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バニの能力


「わー。ライドが杖を持ってるー」


 バニが指をさしてきたので、僕は自慢気に答える。


「この杖に気づくとは、なかなかやるな」

「目立ってたよー」


 僕は杖を大事そうに、さする。

 ミネアも会話に入ってきた。


「良い杖だな。私は魔導師ではないが、この杖はかなり高級なものではないか?」

「まあね。実家にあった杖だし」

「貴族だー。金持ちの杖だー」


 僕が使用人に頼んで、こっそり実家から送ってもらっていたのだ。

 頼んだのは、ミネアとダンジョンに潜り始めた頃。


 愛用の杖なので、そのうち送ってもらうつもりではいた。

 しかし、こんなにすぐに使うことになるとは思わなかったな。


「ミネア。地図を見せてくれ」


 僕は地図を確認。

 セリスの情報を元に、僕が居場所を書き込んだ地図だ。


 さらに、ミネアにも協力してもらって、かなり場所を絞り込んだ。

 おそらく、このダンジョンで間違いないだろう。


 Eランクで、フィールドは山。

 弱い敵ばかりなので、ビギナー冒険者がよく利用していたそうだ。


 しかし、何故か大怪我をする者が頻発し、最近は誰も近寄らなくなった。

 その怪我人に話を聞いたところ、『ドラゴンにやられた!』ってことらしい。


 僕たちは山を昇っていく。

 途中、何度かモンスターと遭遇するが、サクッと討伐。

 魔力はできるだけ使いたくないので、ミネアにやってもらっている。


 山の中腹まで、辿り着いた。


「冒険者が怪我をするのは、だいたいこの辺りなんだよな」

「うむ。しかし、ドラゴンの姿は見当たらないな」


 普通に考えれば、ドラゴンが歩いていると目立つだろう。


 すると、騒ぎになる。

 ギルドでも、まっさきに賞金がかけられる。

 それを目当てに冒険者たちも集まってくる。もちろん、クラウンタウンだけでなく、他の町からも。


「変だよ」

「どこが変なんだ?」

「だってさ。ドラゴンがいるんだよ。なのに、どうして誰も討伐しに来ないの? どうしてダンジョンはEランクなの?」

「たしかにな。ドラゴンと言えば、誰もが知ってる有名なモンスターだ。ダンジョンの名前を『ドラゴン山』に変えてもいいぐらいだ」

「……それはちょっとダサいけど。でも、僕の言いたいことは分かるでしょ?」


 ドラゴンの目撃証言についても、怪しいところがあった。

 みんな『ドラゴンのようなもの』という言い方をするのだ。


 背後から殴られたので、誰も姿を確認してない。

 そんな話し方をするのだ。


「僕たちが思ってるより、面倒な敵なのかも。注意してかからないと」


 とりあえず、ドラゴンを見付ける必要がある。


「別れて探すことにしよう。僕は北を探すから。バニは西、ミネアは東をお願い」

「わかったー」

「了解した」

「何も見つけられなくても、10分後にはここに全員集合ね」


 それから、僕はバニを見る。


「君は危ないことがあったら、すぐに逃げるんだよ。いいね」

「はーい」


 この返事はよく聞くが、あまり信用できない。

 というわけで、僕たちは一旦、別行動を取ることにする。


「うーん。ドラゴンはどこだろう」


 北を散策している僕。

 それらしきものは何も見当たらない。


 知ってのとおり、ドラゴンとは巨大なモンスターだ。

 普通に考えれば、動くだけで地響きぐらいするだろう。虫や獣たちも、怖くて逃げ出したりするだろう。そういうものを見て、僕たちは違和感を感じるはずだ。


 しかし、不自然なぐらい普通の山だ。空も晴れているし、まさにピクニック日和。

 僕が遠くを見渡していると、そばの茂みからガサガサと音がした。


「……ドラゴンか?」


 念のため、剣を構えておく。

 慎重に歩み寄っていくと、茂みからモンスターが飛び込んできた。


 黒いもので素早い動き。

 だが、それを僕は咄嗟に回避し、そのまま切りはらう。


「キャウウウン!」 


 正体は、ガルム。狼のモンスターだった。

 ほっと肩を撫で下ろす。


「なんだ、ガルムか。驚かさないでくれよ」


 剣をしまい、時間を確認する。


「そろそろ10分経つな。戻るとしようか」


 結局、何も発見できなかった。

 足跡のような手がかりもなかったが、みんなはどうだろう。


 戻ってみると、ミネアが先に待っていた。


「どう? ドラゴンいた?」

「いや、発見できない。痕跡すら見当たらない」

「だよね。本当にいるのかな?」


 それから、10分が経った。


「バニが戻ってこないな」


 僕たちは別行動を取り、バニは西に向かったはずだ。


「何かあったのかな?」

「ああ。怪我をしては大変だ。見に行こう」

「……うん。そうだよね」


