

 何、そんな気にしてたのか?ごめんな。」

 2人に笑われて、オレは全身の力が抜けた。それと同時に、何故か涙が出た。

「え、ちょっと、なんで泣くよ?

 かがや、お前のせいだぞ。」

「いや、きらが笑うからだろ。

 オレのせいにすんなよ。」

「えと、ごめん、なんで涙…?」

 リュックからタオルを出すヒマもなく、涙が出るので、オレは着ていたTシャツの袖で拭いながら、リュックの中からタオルを出そうと、あがく。

 それを見かねた希良が机の上にあったティッシュを箱ごと渡してくれて。

「あ、ありがと。違うんだ。

 おれ、ずっと、ずっと前から誰かに、頭の中で、それはダメだって言われてて。

 よくわかんないんだけど。

 その事を考えると、いつも体調がおかしなことになって、発作起したりして。

 2人にこうやって言いたかったのに、ずっと言えなくて、それが苦しくて…。」

 笑っていた2人がいつのまにか、真顔になって。

「いまは、大丈夫なのか?その声、聞こえない?」

 輝が心配して、聞いてくる。

 きっといつも、不安だったんだと思う。

 一緒にいても、オレがいつ体調を崩すかわからないから。

「うん。平気。

 なんか涙が止まらないけど、大丈夫。 」

「涙、止まらないのも、十分おかしいけどな。

 でもまぁ、泣きたいだけ泣けばいいよ。それくらいは、オレたちが受けとめるから。な、かがや?」

 希良の言葉に輝が頷いて、2人がいつものように、オレを間に挟んで座ると、両肩を撫でてくれた。

「あ、ありがとう。ホント、ごめん。」

「謝るなよ。大丈夫。

 オレたちはずっと一緒だから。心配するな。

 息、苦しくない?」

 右の肩に置かれた輝の手が温かくて、目を覗き込まれてその優しさに、ホッとして頷く。

「でもオレ、忘れちゃったから。

 さっき、中学の時みたいにって言ったけど。

 なんでかわからないけど、2人と一緒だった中学の頃の事、忘れて、今もちゃんと思い出せないんだ。

 だから…。」

「それはさ、いいんじゃない?」

 オレの言葉を最後まで聞かずに、左の耳に手を伸ばして、ゆっくり撫でてきた。

 「さっきからみんなで同じこと言ってるけどな。

 何より、みずきがオレたちと一緒にいたいって思って、そう言ってくれることの方が大事。

 で、かがやもオレも、同じこと思っているんだからさ。思い出せなくても、大丈夫。」

 左の肩から、首の後ろに手を回して、希良が言った。そんなこと、大したことないよって感じに。

「だな。それは気にしなくていいよ。

 だって、オレたちが覚えてるから。

 この前、きらが言ったろ。」

「そうそう。オレたちが覚えてるから、聞いてくれれば何でも話すよ。」

 何でも?オレは一瞬、固まった。

 オレが覚えてなくて、ホントは一番、聞きたいこと…でも、一番怖くて聞けないこと、それは、オレたち3人が一緒にいられなくなった理由。

 そして、そのことと、オレが記憶を失くしたことと、どんな繋がりがあるのか、ということ。

「みずき?どうした?固まってる。」

 輝がオレの目の前で手をヒラヒラさせてる。

「あー、大丈夫。ちょっとボーっとしてた。」

「ホントに平気?そうだ、アイス食う?

 母さんがみんなで食べていいって、お中元でもらったブルーシールのアイスがあるんだよ!」

「おぉ、さすが、医者んち。リッチ〜。」

 輝がふざけて、そんなことを言って、希良がやめろよ、とかえしてる。いつもの光景。

「みずき、何味がいい?やっぱ、マンゴー?あ、でもバニラ&クッキーもおススメ。うまいよ。あとさ、塩ちんすこうってのも、美味かった。」

「何それ、きら、どんだけ食ってんだよ。

 うらやまし過ぎ。」

 オレもいつもの調子を取り戻して、希良に絡む。

 食べ物については3人の中で一番、保守的な輝が、まず、バニラ&クッキーと塩ちんすこうで悩み出した。

「たまには冒険してみれば?

