第27話 元に戻れた?
僕とミレルは助けてくれたタイザンさんとリーフレットさんと共に旅館へと足を運んでいた。
その旅館の名は朱雀館。
赤レンガが印象的な立派な旅館だった。
宿泊費はタイザンさん達が出してくれると言うので申し訳なく思いながらも、僕の身に起きた信じられない状況を何とかするためにも二人から離れる訳にはいかないもん。
「四名様ですね、部屋割はどうなさいますか?」
受け付けで部屋割りを尋ねられ、ペアで泊まる旨を伝える。
「分かりました。 ではお部屋に案内させましょう。 イーヒッヒッヒ……」
な、何だか凄い笑い方をする人だな。
どうやら支配人みたいだけど衝撃的な笑い声に驚きを隠せない僕達。
旅館の係りの男性に部屋へと案内して貰ってホッとする。
漸く落ち着いて休めるからね。
「マオの胸…… 私より大きくない?」
でも係りの男性が案内された部屋を出るなりミレルさんがポツリと呟く。
確かにそうかも知れないけど肯定する訳にもいかず、ブンブンと首を振る僕。
「そんな事はないよ! ミレルの方が大きいし、柔らかいから!」
ううっ、僕は一体何を言ってるんだろう。
世界樹の露の力で女の子になっちゃった僕を何か言いたそうな表情のミレルが見詰めている。
結婚の約束までしたのに同性同士じゃ、絶対に無理だもの。
そんな僕達の隣の部屋に泊まる事になったタイザンさんとリーフレットさんが僕達の部屋へとやって来る。
「リーフレットさん、何か元に戻る手段は無いんですか? このままじゃ困るんですけど……」
僕達の明るい未来のためにも何とかして貰わなくちゃならないよ。
多分、もう一度同じように世界樹の露を使えば元にだって戻れる筈だ。
「んもう…… 残り少ないから極力使いたくはないのだけれど仕方ないわね」
この状況を作ったのは貴女なんですけど……
余計な事は考えるなって言い忘れたりせずにいてくれていれば僕は女の子になったりせず、ミレルも助かったんだから。
リーフレットさんが胸元からボトルネックレスを取り出そうとした瞬間、僕の身体が淡い光を放つ。
「えっ、これって一体……」
「マオ! 大丈夫なの?」
心配そうな声で僕を呼びながら駆け寄って来てくれたミレルが足を止める。
「マオ…… 胸が無くなってる。 元に戻ったみたいよ!」
ミレルの言う通り、僕の豊満な胸は無くなり、ただの胸板に戻っていた。
慌てて股間に手をやる僕。
「うん、大丈夫だ。 ちゃんと付いてる」
消え去ってしまった筈のモノがしっかりと存在していた。
一時的な効果だったのかな?
とにかく僕は無事に男に戻れたみたい。
「良かったわ。 どうやらコレを使わなくても良さそうね」
そう言いながら胸元から取り出したボトルネックレスを再び仕舞うリーフレットさん。
タイザンさんも軽く溜め息を吐く。
何はともあれ、これで万事解決だ。
「どうやら日も暮れたようじゃな。 さて、問題も解決したようじゃし我らは部屋に戻るかの。 二人っきりで話したい事もあろうて」
タイザンさんの言葉に僕を見てニヤリとした笑みを浮かべたリーフレットさん。
なんか…… 恥ずかしいんだけど。
「そうね、行きましょうダーリン。 私だって二人っきりになりたいわ」
そんな甘い言葉で語りかけながらタイザンさんへと寄り添うリーフレットさん。
でも見た目はお爺さんと孫だから物凄い違和感を感じる。
そして二人が出て行くと僕とミレルが取り残された。
「良かったわ…… あの不思議な力のせいだったのね。 強い薬って言うのは毒にもなるの」
看護兵のミレルらしい意見かな。
確かに麻酔薬も多く使い過ぎると死んじゃうって聞いた事がある。
「ミレル……」
「マオ……」
窮地を乗り越えた僕達が熱く愛し合ったのは言うまでもなかった。
う〜ん…… 小鳥のさえずりが聞こえる。
カーテン越しに朝日が差し込んでいる寝室で僕は目を覚ます。
首を少し傾ければ僕の胸に寄りかかるようにして眠るミレルの寝顔が見え…… ない!
見えるの白い肌の大きな双丘。
「ええっ! どうして元に戻ってるの?」
またしても女の子になっている僕の身体。
どうして…… 確かに男の身体に戻ってた筈なのに。
「うう〜ん…… どうしたのよ、マオ……」
微睡みながら目覚めたミレルの頬に触れる僕の大きな胸。
無言で数回ムニムニと揉んだミレルが勢い良く起き上がる。
「また女の子になってるじゃないの!」
ミレルが驚くのも無理は無いよ。
でも僕だって驚いてるんだから。
急いで服を着てタイザンさん達の部屋に行ったんだけど姿は見えなかった。
もしかしてと思って受け付けで確認すると朝早くに料金を払って出で行ったらしい。
「老人は朝が早いんじゃよ」とか言ってたみたいだけど、何処に行っちゃっだろう。
とにかく探さなきゃ!
でも…… また襲われる可能性もあるから、あんまり派手に動けないし。
そんな僕達はタイザンさん達を探して王都の各所を走り回ったけど、夕方になっても結局見つける事は出来なかった。
もう王都にはいないのかな?
一体…… 僕はどうすればいいんだろう。
記憶喪失に性転換…… なんだかロクな事がない。




