#043「六ヶ月後」
舞台は、教室。
登場人物は、優一郎、朝丘、山崎、吉原、渡部の五人。
「朝丘先生」
「どうした、優?」
「あっ。その子が優さんですか」
「誰なんだ?」
「どこかで見覚えがあるような」
「あの。お忙しいのは分かるのですが」
「込み入った話がありそうだな。――悪いが、席を外させてもらう」
「ごゆっくり、どうぞ。……ご存知ないかと思いますので、私から説明しますね。そうはいっても、私も朝丘さんからの又聞きでしかありませんが」
「正確さは二の次だ。知ってる範囲で充分だから、前置きを飛ばして、手っ取り早く教えてくれ」
「せっかちだね、山崎くん」
「堀先生と森先生のあいだには、優一郎くんというお子さんがいまして、この高校に在学中なんです。こう言えば、言いたいことが伝わりますね?」
「生徒の正体は、よく分かった」
「道理で、二人の面影があるはずだ」
「それで、今年度から朝丘さんが担任になったんです。身体は男性、心は女性で、恋愛対象は女性という事情が判明しましてね」
「朝丘を反転させたような生徒だな」
「いつの時代にも、一人は居るものなんだね」
*
「わざわざ直接会いに、せっかく学校まで来てくれたのに、慌しくなってしまって済まない。せめて、正門まで送ろう」
「ここで良いって。俺たちだって、朝丘が仕事を休めないのを承知で来たんだ」
「こっちこそ、職場に押し掛けてしまって悪かったよ」
「また今度、ゆっくりお話しましょう」
「あぁ。今度に会うときは、学校以外の場所が良い」
「そうだな。聡司に言って、店を貸切にしてもらおうか。ついでに敦史兄ちゃんも呼んでやらんとな。エマージェンシーで来れないくせに、声を掛けないと怒るんだよなぁ」
「あの店には、いろいろと思い出があるよね」
「そうですね。私も、姉と愛実を誘ってみます」
「独り身で個人事業を営む清美さんは、フット・ワークが軽いから来られるだろうが、愛実さんは、出て来られるのか?」
「訳ありなのか?」
「あれ? 山崎くんは、渡部くんの妹さんの挙式に招待されてなかったっけ?」
「ごめんなさい。仲間外れにするつもりは無かったんですけど、連絡しないよう言われてまして」
「旦那が、いまどき珍しいくらい旧弊な家柄の人間なんだ。自分も、向こうの親戚から来ないように釘を刺された」
「不自由なものだな」
「桁違いの大富豪だから、経済的には苦労してないんだろうけど」
「全てを承知の上で、愛実自身で決めたことですから」
「そのへんの積もる話は、また今度にしよう」
「そうだな。今度は、いつが良いだろう?」
「また二十年後、では長すぎるよね」
「半年後くらいが、ちょうど良いのではありませんか?」
「そうだな。桜の季節に、また会おうぜ」
「そうしよう」
「僕も、賛成」
「それでは朝丘さん。この次に会うまで、お元気で」
「三人とも、また半年後に」
「またな」
「またね」




