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斧戦士


 斧を持った大男が、テーブルを粉々に吹き飛ばした。

 容赦ない一撃。


 テーブルはすでに机としての機能を失ってしまった。

 もう立ち上がることはできないだろう。


「い、意味不明だ」


 何故、男はテーブルを壊したのか。

 テーブルに恨みでもあったのか。まさか、親でも殺されてしまったのか。


 いや、冗談だ。

 男は僕を狙っていた。

 僕が避けたから、代わりにテーブルが壊れたのだ。


「すげえぜ。まさか、あの不意打ちをかわすとはな」


 男は素直に感心している。

 短く刈り上げた金髪。タンクトップに、長ズボン。

 胸筋が盛り上がっており、非常に勇ましく見える。


 斧は柄が短く、刃の部分が大部分を占めている。

 材質は鋼だから、『鋼の斧』。特殊な効果はついていないと思う。

 斧戦士、アックスファイターという奴か。


「おう。いいねえ。そのツラ。やる気マンマンって顔だ」


「え? 僕とやりあうために、襲ってきたんでしょ?」


 そう言いながら、僕は剣を抜いた。

 魔力を注ぎ、刃を緋色に染めていく。


 アックスファイターは全ての攻撃技にダメージ補正がかかる。

 そのため、とにかく一撃の威力が高いのだと聞いたことがある。

 僕も気を付けなければ、テーブルのように粉々にされてしまう。


「うおおおりゃあっ!」


 男が突っ込んでくる。


「ごおおうはざああん!」


 先ほど、机を壊した技か。

 僕は寸前で、男の攻撃をかわす。


 わざわざパワー自慢と刃を交えるつもりはない。刃こぼれを起こしたら、大変だ。


 ブン!彼の斧が空を切った。

 絵に描いたような全力攻撃。

 しかし、それは攻撃以外を捨てているということ。


 バチバチ! 刃に電撃が走った。


「紫電刃!」


 予想どおり、彼の上半身は隙だらけだ。

 まだ振り下ろした斧が、上がって来ない。

 僕のスピードなら、同時に4発は打ち込める。


 まずは、横なぎに剣を振り抜く。

 ギン! 鈍い音。

 僕の剣が……。


「……切れない」


 奴の肌には触れるが、そこで刃がピタリと止まる。

 力を込めても、前に進まない。

 血も出てこない。攻撃を完全に止められてしまった。


「ふうううん!」


 男が声を出して、力を入れた。

 すると、僕の体が弾かれ、後ろに飛ばされる。


「……ちっ」


 地面に着地し、舌打ちをする。

 彼の体はおそろしく固い。剣の刃をものともしなかった。


「耐性が高いんだな」


 この斧戦士は物理耐性。特に斬撃耐性に優れているのだ。

 そして、僕の剣は属性剣だから、魔法耐性にも優れている。


「まずは物理耐性を破らないと。 奴にダメージは入れられないぞ」

 

