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女騎士は男の娘  作者: 池田 真奈
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第19話 恋に落ちた瞬間

「お姉ちゃん…… 辺りには人は居なそうです。 今なら大丈夫なんじゃないですか?」


国境沿いの川までやって来た僕とミレルさんは渡河するタイミングを見計らっていた。

何処で誰に聞かれているか分からないから、常にエリーとマリーの姉妹を演じ続けていた僕達は今では誰が見ても姉妹のような息の合った掛け合いが出来るまでになっている。

既に夜も更けて夜空には大きな月が優しげな光を放ち僕達を照らす。

松明を灯す事が出来ないから、その明るさが僕達の行く手を照らす唯一の明かりになる。


「もう少しだけ待ちましょう。 ここが正念場なんだから…… この川さえ渡れば追っ手に捕まる心配は無いわ」


明るい内に探しておいた倒木に捕まって川を渡る計画だけど、夜になり水温もかなり下がっているから長時間の入水になると厳しいかも。


「うん…… 上手く行くって信じてる」


予想通りアクバル帝国の追っ手は街道沿いの宿場町に現れていたけど、僕達が西に逃げたとは思っていなかったのか執拗に探す感じはしていなかった。

どうせいないだろうけど、取り敢えず任務だから探してるくらいな適当な印象を受けた。

だからと言って気を抜く訳にはいかない。

僕達の命がかかっているんだもん。

暫くすると話し声が聞こえて来る。


「さっさと見廻りを終わらせて暖まろうぜ。 夜になれば肌寒くなって来たからな」


「そうだな、一杯くらいは構わんだろ。 そう言えば昼に帝都から何やら部隊が来てたみたいだが何か聞いてるか? 今頃は村での接待を受けてる筈だが…… 羨ましいぜ」


それって僕達の追っ手だと思う……

僕はミレルさんと目を合わせて互いに頷く。

さっきのタイミングで渡河を始めてたら気付かれていたかも知れない。

やっぱりミレルさんって凄く頼りになるな。

一緒に居てくれて良かったって心の底から思う。


「何だよ、お前聞いて無かったのかよ。 引き継ぎじゃウルスラ王国の兵を探しているそうだったが検討違いだろ。 全く方向が逆だぜ」


「今日は少し遅刻しちまったからな。 そうか…… そんな訳があったのか。 まぁ、俺達には関係ねぇよ…… さっきと帰ろぜ。 今夜も異常無し!ってな」


この兵士…… やる気が無いな。

お陰で僕達は助かるけどね。

帝国軍は堅いイメージがあったんだけど、全てがそうじゃないって事か。

笑い声を辺りには響かせながら二人が去って行き、辺りには再び静寂が戻る。


「ふぅ…… これで暫くは見廻りも無いわ。 渡るなら今の内ね。 マリーも早く脱いで準備をして」


そう言いながら徐に服を脱ぎ始め、下着姿になるミレルさん。

細っそりしてはいないけど逆に肉感的に見えてドキドキが止まらない。

ううっ、僕が脱いだら女性の下着姿だった。

もう既にミレルさんには何度も見られてるけど今はちょっと見られたくない…… 理由は悲しい生理現象です。

前屈みになりながら脱いだ服で隠しておいた。

どうかミレルさんには気付かれませんようにと思いながらチラッと横目で見るとニヤリとした顔で僕を見てるんですけど。

多分…… 気付かれてる。


「マリーは向こうを持って。 そのまま川に入るわよ」


僕とミレルさんが流木数本をロープで縛った即席の筏を手に川へと足を踏み入れる。


「ううっ、思ったより水が冷たい。 長時間浸かったら風邪を引いちゃいそうだね」


冷たい川の水のお陰で僕の股間はすぐに縮み上がって行く。

ちょっとホッとしたなんて言えやしない。


「そうね、なるべく早く渡りましょう。 荷物は濡らさないように気を付けて、渡った後に濡れた服を着たくはないでしょう?」


確かにそうかも、筏の上に荷物を置いて濡らさないように気を付けながら川を渡る僕とミレルさん。

秋めいて来ている季節柄なだけに結構キツイものがある。


「ほらっ、しっかり! 男の子でしょ」


身体が冷えて来て足が止まり、筏の方向が何度も曲がってしまい、その度にミレルさんから励まされる。

早く渡り切ろうと僕達は必死に、でも音を立てないように慎重に筏を押しながら泳ぐ。

そして多少は下流に流されながらも無事に渡河を終える事に成功する。


「どうやら此方側にも見張りはいないみたい。 何処か身体を温められる場所を探しましょう」


タオルで身体を拭いて服は着たけど身体は完全に冷え切っていた。

近くに漁師小屋でもあれば良かったんだけど、そう都合良くある筈も無い。


「お姉ちゃん、あそこに洞窟みたいなのがあるけど…… あそこじゃダメかな」


洞窟と言うより窪みかな…… 奥行きはあまり無いけど夜露くらいは避けられそう。


「そうね、風除けにもなるし丁度良いわ。 早く火を焚いて温まりましょう」


急いで枯れ草や枯れ木を集めて火をつける。

暖かな焚き火に手を当てながら漸くホッとする事が出来た。

焚き火の傍に腰を下ろして並んで座る僕達。

冷えた身体を温め易いように自然と肩を寄せ合っていた。

焚き火の灯りに照らされるミレルさんの優しげな顔に見惚れていると、それに気付いた彼女と見詰め合う形になる。


「ミレルさん……」「マオ……」


見詰め合う二人の顔がゆっくりと近付いて行き、どちらからともなく唇を合わせたのも自然な流れだった。

パチパチと枯れ木が爆ぜる音だけが辺りに響く中、僕達は恋に落ちていた。




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