謎のモンスターと耐性値
「要するに、強いモンスターをぶっ飛ばせばいいんだよね」
いくら倒したところで、ゴブリンでは数千ポイントが関の山。
でかい奴を倒して、一発ドカンと大量ポイント。これで行こう。
「持ってきたぞ」
「ありがとう」
僕はギルドからポイント一覧を借りて、モンスターごとのポイントをチェックすることにした。
スライム:1P
ワイト: 5P
ウルフ: 10P
ゴブリン:20P
ゴブリンは上から4番目だ。これだとやはり弱すぎる。
だが、下の欄に進んでいくほど、モンスターの希少性も高まる。
僕たちがモンスターを探している間にも、ハイル達はポイントを取得しているのだ。
楽に探せて、ポイントも高いのが理想的だ。
「というか、項目がたくさんあるな。モンスターって、こんなに種類がいるんだ」
ページをどんどん捲っていく。
一番下にいるのは、どんなモンスターなんだろう。
「……何これ?」
ちょっと驚いてしまった。
???????:999999P
ポイントがカンストしている。
「無茶苦茶な数字だな」
これがチャレンジハンティングの最強モンスターなんだろう。
どうせ誰も勝てないから、数値なんてどうでもいい。
製作者の気持ちが伝わってくる数字だ。
「ハイル達は54000って言ってたよな」
三日間だから、単純計算で150000。
頑張っても、これの2~3倍ってところだろう。
「なんだ。難しいことを考える必要ないんだ」
この謎のモンスターを倒せれば、僕たちは優勝できるのだ。
「ミネア。こいつだよ。こいつを倒そう」
僕がポイント一覧を見せると、ミネアがため息を吐いた。
「ライドが好きそうなモンスターだな。でも、これは勝つのは無理って意味だと思うぞ」
「勝てる。僕なら余裕だよ」
「そう言うと思っていた。しかし、モンスターの名は謎だ。私にも分からない。この企画が終わるまでは、ギルドも教えてくれないだろう」
「そうだよね。名前が分からなければ、居場所だって分からないよね」
僕は頭を捻った。
「あそこに行ってみようか」
☆ ☆ ☆ ☆
この日も、女神ファルナスは剣を持ち、本を開いている。
そして、僕の方を向いてくれない。
教会の席に座っていると、シスターがこちらへ近づいてきた。
僕は声をかけてみた。
「セリス。こっちだよ。来て」
彼女は仕事中だったのか、面倒くさそうに答えた。
「あのね。ライド。こう見えても、私は情報屋で、色々と秘密を持ちながら生活しているの。フレンドリーにされても困る」
「まあまあ。そんなこと言わずに、僕の隣に座ってよ」
「……もう」
なんだかんだ言いながら、座ってくれるセリス。
僕はポケットに手を突っ込んだ。
今日は彼女のためにプレゼントを用意していたのだ。
「はい。手を出して」
僕が手渡したものを見て、彼女が首を傾げる。
「これは? 何?」
「リフレクトチョーカー。レアアイテムだよ」
僕が賊を倒して、手に入れたものだ。
効果は『魔術反射』。相手の魔法を反射させるというものだ。
でも、レプリカなので、使用回数は1~2回。
どうやら、アンバー戦のときに使い切ってしまったようで、今は効果なし。
ただのチョーカーになってしまっている。
それにモチーフはドクロなので、女性へのプレゼントとしては不気味かも。
「……死にたいの?」
「ごめん。今のは冗談。本当はこれ」
僕は白い花を差し出した。
「ダンジョンで見かけたんだけど、奇麗だったから摘んできたんだ。君に似合うと思ってね」
「……私に似合う」
「君のために、摘んできたんだよ」
「……私のために」
セリスが、ゴホンと咳き込んだ。
「基本は情報一つにつき、3000Gなんだけど」
やはり、何度聞いても情報料金は高い。
「今回は特別に無料にしてあげる」
「ほんと?」
「ええ。なんでも聞いて」
「やったね!」
そんなわけで、僕は質問してみる。
聞きたいことは、もちろん謎のモンスターについてだ。
ポイント一覧を見せただけで、彼女はすぐに答えた。
「ドラゴンよ」
超有名なモンスターだ。
「じゃあ、次は居場所について教えて」
「待って。その前に、あなたドラゴンについて、どこまで知ってるの?」
そう言われても、実際に見たことはないし。
思い浮かぶものとしては……。