 ここで耐性について説明しておこう。


 ???の物理耐性:600/600


 耐性には上のような数値が存在しており、『耐性値』と呼ばれている。

 この耐性値を0にすることで、相手にダメージを与えるのだ。


 ???の物理耐性:400/600


 僕が物理攻撃をすると、耐性値は減少していく。


 ???の物理耐性:500/600


 しかし、時間が経つと、数値が回復していく。

 回復量はかなり早い。だいたい数分も経てば、全快してしまう。 


 そのため、物理耐性を破るには。


 とにかく、攻撃を繰り返して、耐性値を徐々に削っていく。

 超ダメージを与えて、耐性値を一気に削り切る。


 と言ったやり方が効果的。


 もちろん、別の属性で攻撃してもいい。

 例えば、僕なら魔法を連発するという攻略法もある。


「まあ、僕は魔導師だし、魔法で行くか」


 バチバチ! 右手に魔力を溜め込んでいく。


「シフトオン!」


 呪文を唱え、高速移動。


「はええっ! すげえスピードだ」


 男が【シフト・クイン】を見て、興奮している。

 だが、僕の動きにはきちんと反応している。

 目が良いな。これはやりにくい。


「シフトオン!」


 さらに、魔法を使い、彼の後ろに周り込む。

 そして、相手に右手をかざした。


「スパーク!」 


 雷鳴がとどろいた。稲妻を帯びた球体が、男へ向けて発射される。


「ふううん!」


 男は僕に向き直ると、力任せに斧を振り下ろした。

 たしかに凄い勢いだが、スパークが迫っている。

 どうするつもりなんだ。


「ごおおおうはざああん!」

「……え?」


 こいつ、僕の魔法を切るつもりなのか。

 特殊効果がついた武器なら分かるけど、それ鋼の斧だよね?


「ふああああうっ!」


 彼の斧が、僕の『スパーク』を一刀両断。

 二つに割れた球体は、その場で大爆発を起こした。

 ドカ――ンッ! 


「……」


 僕は言葉を失った。


 得意魔法が鋼の斧に切られる。間近で見ると、辛いものがあるな。

 でも、男は斧を使った。しかも、技を使用した。


 ということは、耐性では受けきれないのだ。

 僕の魔法を破るには、斧の使用が不可欠。


「それなら、斧を使わせないようにしよう」


 僕は地面を蹴って、距離を詰めていく。


「ごおおおうはざああん!」


 また、その技か。

 そろそろ、しつこくなってきた。


「シフトオン!」


 呪文を唱える。突然、スピードを変えることで相手を翻弄。

 いわゆるチェンジ・オブ・ペースの要領で、相手の足元へ滑り込む。


「……よし!」


 男の右足に、矢印を貼り付けた。

 すぐに立ち上がり、自分の手に魔力を溜め込む。


「シフトオン!」


 魔法の対象は、相手の右足だ。

 ズズズズと地面を滑るように、男の靴が移動を始める。


「なんだこりゃ……足が勝手に……」


 右足だけが直進したせいで、男が大きくバランスを崩し、すっ転ぶ。

 さすがに寝ころんだ状態では、斧は使えないだろう。


 バチバチ! 僕の手に、電気が走った。

 相手の腹に両手を構え、呪文を唱える。


「スパーク!」


 あまり使わないが、ゼロ距離での『スパーク』。

 密着して直接流しているのだ。

 どうやったって、回避はできない。


「ぐああああああっ!」


 男が身もだえ、その体が痙攣を起こす。

 よし。効いてる。耐性を破り、相手にダメージを与えている。

 今、彼の身体には電流が駆け巡っているはずだ。


 それから、だいたい10秒ほど経ち。


「……」


 溜め込んだ魔力を使い切った。

 僕は後ろにさがって、距離を取る。

 どうだ。立てるか……。


「……ぐう。やるな。今のは効いたぜ」


 男は立ち上がった。

 服が破れ、体から蒸気が立ちのぼっている。

 電熱のせいか、ところどころ火傷の痕もできる。


 しかし、その口角はつり上がっていた。


「燃えてきた」


 どうやら、僕は男の闘志に火をつけてしまったようだ。

 男は服をビリビリに引き裂くと、僕に宣言した。


「奥の手を使っとくか。俺の秘技『ウォークライ』を見せてやる」


 聞いたことがある。一定時間、攻撃力を倍化させる技だ。


「うおおおっ! ウォークライ! 発動!」


 男の体から、オーラのようなものが立ちのぼった。

 体についていた傷が、みるみるうちに消えていく。

 彼の身体が活性化し、力がみなぎっていくのが分かる。


 その姿を見て、僕も笑みを浮かべた。

 やばい。楽しくなってきた。


「面白い。ウォークライか。この僕――ライド・ラグエードが攻略してやろう」


 僕は剣を突きつけた。


 だが、そのとき―-。


「ちょっと待ったああああっ!」


 酒場中に、声が響き渡った。


 見ると、ミネアが立っていた。

 戻って来たのか。


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