#042「二十年後」
舞台は、正門と教室。
登場人物は、山崎、吉原、渡部、朝丘の四人。
「吉原、久し振り」
「久し振りだね、山崎くん」
「卒業してから、かれこれ二十年だな」
「情報端末を携帯することが当たり前になったり、肉体作業の大半はロボットが代行するようになったり、日本の人口の三割強が七十五歳以上になったり、世の中、すいぶん様変わりしたよね」
「吉原は市役所のシステム・マスターで、渡部はプライム・ロウヤーだもんな。日夜つなぎを着て真っ黒になってる俺とは、雲泥の差だ」
「自動運転車の整備だって、交通を支える立派な仕事だよ。――あ! 渡部くんだ」
「ご無沙汰申し上げてます。遅くなりました。生体認証の誤作動するトラブルに巻き込まれてしまっていたものですから」
「気にするなよ。俺たちも、いま来たところだから」
「そうそう」
「お二人が良いのでしたら、それで良いのですが。――時間が勿体無いので、中に入りましょう」
*
「生身で会うのは久し振りだな、渡部」
「お久し振りです、朝丘さん。いつもは、画面越しですからね」
「とても夫婦の会話とは思えない。なっ、吉原」
「そうだね、山崎くん。苗字で呼び合ってるは、やっぱり変だよ」
「旧姓で教師をしてるし、名前の読みが同じだから仕方ない」
「それに、真鍋先生や堀先生からすれば、朝丘さんは朝丘くんですからね」
「そういえば、あの二人は、まだここで働いてるんだったな」
「森先生は、堀先生と結婚を機に辞められたけど、他の教職員の方々は?」
「転任した人は知らないが、三好、武藤、辺野古の三名は定年退職で、小笠原先生は病没だ」
「亡くなられたのは、三年ほど前でしたね」
「あの数学の変人は亡くなったのか」
「それは知らなかった」
「教職員の訃報なんて、担任でもなければ、いちいち卒業生に連絡しないからな」
「個人情報保護が厳格になってますからね。――教職員といえば、源田さんと杉並さんが、こちらでお勤めだという話でしたね」
「誰だっけ、その二人?」
「覚えてない? 在学中に一度、かくれんぼをしたじゃないか」
「そのときに、山崎の弟が連れてきた二人だ」
「源田さんが芸術で、杉並さんが理科を教えられてるんですよ」
「あぁ、思い出した。源田が美術部長で、杉並が園芸部長だったな」
「忘れっぽさは、相変わらずみたいだね」




