#026「朱三黒一」
舞台は、渡部家。
登場人物は、清美、渡部、愛実、朝丘の四人。
「冷蔵庫に、焼きそばと焼き鳥があるんだけど?」
「昨夜のお祭りで買ったんです。二つずつ買ったら、量が多かったものですから」
「一つを半分ずつ食べて、残りを持って帰って来たわけね。お姉ちゃんと食べても良い?」
「どうぞ」
「それじゃあ、二人で頂きましょうか。愛実、お皿を持ってきて」
「私には聞かないんですね。まぁ、差し上げますけど」
「この金魚は? ――はい、お皿」
「自分と渡部で救ってきた」
「黒が四匹で、朱は、五、六、七匹ってところね。ずいぶん、たくさん掬えたのね。――好きなほうを取りなさい」
「朱の一匹以外は、どれも朝丘さんが救った金魚ですよ」
「このガラスも、役目が出来たわね。――愛実は、こっちにする。いただきます」
「金魚鉢にしては、高級感がありすぎる気がするのだが、本来は何に使うものなんだ?」
「元は、ランプ・シェードだったのよ。――いただきます」
「引越しの荷造り作業の途中で、父が土台を破損してしまいましてね」
「買った本人が壊したから、何も言えないわよね」
「使う向きが上下が逆で、使う温度の高低も逆だな」
「ガレのだって言ってたけど、本当だったのかしら?」
「仮にガレのだとしても、大量生産品だと思いますよ」
「ガレは贋物が多いもんね」
「ガレ?」
「エミール・ガレ」
「十九世紀後半にフランスで活躍した、ガラス工芸家です」
「骨董品の鑑定番組で、ガレの花瓶を持ってくる依頼人は多いけど、ほとんどは模造品なのよ」
「へぇ。骨董なんて、自分には雲の上の世界の話だと思っていた」
「よくある誤解ね。――ごちそうさま」
「意外と身近に眠っているものなんですよ」
「でも、一つの掘り出し物の裏には、千の贋物があるのよ。――ごちそうさま」
「富籤よりは当たる確率は高そうだが、いかんせん、桁違いに単価が大きすぎる」
「さて。おなかも膨れたことですし、今度は、これで遊びましょう」
「恒例ですね」
「このゲームは面白いし、盛り上がるもんね」
「何だ、このカードは? 単語が書かれているようだが」
「まずは、裏向けた状態で、テーブルに並べるの」
「並べられた中から三枚選んで、そこに書かれた単語をキー・ワードに入れた話を、即興で作っていきます。一人ずつ、時計回りに答えて行き、順番が来た人以外は、面白かったかどうかを判定します」
「無茶苦茶でも、すべらなかったら合格だからね」
「たとえ荒唐無稽でも、つまらない話でなければ良いのか」
「普通は、これだけのルールなんだけど」
「また、あのルールで遊ぶのですか?」
「やっぱり、罰ゲームもないとね」
「何をやらされるんだ?」
「身構えなくても大丈夫。面白味に欠ける場合は、罰として、このワインを飲んでもらいます」
「何も、ボトル一本空ける訳ではありませんので、ご安心を。一回につき、ショット・グラス一杯だけです」
「でも、無理はしないでね?」
「おいおい。両親がバカンスに行っているのを良いことに、羽目を外して、やりたい放題だな。未成年だろう?」
「あら。お父さんがいたら、ショット・グラスじゃ済まないわよ?」
「高校生以上はロック・グラスから、と言ってますものね」
「限界を知っておけば、飲み過ぎないのよ」
「何を考えているのやら。住む世界が違いすぎて、理解できない」




