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女騎士は男の娘  作者: 池田 真奈
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第12話 いざ、出陣!

既に国境沿いにある砦を包囲したアクバル帝国軍を討つべくウルスラ王国軍も準備に追われていた。

既に王国兵団と王国騎士団の一部の部隊は出陣したらしい。

僕達ウルスラ百合騎士団は王国軍本隊の先陣を務める大任を命じられ皆の士気も高い。

でもそれは華やかな百合騎士団を前面に押し立てて王国軍の戦意高揚を目的としただけで攻撃戦力としては見ていないと思う。


「アリエル、僕は必ず生きて戻って来る。 だから信じて待っていて欲しい。 それと昨日はありがとう…… 君のお陰でミオが戦場に駆り出されなくて済んだから」


昨日は出陣の準備に追われちゃってアリエルとゆっくり話す暇も無かった。

当然ながらミオとも話せていない。

嫌われちゃったかも知れないと思うと悲しくなるけどミオが戦場に行くよりは良いと思い直す。


「ええ、マオを信じて待っていますわ。 貴方の親友としてだけではなく、未来の妻として……」


未来の妻…… アリエルが本気で僕を思ってくれても彼女の周囲がそれを許す筈も無い。

公爵令嬢って地位は平民の僕とは天と地くらいの開きがあるんだもん。

一緒になるなら他の国にでも駆け落ちでもしない限り無理だと思う。

もしくは僕が貴族にでもなれれば違うだろうけど平民生まれの身分は、そう簡単には覆す事は出来ない。

白百合の騎士になれたとしても…… それは女の僕であって、アリエルと結婚出来る立場じゃない。


「うん…… 手柄を立てて君に見合う騎士になるよ。 それとミオの事は宜しくね。 きっと僕に裏切られたって傷付いている筈だから……」


あれから話もしてないけど、このまま言葉も交わさないまま出陣する事になるかも知れないし。

さっきミオの部屋に行ってみたけど居ないようだったし、ジュリアに聞いても行き先は分からないって言われていた。


「ええ、ミオさんもマオの思いには気付いている筈ですわ。 でも素直に受け止められない筈ですの。 私はマオが男性だと知ってしまったから、私やミオさんを戦場に送りたくないと言う思いは理解出来ますけどミオさんは知りませんもの」


僕を同性の親友だと思ってるもん。

それなのに何故自分は残らなきゃならないのか、そんなに足手まといなのか…… そう思って今も落ち込んでるのかな。

戦場に向かう僕にとって悔いが残る。






「今回の戦いには挑む者と残る者がいるけど、皆の気持ちは同じよ。 栄えあるウルスラ王国の勝利を信じて百合騎士団の名に恥じぬ戦いをして来るつもりよ。 誰一人欠ける事無く勝利を手に、またこの場所に帰還する事を願ってる……」


百合騎士団員が本部前に整列してエレナ団長の話を聞いていた。

美しい女性達が白銀に輝く鎧を身に纏い、まるで絵画に描かれている戦乙女のようにも見える。

その中に僕も立っていた。

従騎士の僕は簡易的になるけど皆と同じ白銀に輝く部分鎧を身に着けて百合騎士団らしい姿に変わっている。

そして僕の横にはアリエルがいて白百合が描かれた旗を握り締めながら出陣の時を待っていた。


「エレナ、出陣の時間だ。 号令を!」


マリアナ副団長がエレナ団長に促す。


「百合騎士団、出陣! 絶対に勝って、全員生きて戻るわよ!」


「「「おおっ!」」」


エレナ団長の掛け声に皆が応える。

皆が百合騎士団の勝利を信じて。


「マオ…… 無事の帰りを信じてますわ」


騎乗した僕にアリエルが百合騎士団の旗を手渡してくれる。

その青い瞳からは涙が溢れていた。


「行って来ます、アリエル」


旗を受け取りながらさり気なく互いに手を握り締めて別れを惜しむ。


「さぁ、マオ。 私達の旗を掲げて! 君は常に私の横にいなさい。 その旗は私が生きて戦っている合図にもなるのだから」


エレナ団長の命を受けて僕は百合騎士団の旗を高く掲げる。

そう言えば僕はエレナ団長からマオちゃんではなく、マオって呼ばれるようになっていた。

少しは信頼して貰えたって事かな?


「はい! この命にかけても百合騎士団の旗は地に着けないと誓います」


マリアナ副団長が僕の反対側に位置して僕と二人でエレナ団長を挟む形で進み出す。

宿舎の方をチラッと見ればジュリアと一緒に並んで立つジュリエッタが祈るように手を組んで僕を見送ってくれていた。

やっぱりミオの姿は無いか……


「やっぱり百合騎士団は華やかなだな〜」

「キャア〜 マリアナ様ぁ!」

「やっぱりエレナ団長、可愛いぜ!」

「旗持ちの子も中々だぞ、アレは誰だよ?」


王都の街中を進む僕達に住民達の声が聞こえて来る。

やっぱり人気は高いみたい。

僕の話までされちゃってるし…… 何だかとっても恥ずかしい。


「あの中で何人が生きて戻って来られるのかね、あんな美人が勿体ねぇよな」

「違いねぇ、一人くれねぇかな?」


そんな声も聞こえて来るのも承知の上だ。


「マオ!」


急に名を呼ばれて横を向くと、そこにはミオがいて馬の歩みに合わせて一緒に歩きながら付いて来る。


「ミオ…… ごめんね。 でも僕は君に……」


「もういいの。 やっぱり変な感じのまま出陣させたく無かったから…… 生きて戻って来て! それが出来たら許してあげる」


最後まで言わせて貰えなかったけど、生きて帰ったら謝らせてくれるんだね。

ぎこちない笑みだけど、ミオは笑って僕を送り出してくれた。

なら…… 僕は絶対に生きて帰らなきゃ!



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