トカゲみたいな姿をしており、口から火を吐いたりする。
伝説では、勇者が伝説の剣で首を切り落としていたな。
それをセリスに伝えてみたところ。
「バカなの?」
「……酷いな。僕は冒険者でもないし、モンスターについては専門外なんだよ」
「ドラゴンは強いのよ。その強さから、最強クラスのモンスターと言われている」
まあ、勇者の相手をしているわけだし、強いのだとは思うけど。
「でも、僕はラグエードの一族だからね。僕にかかれば、ドラゴンぐらい」
魔法と剣を使って、ボコボコにしてやればいいだけだ。
「はいはい。では、ラグエード様は、ドラゴンがどうして強いのか分かる?」
「え? それは爪があって、牙があって、ブレスを吐くから」
「そんなモンスターは他にいくらでもいる。ドラゴンの特徴としては、間違っている」
「大きいから。カッコいいから」
「バカなの?」
しかし、僕にはこれぐらいしか思い付かない。
僕が無知だからではなく、これが一般的な知識だと思う。
「ラグエード様、どうしたの? 自慢の知識は披露してくれないの?」
「……ごめん。お手上げだ。答えを教えてよ」
意地の悪いセリスは、肩をすくめた。
「いいわ。教えてあげる。ドラゴンの強さ。それは異常ともいえる耐性の高さにある。物理耐性と魔法耐性。そのどちらも高水準にある。これがどれほど大変なことか。あなたには分かるはずよ」
たしかに、分かる。
モンスターには必ず弱点が存在する。
多少は固い敵でも、魔法に弱い。また、魔法が無効の敵でも、実は物理攻撃には撃たれ弱かったり。
どちらも高くても、火や水などのある属性が異常に効くこともある。
だから、冒険者はパーティーを組む。魔導師や剣士を揃えることで、どんなモンスターが相手でも弱点を分析し、そこを狙い撃ちするためだ。
僕が魔法剣士をやっているのも、同じ理由だ。剣で攻撃し、それが効かなければ魔法を使用する。僕はいつもそうやって、敵との勝負に勝ってきたのだ。
「ドラゴンは弱点のない怪物。そういうことなんだね」
「ええ。ようやく分かってきたようね。けど、それだけじゃない」
彼女は紙とペンを用意し、そこに走り書きした。
「参考までに、ラグエード様の魔法耐性値を書いてみたわ。魔導師のエリートなのだから、魔法耐性は高いはずよね」
ライドの魔法耐性値:600/600
紙に書いてあるのは、僕の耐性値だ。昔、測ったので間違いはない。
「ねえ。なんで、僕の耐性値を知っているの?」
「それはあなたが前に女神ファルナスに告白していたから」
「……さすがに耐性値は言ってないよ」
「そうかしら。まあ、細かいことだから、どうでもいいわよね……それで、あなたはこの耐性値は高いと思う? 低いと思う?」
僕は正直に『高い』と答えた。
一般人の耐性値は100前後。
才能がある人なら、生まれたときから200~300。
僕は才能があるから、200だった。
そして、そこからラグエード家で特訓を積むことで、600にすることができた。
「そうね。さすがラグエード様。高いと思うわ。素質もあるし、努力もしたようね」
「……ふっ。それほどでもあるよ」
「けど、これは人間の話。人間はどれだけ時間をかけても、耐性値は三桁が限界だと言われている」
ドラゴンの魔法耐性値:6000/6000
「平均的なドラゴンの耐性値よ。見れば分かるけど、ラグエード様の10倍ね。これに関して感想は?」
「……ま、まあ、頑張ってる方だね」
「言うまでもないけど、物理耐性値もほとんど同じよ」
4桁か。この耐性値を削り切らないと、ダメージも入れられないんだよな。
仮に耐性を破っても、ドラゴン自体のスタミナもある。
体が大きければ、それだけ耐久力もあるから、倒すのはもっと大変になる。
「ドラゴンを一人で倒せたら、伝説の英雄クラスだと言われているわ。あなたにできるの?」
「それは煽ってるのかな。僕が伝説の英雄になるっていう振りだよね」
「……心配してるんだけど」
でも、僕に逃げるという選択肢はない。
ここまで煽られたのだ。
僕はドラゴンと戦い、そして最後には勝利する。
「はいはい。場所を教えてあげるから、よく聞いてね」
セリスは呆れながらも、ドラゴンの生息地についての情報をくれた。
これを手がかりに、ドラゴンを探してみよう。