 といっても、バニが怪我をしたところなんて、見たことないんだよな。

 僕もダンジョンに潜っていると、よく怪我するんだけど。


 ドラゴンに遭遇したんだろうか。

 それでも、彼女なら上手く逃げ切ってるような気がする。


 まあ、心配なことに変わりはない。

 西にまっすぐ歩いていき、バニを探しに行く。


「バニ。どこにいるのー! 無事なら返事をしてー!」


 声を張り上げるが、一向に出てくる様子はない。


「ライド。大丈夫だ。私に任せておけ」


 ミネアが自分の胸をドンと叩いた。

 彼女に秘策があるようだ。


「おーい。バニ。見てみろー。ベーコンレタスサンドだぞー。厚切りベーコンだぞー。食べ応え抜群だぞー」


 食べ物で釣る作戦か。

 しかも、ベーコンを強調。地味にポイントを抑えている。


「早く出てこないと、ライドが食べてしまうぞー」


 何故、僕なんだ。

 僕は別に食いしん坊じゃないぞ。


 でも、バニはイヌやネコとは違う。

 さすがに、こんな呼びかけに応えるわけ――。


「わ――っ! 食べちゃダメ――っ!」


 速攻で食いついてきた。


「私が食べるの――っ!」

「……おい。どこから叫んでるんだ」

「ほんとだ。近くから声が聞こえるのに、姿が見えない」


 僕たちがキョロキョロしてると。

 プシュウウウッ


 すぐそばで、聞き慣れた音がした。

 見ると、彼女が姿を取り戻そうとしている。


「トゥルー・バニッシュ?」


 エフェクトがそっくりだった。

 しかし、僕は魔法を使っていない。というより、消えてる間は声を出せないはず。


「それ君がやったの?」

「うん。私の能力なのー」


 彼女は魔法だから、何をやっても驚かないが。

 固有能力は『自分の姿を消せること』のようだ。

 どうやら、今までモンスターから逃げていたのは、この能力のおかげらしい。


「バニ。自分の姿が消せるなんて凄い特技だな」

「わーい。褒められたー」

「特技って。普通なら、もっと驚くところなんじゃないの?」

「何を言う。ライドだって、ものを消して遊んでいるじゃないか」

「別に遊んでるわけじゃないよ。人聞きが悪いな」 


 で、問題は、彼女が姿を消していた理由だ。


「ドラゴンが怖くて、隠れてたのー」

「ということは、見つけたんだね」

「うん。見つけたー」


 さっそく、案内してもらうことにする。


「ここだよー」


 バニが指し示したのは、洞窟だった。

 中は真っ暗で、いかにも何かいそうな感じがある。


「巣穴ってことだよね」


 バニは頷いた。

 間違いなく、奥に潜んでいる。


「しかし、変ではないか」

「ん? どのあたりが?」

「バニを疑うわけじゃないが、入口が狭すぎる」


 言われてみれば、たしかに。

 大人一人がギリギリ通れるぐらいの大きさしかない。


 ドラゴンが通れるとは、とても思えない。

 でも、目撃証言があったということは、外に出ているということだし。


「なんか、引っ掛かるんだよな。いろいろと」


 よく分からないが、とにかく自分の目で確認してみるしかない。


 僕たちは、洞窟の奥に進んでいく。

 狭い道を通り抜けていくと、ドーム状の広い場所に出てきた。


 二人を残し、僕一人だけが中央へ進んでいく。

 周りをぐるっと見渡してみるが、何も見当たらない。


 上を見ると、天井はわりと高い。

 しかし、何かが貼り付いているということはない。


「ねえ、バニ。ドラゴンはどこにいるの?」


 僕が後ろを向くと、彼女が不安そうな顔をしている。

 今まで見たことない表情なので、さすがの僕も気を引きしめる。


「ライド。下だよー。地面だよー」


 僕はおそるおそる下を見る。

 すると、地面に何かいる。


「……なんだこれ」


 目玉だ。二つの目玉がある。血走っていて、少し濁っている。


 ギョロっと、動いた。

 今、僕と目が合った。

 あまり、考えたくないが、ひょっとして……。


「嘘だよね。まさか、これがドラゴンってこと?」


 その予想は当たっていた。

 ちょうど、僕の足元の地面が赤く変わった。上側には白いものも見える。

 それがドラゴンの口内と気づいたときには、地面が大きく盛り上がっていた。


「シフトオン!」


 高速移動で、なんとか回避する。

 危うく、食べられるところだった。


 そいつは土色をしており、ゴツゴツした岩肌をしていた。

 まさに、僕の知っているドラゴンである。

 だが、こいつは地面の中から出て来た。


「気をつけろ。そのドラゴンはアースドラゴンだ」


 土属性のドラゴンってことか。

 僕は大きく息を吐くと、剣を抜く。


「よし。来いドラゴン! 僕が相手だ!」


 そして、モンスターに切りかかった。

 

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