#041「卒業祝典」
舞台は、廊下。
登場人物は、源田、杉並、渡部、吉原、朝丘、山崎、明子、遥海、森、堀の十人。
「一組のピンクの花は、桜と何?」
「海棠」
「二組の薄紫の花は?」
「沈丁花と蓮華草」
「三組の黄色い花は、山吹と」
「アカシア」
「四組の青紫の花は、杜若だよね?」
「そう。あとでムスリカも追加する」
「五組には白い花があったけど?」
「雪柳と花水木」
「クラスごとに色の違う花を置くっていうのは、なかなか洒落たアイデアだね」
「気付く人がいるかは、分からないけどね。それより、昇降口の黒板に描かれた絵は凄いね」
「それほどでもないよ。白だけしか使えなかったから、あまり凝った絵が描けなかったんだ」
「胸に花をつけた卒業生、卒業証書、満開の桜の樹、誰もいない教室。充分、凝った絵だと思うよ」
「吉原さんは、地元の市立大学に進学されるんですね」
「実家から通える公立大学じゃなければ、学費も生活費も出さないって言われてね」
「アルバイト代だけでは、とても私学に通えない」
「通学どころか、一人暮らしを成立させるだけでも手一杯になりそうだな」
「朝丘さんも、地元の県立大学に進学されるんですよね?」
「最後まで、志望校選びに苦戦してたよね」
「いろいろ悩んだんだが、教師になろうかと思ってな。大変なのは承知だ」
「俺は進学しないけど、応援してるからな」
「博巳」
「こっち、こっち」
「えっ、どうして、ここに?」
「女性が、渡部くんによく似てるところと」
「男性の、渡部への接しかたから鑑みるに」
「渡部の両親と考えて、間違い無さそうだな」
「フフッ。ご名答。博巳の母の、明子です」
「遥かな海を渡る男、参上」
「父の名前が遥海なんです。――愛実の卒業式に行く予定ではなかったんですか?」
「妹さんも、今日が卒業式なんだ」
「四月から高校生か」
「渡部は、母親似だな」
「愛実のほうは、清美がいるから大丈夫よ。――三人とも、わたしに似てしまって。遥海さんの長身でダンディーな遺伝子は、どこへ行ってしまったんでしょうね?」
「合唱の伴奏をするというなら、事前に知らせてくれても良さそうなものだがな。――娘の清美や愛実は、ともかく。息子の博巳の身体には、立派な」
「ストップ。それ以上は言わせません」
「渡部くん、顔が真っ赤だよ」
「ここまで照れる姿は、初めて見たな」
「最後に、面白いものが見られたな」
「あらあら。わたしたちの前と、それ以外の場合では、どうやら態度が違うようね」
「甘えん坊だからな、博巳は」
「二組の皆さん」
「僕が写真を撮るから、集まって」
「さぁ。早く、教室へ行きましょう」
「わぁ。押さないでよ、渡部くん」
「隠さなくても良いだろう、渡部?」
「案外、恥ずかしがり屋なんだな。アハハ」




