#024「洋装和装」
舞台は、渡部家。
登場人物は、朝丘、渡部、清美、愛実の四人。
「嵌めたな、渡部。笑うな」
「フフッ。人聞きの悪いことを言わないでくださいよ、朝丘さん」
「スリムで、筋肉質で、その身長でしょう?」
「活かさない手はないよね、お姉ちゃん」
「何着あるんだ? 自分は、着せ替え人形じゃない」
「そのうち飽きますから、付き合ってあげてください」
「今度は、クールにマニッシュでまとめるわ」
「まず、ボトムスは、これっ」
「おっ。いま穿いてるスカートよりは、格段に良いな」
「乗ってきましたね」
「香山さんより、バーバラさん寄りだもの。こっち系のほうが似合うに決まってるわ。ジャケットは、このレザーかしら?」
「格好良くしてあげるからね」
「エアコンの効いた部屋で、長袖の革ジャンか」
「地球には優しくありませんけど、お洒落を楽しむためには、致しかたありませんね」
「さて。本題の浴衣選びに移りましょう」
「待て、渡部。これでは、選べない」
「目移りしますよね」
「そういうことじゃない。何のつもりだ?」
「これは、朝顔。これは、撫子。こちらは、金魚です」
「虎とか、龍とかは無いのか?」
「笹、麻の葉、刺し子、井桁」
「そうそう。そういう柄が良い」
「いえ。例として挙げたまでですよ」
「ぬか喜びさせるな」
「紫陽花、牡丹、芍薬。燕や蝶の柄もありますよ?」
「渡部。これから、夏祭りに行くんだよな?」
「そうですよ。そのための晴れ着です。あっ、巾着や足袋もありますよ」
「小物の心配じゃない。自分は、女物を着たくない」
「でも、先程の渡部・コレクションでは、満更でもない感じでしたよね?」
「拒否権を行使する暇も無く、勝手にモデルにされただけだ。それに、そのまま外を出歩いた訳じゃない」
「抵抗があるんですね。お祭りの日の女装だと思っても駄目ですか?」
「嫌だ。渡部だって、嫌だろう?」
「身も心も男性ですからね。でも、もし仮に、私が、ここにある浴衣を着るのなら、朝丘さんも着ますか?」
「渡部が着たら、自分も大人しく着よう。どうだ?」
「良いですよ」
「ヘッ? 渡部、正気か?」
「私が着たら、朝丘さんも着るんですよ。約束ですからね」
「売り言葉に買い言葉で、そう安請け合いするなって」
「いまさら尻込みしても遅いですよ。それこそ、あとの祭りです。こちらは断らずに、そちらの要求を呑んだのですから、取り消しなしで、お願いします。その代わり、柄は私が選びますよ?」
「えぇい、乗りかかった船だ」
「この二つにしますね。朝丘さんは、こちらです」
「何で、この柄を?」
「菖蒲、蜻蛉なら、向かうところ敵なしですから」




