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接点〜姫ポジと初めて

どんなことでも、初めてはあって。それに驚いたり、戸惑うことは多い。それでも、人はそのことを受け止めて、抱きしめて…次に進む。

※3人、まだ一線に並んでますが、ちょっとドキドキします。

 翌週、夏休みに入って2週目の土曜日。

 オレたち3人はいち兄の車に前のように積み込まれ、予備校の見学に行った。

「いらっしゃい。ってか、教え子3人て、このメンバーっすか?さすが、以知先輩。」

 出迎えてくれた、いち兄の高校の後輩、ってことはオレたちの先輩になる村上さんが、オレたちを(主に希良と輝を)見て、目を丸くした。

「何がさすが、だよ。まぁ、この2人は有名人かもしれないけど。

 こっちが保里君、で、こっちが田宮君ね。あとこの小さいのがオレの従兄弟。同じ、樺沢、名前がみずきな。」

 いち兄が、雑にオレたちを紹介する。

 小さいってなんだよ、と思いつつ、2人に合わせて、オレもぺこりと頭をさげた。

「みずき君っていうのか。そっか、君が以知先輩が弟さん以上に可愛がってるとウワサの。」

「あ、そうそう。それはホント。弟は可愛くないからさ。」

 塾の中を案内してもらいながら、いち兄と村上さんのそんな話が続いていた。

「いやー、彼も合わせて、有名ですって。

 オレ、中学、彼らと同じ二中で、妹が彼らの2つ上なんですけど。

 3年の時にエラいイケメンコンビが入ってきて、それだけでもすごいのに、その間にいつも可愛い男子がいるのがなんか尊いって…。あ、そうだ。思い出しましたよ。『きらきらの姫ポジ』って女子みんなで騒いでるって。」

「村上〜、お前、変なこと思い出すなよな。」

 いち兄が村上さんにそうツッコんで、オレたち3人は、顔を見合わせた。

「姫ポジって?何?」希良が首を傾げる。

「え、2人の間て、オレ?」オレは2人に聞く。

「いや、知らんけど。」それを輝はまとめて流した。

 そんなオレらを、いち兄が振り返って、ゲキを入れる。

「こらこら、そんなところに引っかからない。今日は勉強のことで来たんだからな。」

 うん、そうだ、そうだと、なんとなく頷きあって、オレたちはその話を流すことにした。

 ひと通りの見学とクラス分けやカリキュラムの説明、そして必要な書類に記入したりと、手続きにはなかなか時間がかかった。

「それで、クラス分けと学力判定も兼ねたテスト、英、国、数の3科目だけど、いつが良いかな。やっぱり早い方がいいと思うんですがね。」

 カリキュラムの説明から、村上さんに変わって説明してくれている事務員の有原さんにきかれた。

「今日、受けちゃえば?それでも大丈夫ですか?」

「もちろん、大丈夫ですよ。一科目、30分ですが、時間、大丈夫ですか?」

 トントン拍子に話が進みそうなのをみて、オレは焦った。

「え?今日?これから?」

「だめか?また出直すのも面倒だろ?」

 効率重視のいち兄らしい一言。そして、焦っているのはオレだけだった。

 そりゃ、別の日に来たからって、何が出来るわけじゃないから、気持ちのは問題なんだけど。

「確かにそうですよね。でも、いち兄、待っもらうの、時間、大丈夫ですか?」

 輝がいち兄のことを気遣っている。その余裕、どこから来てる?

