異世界の現状
(救世主?いったい何の話だ?)
あまりの出来事に呆然としていると、先程の怪物がひざまつき「どうか、どうかこの国を救ってくだされ!」と、地面に額をすり付けて頼み込んできた。
さすがに居心地がわるくなってきたので、勇気を振り絞ってその怪物に話しかけてみた。
「すみません、救世主ってどういう事ですか?それに、国を救うって一体?」
すると、その怪物が突然ガバッと顔をあげて、「おお、すみませんな。今詳しく説明いたします。」と言って起き上がった。
「私は、この城の魔王レックスと申します。救世主殿の名は何と申されますか?」
「じ、自分は、竜ヶ崎黒野と言います。」
しどろもどろしながらも、何とか話す事ができた。
「クロノ殿ですか。良い名ですな。」
微妙にイントネーションが違うが、気にしないでおこう。
「さて、まずはこの世界の現状を説明いたしましょう。」
そう言うと、レックスは部下の一人合図し、何やら地図らしき物を持ってこさせ、それを自分の前に広げた。
地図には、この世界の大陸が詳しく描かれていた。
「この大陸は、大きく分けて六つつのエリアに分かれます。私達、魔族や魔物が住んでいる、ノックスエリア。人間共が住んでいる、ヒューマンエリア。エルフや妖精が住んでいる、ナトゥーラエリア。広大な砂漠が広がる、サンドエリア。海のように深い湖が点在する、レイクエリア。そして、未開の土地、アンノウンエリアです。」
地図で見ると、ノックスエリアは、かなり大きい事が分かる。そして、ヒューマンエリアは、この中で一番小さい。
「この世界は、百年ほど前まではとても平和でした。しかし、人間共の王が代わってからその平和は、脆くも崩れされました。愚かな王が、ヒューマンエリアを広げるために、ノックスエリアに侵攻してきたのです。」
ザインは、その時の事を思い出し、歯軋りをする。
「宣戦布告もしなかった人間共の奇襲に、最初は我が軍も混乱ぎみでした。しかし、所詮は人間。数で勝る我が軍が、次第に押し返していきました。」
確かに、この国力の差なら当然の結果であろう。
「しかし、卑劣な人間共は禁術とされていた、勇者召喚の術式を使用したのです。召喚された勇者は強力な魔法や不思議な術で、次々と我が軍を打ち倒していき、遂には我が領土の十分の一をも占拠してしまったのです。」
よく見ると、ノックスエリアには、赤く塗りつぶされた場所があった。おそらく、それが占拠された領土なのだろう。
「人間共は調子に乗り、様々な国で勇者召喚を行い、まるで競い会うかのように我が領土に進行してきました。そのせいで、多くの仲間が命を落としました。」
ヒューマンエリアには、大小合わせて、十三の国が存在していた。確かに、この国全てが勇者召喚を行ったとすれば、かなりの戦力強化となるだろう。
「追い詰められた私達は、人間共の勇者召喚の術式を解析し、こちらでも召喚術式を使用しました。その召喚で呼び出されたのが…」
「成程、自分という訳ですか。」
これで、自分が倒れていた理由は分かった。しかし、黒野にはまだ一番聞きたいことが残っていた。
「何故自分なのでしょうか?はっきり言って、自分がその勇者達に対抗できるとは思わないのですが。」
黒野自身は、自分に何か才能があるとおもったことは無い。むしろ、自分は凡人の類だと思っていた。それが、何故召喚されてしまったのか。彼は、それが不思議でならなかった。
「その点は心配ありません。異世界から召喚された者は、皆全てのスキルが強化されると研究の結果分かっています。それに加え、この召喚術式には、召喚した者の潜在能力を開花させる術式も組み込んであります。勇者にひけをとらない強さになっているはずです。」
確かに、ここに来てから妙に体が軽く感じる。おそらくこれが、その術式の影響なのだろう。
「それに、この召喚術式を使用する際に、ある条件を付け足しました。おそらくその条件が、クロノ殿召喚に繋がったのでしょう。」
「その条件というのは?」
自分を召喚した条件とは、一体何なのだろう?
すると、レックスは意外な事実を口にした。
「心の中に深い闇を持っている人間、それが召喚の条件です!」




