#020「得意満面」
舞台は、寮の自室。
登場人物は、朝丘、吉原、渡部、山崎の四人。
「吉原と渡部の友好が回復したのは、喜ばしいことだが」
「大事なことを忘れてたね」
「三人でフォローしますから、一緒に乗り切りましょう」
「本番に間に合うか?」
「間に合わせるんだ」
「ほら、ペン・ケースとノートを用意して」
「時間の掛かりそうな教科と、先に試験がある科目から進めましょう」
「テストの日程は?」
「一日目が、社会二科目と家庭」
「二日目が、数学二科目。試験時間は、五十分ずつではなくて、八十分ずつだよ。三日目が、国語二科目と保健」
「四日目が、英語二科目。これも数学と同様に、試験時間が八十分ずつです。五日目は、理科二科目と情報です」
「そうだ。今年度から、大学入試を模した形になってるんだった」
「副教科は、入試に出ないがな」
「体育、音楽、美術は、実技だけだし」
「とりあえず、数学から取り掛かりましょうか」
「微分、積分、導関数、接線、極値、方程式、不等式、面積、体積。あぁ、駄目。眩暈がしてきた」
「シャキッとしろ」
「数学は、記号の意味と解きかたさえ覚えれば、手堅いよ」
「例題から解説していきますね」
「ここにある、エス字フックのような記号は何だっけ?」
「インテグラル。積分の記号だ」
「テジャ・ビューだね。昨年から、少しも進歩してない」
「嘆いていても、先に繋がりませんよ、吉原さん」
「窓を開けてるのに、風が入って来ないな。このままだと、融けてしまいそうだ」
「手を休めたら、冷凍庫に閉じ込めるからな」
「それじゃあ、ただの恐喝だよ、朝丘くん」
「穏便にお願いしますね。試験を受けられなかったら、本末転倒ですから」
「数学を捨てちゃ駄目か?」
「中間考査のときも、赤点すれすれだっただろうが。ちゃんと拾わなきゃ駄目だ」
「昨年と変わらないね」
「そうですか? 変わらないようでいて、大きく変わってますよ。朝丘がいますし」
「窓に網戸が入ったし。なっ?」
「鼻高々に誇るな。氷漬けにするぞ」
「したり顔を止めなよ、山崎くん」
「フフフ。いつも通りが、なによりですね」
「朝丘も、これくらい許容しろって。アダッ」