 希良も、横でうなずいてるし。

「大丈夫。今日は一日、そのつもりできたし。3人とも気楽に頑張っておいで。」

 そう言われて、オレたち3人は別の教室に連れて行かれ、1時間半、テストを受けることになった。

 なんとか終わって、疲れ果ててたのも、やっぱりオレだけだった。

「みずき、大丈夫?顔色悪いけど。」

「無理させちゃった?ごめんな。」

 輝と希良が2人揃って、オレの顔を心配そうにのぞきこんできた。

「平気。ごめんな。なんかオレだけ…情け無い。」

 ぼそっと言っただけの、ほぼ独り言だったのに、オレはあっという間に、2人にはさまれて、両腕を抱えられていた。

「何いってんだよ。」と希良。

「そういうこと、言わないの。みずきはみずき、だろ?」

 と、輝はちょっと説教くさいことを言ってくる。

「うん、そうだね。ありがと。」

 そうは言ってみたものの、試験の結果にはまったく、自信なくて。

 2人をがっかりさせないためにも、自分のためにも、末席でいいから、滑り込みたいと祈るしかなかった。

 塾の中は、明日から始まるという夏休みの特別講習前で、3階の自習室以外には人がいなかった。

 いち兄は保護者面談に使う個室で、何やら難しい本を読みながら、オレたち3人を待っていてくれた。

「どうした?みー、大丈夫か?」

 オレ、そんな顔ひどい顔してんのかな、と思いながら、いち兄の隣に腰を下ろした。

「うん、大丈夫。」

「ちょっと、お茶買ってきます。みずき、温かいのがいい?」

 そういって、輝が部屋を出て行った。

「あ、オレ…ちょっとトイレ。」

「大丈夫?一緒に行くよ。」

 輝の少し後に立ち上がったオレを、心配した希良が一緒に付いて、廊下に出た。

 誰もいない暗い廊下の先で、自販機の明かりだけが光っていた。輝の姿は見えない。

 自販機の手前、トイレの入口を曲がった時だった。

 急に希良が後ろからオレの腕を掴んで、あっという間に、オレは希良の腕の中で抱きしめられていた。

「みずき…ホントに、大丈夫?」

 え?と、一瞬固まるオレ。

 輝よりは背が低いけど、オレよりは背が高い希良の肩のあたりに顔を押し付けられた。

「だ、大丈夫だよ、きら、そんな、心配しないで。」

 こういうのは初めてじゃない。

 この前、具合が悪くなった時にも、輝がこんな風に温めてくれたし…そう思って、落ち着こうと思ったのに。

 希良が首の後ろに手をまわして、ゆっくり撫でると、顔が近づいてきて、頬と頬がふれあい、そっと、でもしっかりと、唇が重ねられた。

 ほんの数秒、でも、息が止まるかと思った。

「ここで、待ってる。」

 そう言った希良が、オレの体から離れた。

「あ、うん、ありがと。」

 小走りでトイレに入った。心臓がドキドキしてうるさい。

 この前の輝に抱きしめられた時とは違う、何か初めての…?

 全然、違う気持ち。

「どうしよう。」思わず、こぼれた言葉。

 それでも急いで用を済ませて、希良が待っているところに戻った。

「大丈夫?」

「うん、ありがと。」

 希良はまるで何もなかったように笑顔で迎えてくれて、並んで廊下に出ると、そこに輝が戻ってきた。

「温かい飲み物、ココアしかなかったんだけど、良かったかな。」

「ありがとう。大丈夫だよ。ごめんね、かがや、きらも、心配かけて。」

 輝から、カップに入ったココアを受け取って。一口飲んだ。

 トロリと甘くて、どこかしょっぱい、温かいものが口いっぱいに広がって、オレは体から力が抜ける気がした。

 3人で部屋に戻ると、ココアを手に、オレは3人掛けのソファの真ん中に腰を下ろし、当然のように、希良と輝が左右に座った。

「ホントに仲いいな、君ら。」

 いち兄が嬉しそうに笑った。

「みずきが間にいると、なんか、安心するんです。」

 輝がそう言った声が、明るくて、きらきらして聞こえて。

「それに、こんな風一緒にいられるの、オレは久しぶりだから…嬉しいよ。」

 希良の声は少し、寂しそうだったけど、最後の方はやっぱりきらきらしてた。

 でもオレは、そんな風に言われるのを聞きながら、さっきのことを思い出してしまった。

 どうしたらいいのか、心の整理がつかない。

 それに、何かわからない違和感も感じてた。

 3人で一緒にいる、この状況が普通だと思ってしまうことへの違和感。

 みんなが当たり前みたいに、この状況について話してることへの違和感。

 そして、オレだけが、違和感を感じてしまうことへの違和感。

 両手でココアのカップを握って、その違和感と、どうしたらいいのかわからない、この気持ちを、一緒に全部、なかったことにしたい、そう思っていた。

 その時、ドアがノックされて、有原さんが書類を手にして入ってきた。

「失礼しますね。3人ともお疲れ様でした。あれ?樺沢君、大丈夫かな。疲れちゃいましたか。」

 2人の間で小さくなってるオレをみて、心配そうに声をかけてくれた。

「あ、大丈夫です。すみません、自分だけ準備不足で。」

 情け無いよなぁと思いながらも、言い訳せずにはいられなかった。

「準備不足?いやいや、とんでもない。3人ともさすがですよ。樺沢君、あ、お兄さんの方のね、から、3人とも特進にって言われて、どうなのかと思っていたんですが、文句なしですね。」

 うんうんと、頷きながら、結果の紙をそれぞれに渡してくれた。

 オレはホントに出来た気してなかったから、そこに「特進 A」判定の文字を見た時、ちょっと泣きそうになったのを、なんとか我慢した。

「おー、良かった。」希良が控えめに歓声を上げた。

「なんだよ、みずき、全然できてんじゃん。」

 輝がオレのを覗き込んで、笑いながら、脇腹をつついてくる。

「いや、そう、だね。なんか手ごたえなかったんだけど。良かった。2人と一緒だね。」

 オレは心からホッとしていた。

 それから、残りの入塾手続きをして、村上さんにももう一度お礼を言ってから、来た時と同じ、いち兄の車の後ろに3人並んで乗り込んだ。

BLと言いながら、なかなかそれっぽくなくて、モヤモヤしている方も多いかもしれませんが、彼らのペースで、段々と、そういう感じに近づいて行きます。

って言うか、なる予定です。

物足りないと思っていらっしゃる界隈、もう少々お付いお願いします。

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