 バニラ&クッキーは他でもありそうじゃん。」

 オレが輝を煽るのは、ワケがあって。

 なんだかんだでも、ブルーシールのマンゴーは絶品なので、自分はそれにするつもりで、でも塩ちんすこうも気にはなってたから、ぜひ輝にそれを選んでもらって、ひと口もらいたいと企んでいたのだ。

「ん、みずきがそう言うなら、それにする。」

「あ、じゃあ、オレがバニラ&クッキーにする。みずき、やっぱりマンゴーがいいんだろ?それなら、みんなでちょっとずつ食べられるじゃん。」

 希良がオレの企みを見透かしたようにニヤッと笑って、アイスを取りに部屋を出て行った。

「あー、ウマ!やっぱりマンゴー絶品。」

「この塩ちんすこうも、イケるぜ!ほら、食べてみろよ。」

「かがや、みずきには甘いよなぁ。」

「え?なんだよ?」

「イヤ、別に。ほら、バニラ&クッキーも食べてみろよ。」

「かがや、マンゴーも食べて、ほら。」

 希良が余計なことを言う前に、オレは輝に自分のアイスを差し出して、輝が持っているアイスを一すくい、もらって食べた。

「あー、全部美味いな。そういえば、一昨日、道の駅でアイス食べ損なったよな。」

「ん?あー。」

 輝がそう言って、オレがあれ?という反応をして。

「何?まさか、みずき、食べたとか言わないよな?」

 希良がまたまた鋭いことを言うので、オレは観念して、正直に言うことにした。

「えっと、すみません、食べました。

 しかも、たく兄にゴチになって。」

「はい?」

「えっと、どういうことかな?」

 さすがの輝もキツめな視線を投げてきた。

「いや、ほら、2人に無理矢理外に出されて、オレがむくれてたから、たく兄が機嫌直せよってことでさ。

 仕方ないだろ。」

 ほとんど開き直ったように言った。

「なんだよ〜、オレたちがいち兄に、ガチ説教くらってる時じゃんか。」

 希良が半ギレしてオレを突いてきた。

「オレなんて、それで、ガチ凹みまくってる時だ。」

 輝も恨めしそうにオレに膝を詰めてきた。

「ごめんて。あの時は仕方なかったじゃん。

 あ、じゃあ今度、また行こ?アイス食べに。

 オレ、まち姉かちい姉に、連れてってくれって頼むからさ。」

 そう言うと、2人がやっと納得して、それならいい、と笑ってくれた。

 そんなこんなでアイスを食べ終えたオレたちは、夏休みもあと少しになったことを惜しみながら、解散することになった。

 輝が歩いて帰るって言うから、オレも一緒に歩いて帰ろうと思ったのに、2人に全力で止められて、母親に迎えにきてもらうように連絡して。

 母親が来るまでは、輝も一緒に、ゲームしながら待っていた。

「いや、そんな、大丈夫です。」

 迎えに来た母親から、一緒に乗って行くように言われて、何故か輝が断ってきた。

「何言ってるの。

 別に回り道でもなんでもないんだから。

 暑いんだし。ほら、乗って。」

「輝、何もないなら、一緒にかえろ?

 あ、そっか。わかった。」

 オレは運転席に乗り込んだ母親に、そっと耳打ちした。

「お母さん、輝の家の少し手前で下ろしてあげてもらっていい?

 今日だけ。お願い。」

「え?ああ、いいわよ。大丈夫。」

 母親がちょっと首を傾げて、でもすぐに了解してくれた。

「輝、聞いた?

 さっきの話、気にしなくて大丈夫だから。」

 オレはそう言って輝の様子を見ながら、そっと、輝の手を取った。

「え、そんな、いいの?」

「もちろん。っていうか、一緒がいい。」

「おい、オレの前でいちゃつくなよ。

 さっさと一緒に帰れ。」

 希良が笑いながら、オレたちの背中を押して、オレたちは車に乗った。

「じゃ、またね。アイスご馳走さま。ご両親によろしく言ってね。」

 車の窓を開けて、希良に声をかけて、オレたちは別れた。

 夏休みも終わりに近い、夕暮れ、日暮らしの声が聞こえた気がした。

夏休み編、やっと終了です。

んー、思った以上にややこしく、長くなってしまいました。

が、この後の文化祭編は、もっと長くなってます。

引き続きよろしくお願いします!

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